私たちは何世紀も、キラキラのライトやかわいらしいオーナメントをつけて、家にクリスマスツリーを飾ってきた。でも、なぜクリスマスツリーを飾るのだろう? この伝統はどこが発祥なの?

常緑樹を家の中に持ち込むことは、冬のお祭りのお祝いとして何千年にもわたって異教徒でもキリスト教徒でも行われてきた。異教徒は冬至に、春がそこまで来ている象徴として木の枝を家に飾った。

ローマ人は農神祭(冬至の祭り)にモミの木を礼拝所に飾り、キリスト教徒は永遠に続く神との命の象徴としてモミの木を使った。

ドイツは、多くのキリスト教徒が外から持ち込んだ木を飾り付けたことから、クリスマスツリーの伝統発祥の国と言われている。木を飾らない人あるいは買うお金がなかった人は、代わりに木をピラミッド型に重ねて使うという賢い方法を考えた。

ドイツの初期のクリスマスツリーの中には、ジンジャーブレッドマンやゴールドでコーティングしたリンゴなど食べられる美味しい飾り付けがされているものもあった(ガラスメーカーは自社特製の小さなオーナメントをぶら下げていた)。

クリスマスツリーを最初に屋内に持ち込んだ人は?

16世紀の宗教改革者マルティン・ルターが、クリスマスツリーを最初に自宅に持ち込んだ人物のひとりで、さらにツリーにあかりを灯したひとりだとされている。クリスマスの前夜、ルターは森の中を歩き回り、木の間から星が明るく輝いているのを目撃したという。

その光景を家族にも再現して見せたくて、彼はリビングルームにツリーを据え、美しいあかりをヒモで枝に結びつけたのだそうだ。

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House Beautiful/Polly Wreford

イギリスに最初にクリスマスツリーがやってきたのはいつ?

ビクトリア女王とアルバート王子がイングランドでクリスマスツリーを人気にしたと言われているが、実はジョージ3世国王のシャーロット王妃がその先駆者だ。

1800年12月、シャーロット王妃は、富裕層で身分の高い家庭の子どもたちのためにパーティを催そうと、ウィンザーにあるクィーンズ・ロッジの応接間の中央に、イチイの木を設えた。木はオーナメントやフルーツ、おもちゃ、小さなロウソクなどでデコレーション。その目を見張るような素晴らしさはゲストを喜ばせ、以来、ツリーは人気になった。とはいえ、それはイングランドの富裕層に限られていたのだけれど。

だが、年々注目を集めるようになり、1818年にシャーロット王妃が亡くなる頃には、クリスマスツリーの伝統はしっかりと確立された。

1840年12月、アルバート王子が出身地のドイツ、コーブルクからトウヒの木を数本輸入。ロイヤルファミリーがクリスマスツリーの周りに集まるイメージが1848年に『Illustrated London News』に掲載されたことで、クリスマスツリーを飾る習慣が人気となり、イングランドの庶民にも流行した。

ジョセフ・ナッシュが描いたウィンザー城のクリスマスツリー
Getty Images
1845年、ジョセフ・ナッシュが描いたウィンザー城のクリスマスツリー
ビクトリア女王&アルバート王子とともにクリスマスツリーの周りに集う子どもたち
Getty Images
1848年、ビクトリア女王&アルバート王子 とともにクリスマスツリーの周りに集う子どもたち

クリスマスツリーが象徴するものは?

キリスト教が出現するずっと前から、植物や木は寒い冬の時期に多くの人々に特別な意味を持つものだった。今、私たちの多くが家を飾るように、古代にもドアに常緑樹の大きな枝を吊す文化があった。多くの人は、それが魔女や悪魔や病気を振り払うと信じていたのだ。

2004年、当時のローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世はクリスマスツリーを“キリストのシンボル”と呼んだ。この古代からの伝統は命の価値を賛美し、キリスト教徒に、旧約聖書の創世記に書かれている“生命の樹”を思い起こさせると述べた。

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House Beautiful/Mark Scott

クリスマスツリーはどのように変化してきた?

最初期のクリスマスツリーと同様、私たちはオーナメントや連なったライトでツリーを飾っている。多くの家庭で本物のクリスマスツリーを買うのが伝統になっているが、煩わしさやメンテナンスの必要があまりなく、毎年再使用できるツリーを選ぶ家庭が増え、人工のツリー、特にあらかじめ灯りがついたツリーがますます人気になってきている。

人工ツリーの人気によって、レインボーツリーやサンフラワーツリー、さまざまなインテリアに合わせてウィンターワンダーランドスタイルから、雪が降り積もったようなツリー、遊び心あふれるピンクツリーなど多くのトレンドが生まれている。

•リアルとフェイク

本物のクリスマスツリーの心を高揚させる香りほど、祝祭ムードになるものはない。ツリーを選ぶという儀式はデコレーションするのと同じくらい重要だ。イギリスではノルウェー産のモミの木がもっとも人気だ。ダークグリーンの針葉はすばらしく持ちが良く、枝ぶりがしっかりとしていて対象的なのでオーナメントを吊すのにいい。

人工的なツリーは、製造過程で二酸化炭素が排出され、また二酸化炭素排出量の多いプラスチックでできているので、あまり環境に優しいチョイスではない。人工的なツリーは最低10年は使わないと、二酸化炭素排出量が本物のツリーを10年間毎年買って燃やす場合の総二酸化炭素排出量と同等にならない。

•代替ツリー

クリスマスツリーの代替品は近年、ますます真価を発揮するようになっている。環境に優しい木製のクリスマスツリーや装飾的なツィグ・ツリー(1年中使える)が年々人気に。ツリーをやめて、室内用観葉植物をクリスマスツリーとして飾り付けている家庭もあるそうだ。


Translation: Mitsuko Kanno From Good Housekeeping UK