毎回1組のカップルを迎え、さまざまな角度からふたりの馴れ初めに迫る、NHKの『超多様性トークショー! なれそめ』(以下、『なれそめ』)。その収録後に、メインMCの田村淳とともに番組を盛り上げるゲストのLiLiCoにインタビュー。番組の魅力に始まり、多様性、女性の生き方まで、彼女ならではの視点で語ってくれた。

リアルなトークの向こうに見えてくる、多様性と社会のあり方

収録がスタートしたスタジオにカップルが登場すると、そこからは出演者みんながふたりが語るエピソードにじっくりと聞き入る。時折りVTRを交えつつも、カメラはほぼ途切れることなく会話を追っていく。

「そうなんです、『なれそめ』はリアルな会話を届けるという番組。私自身も出演するたびに実感するのですが、誰かの話をじっくりと聞き入ることの面白さってありますよね。それに、そもそも“馴れ初め”というもの自体が関心をくすぐるもの。 そう思いませんか? カップルならもちろんですが、それが友人同士であっても、人と人がどんなふうに出会って今に至るのかというストーリーには、つい耳を傾けてしまう魅力があると思うんです」

番組が2021年にスタートして以来、これまで登場したカップルは34組にのぼる。「見えない&耳の聞こえないアスリートカップル」「フランス人と日本人の学生結婚カップル」「元警察官&元消防士! 同性カップル」……と、さまざまなアイデンティティやバックグラウンドを持つ人々にスポットを当て、それぞれの多様な生き方を紹介してきた。

「登場するのは皆さん、一般の方々ばかり。私は、これもひとつポイントだと思っているんです。というのも、ここで聞けるのはありのままのストーリーなんです。盛ってあったり、飾ってあったりする話ではないんですね。だからこそ、話を聞きながら心を寄せてしまう。それに、本当にいろんな愛の形、幸せの形があることについて改めて考えさせられます。また、ひとりの人を愛することは、一筋縄ではいかない。そういう深みにも思いを馳せてしまいます」

自分とは生き方が違う人、異なる背景を持つ人に対して、どれだけ知らないままでいるのだろう? こと日本の社会には、長い間ずっと「普通のあり方」という意識が行き渡っていた。『なれそめ』に登場するカップルたちは、その従来の「普通」という考え方には当てはまらない場合が多いと言えるだろう。近年、多様性という言葉がクローズアップされる中で、きっと多くの人が「普通」という考えのあいまいさを見つめ直しているのではないだろうか? この番組は、そんな視点をよりクリアにしてくれる。個人ひとりひとりの思いに耳を傾けることが、自分とは違う誰かへの理解に通じる道筋を照らしてくれるのだ。

日本とスウェーデン、ふたつの母国を見つめ続けて

a person sitting on a bench next to a stack of wood boxes
CEDRIC DIRADOURIAN

多様性はSDGsが掲げている目標のひとつでもあり、日本でも徐々に施策を行う企業やコミュニティが増えている。だが、実態はどうだろう? スウェーデンと日本という2つの国にルーツを持つLiLiCoにとって、多様性とはどんな姿をしているのか。

「スウェーデンでは、男女平等はずいぶん前から当たり前。複数の異なるルーツを持つミックスレースというアイデンティティも珍しがられることはありません。スウェーデンはもともと移民が多いということもあるので、ミックスの人がいてもそれが自然。社会の中で特別なことじゃないんですね。家族のあり方も、それぞれであっていい。養子の受け入れも進んでいますしね。私は父が向こうにパートナーと住んでいるのですが、継母に当たるそのパートナーのことは“ボーナスママ”って呼ぶんです。継母と聞けば、日本ではその関係の難しさがクローズアップされがちですが、スウェーデンではそうではないんです。ボーナスという表し方、素敵でしょう? プラスになる関係性だと捉えているから、こういう呼び方をしているんですよね」

では、日本は?

「そうですね。同性のカップルを題材にした映画がヒットしたり、女性の活躍の必要性が盛んに語られるようになったりと、日本もここ10年くらいの間に変わってきたと感じます。変化のスピードがぐっとアップしていますね。けれど、社会のあり方としてはまだまだ。私は、遅れていると考えています」

言葉に気を配りながらも、彼女はそう断言する。

「日本は、多様性へのアプローチに関してもとても日本的。そこには、“自分と周囲を比べる”という考えがあるように思います。これだけの先進国でありながら、世界幸福度ランキングは47位です(国連SDSNのWorld Happiness Report 2023による)。私なんかは『一体どういうことなの?』と思ってしまうのですが、日本人は自分を通さずに隣の人の人生を生きてしまうんですよね。個性があると叩かれるという文化もあるし、年齢も気にしてしまう。実は私も、来日したばかりの頃は、自分でいるより日本人でいなきゃと言われてトライしました。その結果分かったのは、やっぱり自分で考えて出した答えが大事だということ。ハッピーは自分の中にしかないということでした。これは、私が日本の皆さんに伝えたいメッセージでもあるんです」

日本の女性たちをもっともっと元気にしたいという願い

現在の自身の活動を通して、「日本の女性に元気をあげる」と決めているというLiLiCo。結婚や離婚、生理、セックス、母親との関係性など、女性の人生を取り巻くトピックスについて、自ら積極的に語り、発信してきた。

「私は、どんなことでもオープンに話したい。そうして行こうと思っています。そうやって発信し続けていると、メッセージを受け取ってくださった方から『私もそうなんです』という本音の声が返ってくることがあります。それを聞いて私は、『ああ、これは生きるということにつながっているんだ』ということを実感しました。以前、シシド・カフカちゃんが私についてこんなふうに言ってくれました。『LiLiCoさんは人生のベストを生きようとする人』。この言葉を聞いて、自分でも腑に落ちたんです。人生はいつも楽しいわけじゃない。良いことがないな、という時もある。でも自分なりの最善を尽くしていきたい。だから、好きなことをハグしていこう! 多くの女性たちにも、そう伝えて行きたいですね」

今回LiLiCoが出演した『なれそめ』の回(12月11日(月)23時~NHK総合放送)には、60歳を過ぎてから国際結婚をしたという、人気アップルパイ店「松之助」オーナーの平野顕子氏と、その夫でウクライナ系アメリカ人のイーゴ氏がゲストとして出演。年齢差はひと回り以上というパートナーと今を生きる人生は、まさに自分自身がクリエイトした生き方。女性にとってインスピレーションにあふれるこの回も、心に響く何かが見つかりそうだ。