気候危機は、地球規模で私たちが直面している、人類の存亡にかかわる最大の脅威です。

気候危機が深刻化するにつれ、経済的不平等から人権の不公平、さらには動物から人へ伝染する感染症の流行に至るまで、今日の世界で起きている多くの深刻な問題をさらに悪化させてしまいます。

何年にもわたり、活動家たちは最前線に立ち、気候危機をもたらす原因やその影響に立ち向かってきました。森林や空、湿地、海洋そして生物多様性ホットスポットで無謀かつ傍若無人にふるまう企業に対し、何度も何度も異議を唱えてきました。

2019年10月と11月、ボルソナロ政権の環境相リカルド・サレス氏によるヨーロッパへの”グリーンウォッシュ”訪問を受け、ブラジル先住民族の指導者たちは自身もヨーロッパ訪問へ乗り出し、ブラジルの先住民族や環境に対する侵害行為を非難。© Midia Ninja

国際NGOグローバル・ウィットネスが発表した最新の年次報告書によると、2019年に1年間で殺害された活動家の数が過去最多となったことが明らかになりました。2019年、アマゾン地域だけでも33人もの活動家が殺害されました。こうした殺害行為の約90%はブラジルで起きたものでした。

ブラジル政府が先住民族の土地や権利を保護しないことは、今に始まったことではありません。しかし土地を収奪しようとする人々や密林伐採者、さらには麻薬密売者までもが先住民族の土地へ侵入し、そうした行為が増加の一途をたどっています。これを受け、ブラジル北部と北東部の先住民たちは、自らの手でこの問題の解決に挑むことを決めました。彼らは、「フォレスト・ガーディアンズ」と呼ばれる組織を結成しました。森林の見張りや監視を行い、森林破壊そして先住民族の生活への脅威が増え続けているのを食い止めようと、自らの命をかけ最前線で闘っています。

気候危機に立ち向かうため最前線に立つ保護活動家

2019年11月1日、その先住民森林保護活動家のひとりが、自らのその土地で密林伐採者に待ち伏せされ、虐殺されました。26歳のパウロ・パウリーノ・ グアジャジャラ氏の生涯は暴力によって奪われたのです。

森を金のなる木としか見ない強欲な人たちから、自分たちの土地を守ろうとしただけで。

彼のほかにラエルシオ・ソウザ・シルバ・グアジャジャラ氏(Laércio Souza Silva Guajajara)も腕と背中を銃で撃たれました。

この武装した密林伐採者5人が先住民族住居区内にいたということは、グアジャジャラ族の人々の権利を侵害しているという紛れもない事実です。

グアジャジャラ先住民族のリーダー、パウロ・パウリーノ・グアジャジャラ氏。住居区域内に不法侵入した密伐採者たちにより殺害されました。© Midia Ninja

パウリーノ氏はどうすれば民族がこの脅威により強く立ち向かえるか、その方法を常に模索していました。研修会に参加し、例えば不法侵入や森林伐採、木材の窃盗が実際に起きていることを証明するため、テクノロジーを駆使し、彼らの民族の住居区域を監視できるよう学びました。

彼が殺害されたことにより、ブラジル国内の先住民族や伝統的なコミュニティが直面している闘いの現実が明らかになりました。この出来事は、ボルソナロ政権の乱暴な政策や発言により、先住民族の命がいかに急激に脅かされているかを示しているだけでなく、安価な資源の収奪に依存しているこの大規模な経済構造が、その過程で精神的、生物学的価値のある土地をいかに侵害しているかを表しています。

「先住民族の血をもう一滴たりとも流させない!」。先住民族の指導者たちは欧州議会の入り口にて抗議活動を行い、ブラジル政府による環境破壊や2019年の火災によりアマゾンの一部が破壊されたことを認めないことを非難しました。© Midia Ninja

2000年から2018年の間に42人ものグアジャジャラ族が殺害されました。

そして2019年は特に激化した年となりました。先住民宣教協議会(Cimi)が発表した予備データによると、2019年最初の9カ月間に、19州、153カ所の先住民移住区域にて約160件もの不法侵入があったのです。

大抵の場合、最貧層コミュニティの人々は、嵐が直撃する場所、洪水が起こりやすい沿岸部や頻繁に起こる干ばつに襲われる場所、そして暴力の著しい脅威に直面している場所に住んでいます。

私たちは共に立ち上がり、権力者や企業、政府に対しこういった問題の根本的原因の解決に取り組み、活動家を支援し、保護するよう働きかけなくてはなりません。気候危機の解決を成功させるためには、森林そして環境保護活動家たちへの支援と保護を確実にすることが必要不可欠です。

新型コロナウイルスの大流行と不況に直面し、さらに急がれる気候危機への対応

私たちは企業に対し、人権や環境破壊を他の問題と同じくらい真剣に考えるよう働きかけます。国際的なサプライチェーンがこれ以上、最も弱い立場にいる人々に被害をもたらすことがないよう。

これと並行して、私たちグリーンピースはアマゾン地区の調査を続けます。そして、脅威を明確にし、天然資源の管理や腐敗行為防止の強化のため、国際的なサプライチェーンに現場から影響を与え、新しい世界基準を目指します。

また、化石燃料から、クリーンで持続可能ななエネルギー資源への移行に向け、世界中の仲間と共に取り組みます。

私たちの森林や次の世代のために。そして全世界のために。

東京都にあるブラジル大使館の前で抗議をするグリーンピース・ジャパンのスタッフたち。2日間の日本への公式訪問中であるブラジルの大統領ジャイール・ボルソナロ氏に対しアマゾンの破壊をやめるよう呼びかけました。© Greenpeace

[協力:翻訳ボランティアAkane]