トヨタ本社前で「2030年までにガソリン車からEVへシフトしましょう」と書かれたバナーとバルーンを掲げ、グリーンピースからトヨタへのメッセージをアピールするグリーンピースメンバー

6月14日、愛知県豊田市の本社で、トヨタ自動車の第119回株主総会が開かれました。トヨタの株を最小単位で購入しているグリーンピースも株主として総会に参加。2050年までのネットゼロ実現に整合するEV転換の早期推進とスケジュール設置を求めました。総会の主な注目点と、グリーンピースのアクションをまとめます。

▼この記事を読むとわかること

> 気候変動対策をめぐる株主提案
> 豊田章男会長の取締役再任への反対票が増加
> トヨタの気候変動への姿勢に集まる世界の注目
> グリーンピースからトヨタさんへ

気候変動対策をめぐる株主提案

2023年6月14日に開催された第119回トヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)株主総会は、開催前から国際的に大きな関心を集めていました。世界最大の自動車会社であるトヨタの気候変動への姿勢が、その中心です。

TOYOTAの看板

特に異例ともいえる株主提案があったことは国内外のメディアに大きく取り上げられることになりました。欧州の運用会社3社が共同で、気候変動に関連するトヨタの渉外活動についての情報開示を定款に盛り込むことを求め、2005年以来実に18年ぶりとなる株主提案を行ったのです*1

株主提案自体は可決に必要な3分の2以上の支持を得られず、否決となりました*2
しかし、この株主提案へは、総会前にいくつかの機関投資家が事前に賛同を発表し、また議決権行使助言会社*が株主に提案への賛同を推奨するなど、結果的にトヨタの環境対策の姿勢に投資家たちが持つ危惧を浮き彫りにしたといえます。

*株主総会の議案を分析し、機関投資家に向けて議決権行使に関しての助言を行う会社

豊田章男会長の取締役再任への反対票が増加

総会のもう一つの注目点は豊田章男会長の取締役への再任投票です。

トヨタは豊田章男氏はじめ、佐藤恒治社長など、10人を取締役選任を議案として提出していましたが、アメリカの助言会社グラスルイスが、独立した社外取締役の人数が不十分であるとして株主に豊田章男氏の選任への反対を推奨。

その結果、3774名が株主として出席した本総会において、豊田章男氏の取締役再任への賛成票は84.57%と、前年の95.58%から大きくポイントを下げました。そのほかの取締役が皆、約95%の賛成票を得て選任されたことからも氏への反対票の増加は顕著です。

これもまた投資家たちのトヨタの企業方針に対する信頼や考え方の変化を示しています。

ドイツ、フランクフルトで開催された国際モーターショーに展示されたトヨタのSUVランドクルーザー
ドイツ、フランクフルトで開催された国際モーターショーに展示されたトヨタのSUVランドクルーザー。(2017年9月)

頻発する極端な気象現象や災害などで、世界的に気候変動への危機感が高まる中、投資機関は企業の気候対策への姿勢を注視しています。

トヨタがEV自動車への完全な舵切りにみせるためらいや、野心的な気候変動政策を遅らせるロビイングが、投資家や助言会社の目にも不安材料として映っているのです。

トヨタの気候変動への姿勢に集まる世界の注目

グリーンピースは、2021年からトヨタに気候変動対策を加速させることを求めてキャンペーンを行なってきました。トヨタの株を最小単位で購入し、毎年株主として株主総会に参加してきたことも活動の一端です。

2022年に開催された年次総会会場前でグリーンピースメンバーが「化石燃料車を終わらせてゼロエミッションへDRIVEして下さい」と書かれたバナーを掲げてアクションをする様子
2022年に開催された年次総会時に会場前で行ったバナーアクション。(2022年6月)

トヨタは、世界のエネルギー起源の温室効果ガスの23%を排出する運輸部門を代表する自動車メーカーであり、その中でも最大の企業です。そのトヨタが化石燃料を使う車を作ることをやめれば、世界の気候変動対策を確実に一歩進めることができます。トヨタが及ぼす影響力は計り知れないほど大きいものです。

しかし、現状をみると、トヨタはグリーンピースが実施した自動車大手メーカーの気候変動対策に関する調査で、2年連続最下位に位置しており(2021年、2022年)、世界をよい方向へと導きうる世界的企業としての責任を果たしているとはいえません。

世界中が団結して気候変動に立ち向かわなければならない今、トヨタは、完全なEVへのシフトが難しい理由として、「各国にそれぞれの事情がある」と主張し、依然として化石燃料を使うハイブリッドの生産を続け、「消費者に選んでもらう」ことにこだわってます。

ところがこの方針は、世界的に合意されている2050年までのネットゼロ目標*に整合しません。地球を破滅的な温暖化への道筋から軌道修正させるために必要な目標値を掲げられていないことは、世界をリードする企業の姿勢として致命的といえる問題です。

*気産業革命前からの気温上昇を、気候変動のティッピングポイントとなる1.5℃以内に抑えるため、2050年までにネットゼロを達成することが、パリ協定で世界共通目標として設定された

グリーンピースからトヨタさんへ

グリーンピースは、トヨタに、ガソリン車の販売終了時期、市場ごとのEV販売数と割合の明示、EV移行のタイムラインを設定することを求めています。

今回の株主総会では、グリーンピース・ジャパンのスタッフが、愛知県豊田市のトヨタ本社への道のりの一部をEV自動車でドライブ。

静岡県から愛知県豊田市まで、トヨタ株主総会の会場への道のりをEV車でドライブする道中のグリーンピーススタッフ
ドライブの道中のグリーンピーススタッフ。静岡県から愛知県豊田市までをEV車でドライブした。(2023年6月)

総会に先んじて投資家に向けて作成した説明資料を発表し、当日は株主やメディアが多く行き交う本社前でトヨタに向けたメッセージを掲げました。

トヨタ本社前で「2030年までにガソリン車からEVへシフトしましょう」と書かれたバナーとバルーンを掲げ、グリーンピースからトヨタへのメッセージをアピールするグリーンピースメンバー
トヨタ本社前でバナーとバルーンを掲げ、グリーンピースからトヨタへのメッセージをアピールするグリーンピースメンバー。(2023年6月)

各国地域に電源構成や経済などの事情があり、雇用の確保や生産システムの大きな変更が簡単なことでないのは明白です。しかし、トヨタはそれを成し遂げる技術力と企業力を持っています。

そして地球環境の未来を好転させるための勇気ある決断は、世界を牽引する企業として存在するトヨタの未来を切り拓く道筋に重なっているはずです。

グリーンピースはトヨタに、世界をリードする自動車会社として「2030年までにガソリン車からEVへシフトしましょう」と呼びかけます。

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