GQ Woman

宮沢りえを射止めるには?

宮沢りえは、俳優として何十人、何百人もの女性の人生を生きてきた。だから普通の人の何十倍も深く、人生と男を知っている。年齢を重ねるごとに深みを増す美しさも、こうした経験が醸成したものかもしれない。美しくて、何でも知っていて、しかも本人いわく恋愛体質。宮沢りえを振り向かせることができたら、男として本望だ。
宮沢りえを射止めるには?

宮沢りえは、俳優として何十人、何百人もの女性の人生を生きてきた。だから普通の人の何十倍も深く、人生と男を知っている。年齢を重ねるごとに深みを増す美しさも、こうした経験が醸成したものかもしれない。美しくて、何でも知っていて、しかも本人いわく恋愛体質。宮沢りえを振り向かせることができたら、男として本望だ。

Photos: Katsuhiko Kimura(D-CORD) Styling: Yoshiko Kishimoto
Make-up: Noritaka Noda(LYDIA) Hair: ASASHI Nail: Kanako Miura Text: Takeshi Sato

食事に行きませんか、というメールで充分

メイクを終え、衣装に着替えた宮沢りえさんが椅子に座っている。メイク前のふんわり柔らかい雰囲気とは一変、鏡越しにバチッと合った視線は思わずひるんでしまうほどの迫力だ。でも、ここで引き下がるわけにはいかない。全男性を代表して、宮沢りえを射止める方法を聞き出さなければならないのだ。

ボーズのiPhone用スピーカーからブラック・アイド・ピーズが流れると、ハードなリズムに合わせて体を揺らした。そして「これ、だれの曲ですか?」。よかった、気に入ってもらえたみたい。10万光年は離れていた距離が、数メートル近づく。ここは勇気を振り絞って、「宮沢さん」ではなく「りえさん」でいこう。りえさんは、意外とロックな女性だ。

「好きな食べ物は何ですか? ほら、ご馳走っていうか、お祝いや、大きな仕事が終わったときの自分へのご褒美に食べたいもの」

そう質問すると、ばっさり切ったばかりだという髪をかきあげながら、「なんだろう……」と、沈思黙考。こんなまぬけな質問を真剣に考えてくれるなんて、りえさん、真面目でやさしいひとだ。じっと考えたりえさんは、「あ〜、でも言いたくないな。ごく普通の、あたりまえのものだから」と言いながら、頬をピンク色に染めた。白い肌が赤くなったのではなく、透明な肌がロゼワインの色に変わった。

でも、どうしても聞きたい。自分の耳で、宮沢りえが考えるご馳走を聞くチャンスは、これが人生できっと最後だ。するとぎりぎり聞き取れる声量で「キャビアとシャンパーニュ」と言ってから、「ごめんなさい、本当にレベルが低くて、ごめんなさい!」と、両手で顔を覆った。肌の色は、ロゼワインからブルゴーニュの赤ワインに変わっている。

2012年も暮れようかというタイミングで「宮沢りえはかわいい」と書くのは、21世紀に「地球は丸い」と書くのと同じぐらい、いまさらのことだ。でも、できればここだけ太ゴチックにして強調したい。りえさんは、ものすごくかわいい女性だ。

ロックで真面目でやさしくて、最高にかわいい。こんな女性に思いを寄せられたら、男として本望だろう。というか、男の人生でこれ以上に大事なことはあるだろうか? お金よりも地位よりも、りえさんに惚れられるような男になりたい。

この撮影は、りえさんがデートに出かける前の準備をしているという設定です。デートの前は、どんなことを考えていますか?

「デートの前は……、インスピレーションを相手のためだけに、最大限に使いたいと考えているかな」

インスピレーション?

「もっと話したいな、もっと知りたいな、と相手に思われるような人でいたいと思うんです。ひとつの言葉がどんどん発展するような、発想がいつまでもポン、ポン、ポン、って続いていくような、セクシーな会話が大事だと思います」

明日のためのその1。セクシーでクリエイティブな言葉を、撃つべし、撃つべし。

「見た目のかっこよさより、言葉の美しさのほうが何十年後も残るじゃないですか」

差し障りのない範囲で、記憶に残っている美しい言葉を教えてもらえませんか?

「ダメ! 差し障りだらけだから(笑)。友だちに、少しは学びなよ、って言われたこともあるんです。恋をするとエネルギーが溢れちゃって……。でも、きちんと仕事をしている人、ある仕事に対して誠意と熱意をもって臨んでいる方の言葉は美しいと思います」

明日のためのその2。真摯に仕事と向き合うべし。

「そう、夏フェスで観たYMOがまさにそんな感じだった! 私、(高橋)幸宏さんとお食事に行くんですけれど、3ピースのスーツを着てお寿司屋さんに入ってきたときに、わっ、かっこいい!って」

YMO、それはめっちゃハードルが高い……。

「スーツ姿が好きってわけじゃないですよ? 無理をしていないというか、肌に洋服がなじんでいるというのかな。余裕のある人がいいと思います。余裕と自信のある人が、たまに隙を見せるのも素敵だし」

明日のためのその3。無理をしないで、余裕を持つべし。たまには隙も見せるべし。

じゃあ、セクシーな会話を磨いて、仕事もがんばって、余裕と自信ができたとき、どうやってりえさんをデートに誘えばいいですか?

「連絡先を教えたということは、何かしらの交流を持ちたいからですよね。だからシンプルに食事に行きませんか、というメールで充分だと思いますけど」

そうか! なんだか力が湧いてきた!

「でも私、ちょっとおかしいと思うんです」と言ってから、りえさんは軽くテーブルを叩いた。

「男の人と食事をしているだけで、恋人だって書かれるじゃないですか。キスはもちろん、手も握っていないのに彼氏って書かれる」

芸能界に限らず、一般の人でも同じですよ。

「でも、そんなんじゃ友だちも作れない。女の子の友だちだけじゃつまらないし……」

じゃあ宮沢りえと『GQ』編集部で、「もっとカジュアルにご飯に行くべき宣言」を出しましょうよ!

「あははは!」

読者のみなさん! いいですか、大事なのは会話と仕事と余裕です。いますぐには身につかなくとも、現在のYMOの年齢になるまでにはなんとかなるはず。しかもわれわれは、りえさんのご馳走も知っています。一歩リードしているのです!

宮沢りえ 俳優

1973年、東京都生まれ。2012年の大きなトピックは、初めて蜷川幸雄さんが演出する舞台に出演したこと。「書き留めておけばよかったと思うぐらい、美しい言葉で人をののしるんです(笑)」と、俳優としての幅を広げた。ちなみに食事の好き嫌いは一切ないけれど、「高くてマズいお店が嫌い」だとか。