サステナブルで動物実験をしないファッションのパイオニア、ステラ・マッカートニーは、衣類を洗うのが「嫌い」だと言う。

ファッションを学んでいた学生時代、ロンドンのサヴィル・ロウで数年働いた経験のある彼女は、持っている服を全部洗う必要はないと学んだという。

「そこにいた女の子は私ひとり。私は3年間働いたのだけれど、袖にどうやってスリーブヘッドをつけるかを辛うじて学んだ程度だった。建築みたいなものね。すばらしい技術だわ」と、『Guardian』紙に語った彼女。

「ビスポークスーツのルールは、クリーニングしないということ。触らないの。汚れを乾かして、ブラシで払い落とすのよ」

それを日常生活にも当てはめていると、彼女は説明する。「基本的に、それが経験則から得た生活における目安ね。絶対に洗わなくてはいけないものでない限り、洗わないこと」

ステラ・マッカートニー
Pascal Le Segretain//Getty Images

「私は毎日ブラを取り替えないし、1回着たからといって衣類を洗濯機に放り込むようなことはしないわ。私は衛生にはとても気を使っているけれど、ドライクリーニングや、洗濯するのはとにかく好きじゃないの」

サステナビリティはマッカートニーのブランドの中心にあるものだが、ファッションに倫理や環境にこだわるスタンスを持つと、デザイン・プロセスはより難しいものになる。例えば、PVCを使わないシューズを作るのに彼女は10年を要した。

レザーやファー、PVCといったマテリアルは「作業に当たる人々に発ガン性がある」と彼女は言い、また工場は川の上に作られているので残留物が川に流れていくとして、使用を避けている。

「もし、みんながサステナブルになれば、平等な立場になれるのに、不公平な気がする」と、彼女。「でも、それは私の選択であって、そういう風に仕事をする理由を私は信じているの」

2020春夏 ミラノ・メンズ・ファッション・ウイーク
Daniele Venturelli//Getty Images
ステラはミラノのメンズ・ファッション・ウィーク中に行ったプレゼンテーションで“SOS”のサインを持って、サステナビリティを重視する姿勢を見せた

彼女のブランドは完全にベジタリアンで、ロンドンの旗艦店は店舗全体にリサイクルとアップサイクルしたものを使用している。例えば、オフィスで出た紙くずをパピエマシェの壁のパネルにしたり、前のコレクションで使ったフェイクファーをエレベーターに敷いたりなど。

また、マッカートニーは先頃、各ブランドが総合的に自分たちのサプライチェーンを見て、環境に影響を及ぼす原材料の製造過程はどこかを区別できるシステムを提供すべく、グーグルとチームを組んだ

世界の廃水量の20%、二酸化炭素排出量の10%はファッション産業が原因であり、そのほとんどは製造過程の第一段階で起こっている。そのため、その新しいスキームによって、各ブランドのサプライチェーンの“見える化”を高め、よりサステナブルに原材料や製造過程を選ぶというアクションがとりやすくなることが期待されている。

Translation: Mitsuko Kanno From Harper's BAZAAR UK