<デジタル発>「雑文の巨人」書物の塔 音更町出身の評論家・草森紳一さんの書庫 今春も一般公開へ
歴史や文学、漫画など幅広い分野で活動した十勝管内音更町出身の評論家・草森紳一さん(1938~2008年)がのこした書庫「任梟盧(にんきょうろ)」が昨秋初めて一般公開され、今年も春に再開される。「雑文の巨人」と呼ばれ、膨大な読書量でも知られた草森さん。その思考と人生を形づくった本や雑誌が壁一面に並ぶ「書物の塔」に足を踏み入れた。(帯広報道部 鈴木宇星)
音更町の住宅街にぽつんと立つ、とんがり屋根の白い塔。牛乳パックを想起させる建物が、草森さんが実家の敷地内に建てた任梟盧だ。玄関ドアを引いて中に入ると、おびただしい数の本が視界に飛び込んできた。幕末から明治時代にかけて活躍した日本人写真家の草分けとされる上野彦馬の写真集、和歌文学の集大成「国歌大観」、美術書や建築書、少女漫画…。収入の7割を書籍代に費やし、月に150冊を購入していたという草森さんが、1980年代後半までに集めた1万5千冊超の書物が書棚を埋め尽くしていた。
任梟盧は建築家の山下和正さんが設計し、77年に完成した。木造で延べ床面積は約60平方メートル。高さ9メートルの吹き抜け構造で、四方の壁は床から天井まで書棚が続く。壁沿いには、らせん状の階段が設けられ、所々に机を置いた小さな書斎が見える。玄関近くの天井の低い空間を進むと、秘密基地のような地下室があり、草森さんが連載していた雑誌や多数のメモ書きが残る自筆ノートも置かれていた。
書棚の空いたスペースに目を向けると、草森さんが愛用していたたばこ「ピース」の缶がいくつも並んでいた。壁には親交があった旭川市出身の彫刻家・砂澤ビッキさんの木彫作品が飾られ、塔の最上部のスペースには87年の著書「コンパクトカメラの大冒険」(朝日新聞社)に登場する黄色い自転車が立てかけてあった。
■「草森さんの世界そのもの」
「ここは本に囲まれて過ごし、本に埋もれ、最期を迎えた草森さんの世界そのものです」。...
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