LEGEND Giorgio Armani Special

イタリアの生きる伝説にインタビュー──ジョルジオ・アルマーニが、ミレニアルズ3人の質問に答えた

ジョルジオ・アルマーニはいかにしてファッション業界のトップにのぼりつめたのか。その秘密を解き明かすべく、3人のミレニアルズが御大と対峙した。ミレニアルズによる、ミレニアルズのためのジョルジオ アルマーニ白書──。帝王による魂の回答があった!

ジョルジオ・アルマーニ
1934年イタリア・ピアチェンツァ生まれ。ミラノ大学医学部在籍中に兵役に召集され、中退。ミラノの老舗百貨店ラ・リナシェンテのバイヤー、セルッティ社のメンズウェア、ヒットマンのデザイナーなどを経て1975年、41歳の年にデビュー。大器晩成のお手本だ。

Interviewer_1

D japanese
ソーシャル・メディアの申し子。フォロワー数は一般日本人男性のランキング1位。ジョルジオ アルマーニのコレクションやイベントにも出席している。

Q 休息日はありますか。あるとすればどのように過ごしますか。

A クリエイティブでいることが人生におけるもっとも大きな喜びだ。そのためにはリラックスして充電する時間が必要になる。旅も好きだし、別荘やヨットの上で過ごすのも好きだよ。たとえわずかでも濃密な休暇を過ごすことができれば、わたしのクリエイティビティは回復する。

Q 洋服のクオリティが図抜けています。お針子さんやチームとのコミュニケーションをきちんととっていらっしゃるからだと思いますが、どのようなことに気をつかわれていますか。

A 自分の情熱や信念を毅然と表現することがなによりも大切だ。なぜならば、みなにインスピレーションを与え、彼らの能力を最大限に引き出してくれるからだ。それにはもちろん、彼らが自分の仕事を誇りに思い、チームの一員であると実感することのできる環境をつくる必要もある。そうしてはじめて同じゴールを目指すことが可能になる。

わたしのチームは非常に良好なコミュニケーションの関係を築いているが、それは彼らの多くがわたしと長い時間を過ごしているパートナーであり、わたしの哲学─エレガンスやシンプリシティの飽くなき追求─を知悉しているからだ。そして彼らは、最高峰の素材を最高峰の職人技術で仕上げることに喜びを感じている。アルマーニをアルマーニたらしめる所以はそこにあるのだ、とかんがえている。

Q 身の周りに起こる出来事や人間関係において、なにが真実でなにが嘘なのかをどのように見極めてきましたか。

A これまでを振り返ると、自分の直観がいかに大切かを思い知らされる。なにを信じるべきかわからないときでも、自分の直観が正しい方向に導いてくれた。

それともうひとつ。人間というものは非常に複雑な生き物だが、わたしは、仲間に対してはつねに正直で誠実であることがベストだ、と人生の節々で痛感してきた。そうすれば相手も同じように自分に接してくれるのだ。

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稲木ジョージ
フィリピン生まれ、日本育ちのトライリンガル。アメアパ渋谷店を売上げ世界一に導いたのち、舞台をニューヨークに移し、ブランドPRやコンサルタントとして活躍。

Q アルマーニさんはファッションだけでなくビューティのジャンルにおいてもとてつもない成功を収めました。はたからみればすべてをやりきってしまったようにみえますが、いまなお挑戦したいことはあるのでしょうか。

A 質問に答える前に、まずは仕事の考え方をお伝えしたい。わたしにとっての仕事とは、つまるところ創造の喜びだ。そして、働いて得られる対価も軽んじることはできない。このふたつがわたしの原動力となる。

わたしの次なる挑戦は、最後の挑戦になるだろう。しかし、よりアルマーニらしくできる領域はまだ数多く残っているから、おそらくわたしは、自分の美意識を表現することのできるあたらしい方法というものを、これからも探求しつづけるのだろうと思う。

Q デザインはいわずもがな、ビジネスにもしっかりと携わっているのがアルマーニさんです。経営者の立場として、自分にもっとも近いチームに求めるものはなんですか。

A わたし自身の経験からハードワークはかならずや報われるものだと信じている。努力すればするほど、ふさわしい報いが得られる。わたしはだから、自分の仕事に情熱をもってほしい、とことあるごとに働きかけている。ただしそれが可能になるのは、チーム全員がヴィジョンを共有し、同じゴールに向かって走ったときだけだ。

以上を整理すれば、わたしがチームに求めるのはハードワーク、献身、専心、賢さ、誠実さ、ということになるだろうか。そうそう、創造性もすべての人間が忘れてはならないものだ。創造性はデザインにのみ求められるものと思われがちだが、ビジネスにおいても極めて重要なスキルである。

わたしのチームがわたしの思いを理解してくれることを心の底から願っている。

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米永 豪
慶應義塾大学商学部に在学しながら、ライター、エディター、マーケターとして活動しているものの、ごくごく普通の大学生。

Q 目の前にあらたなファッションブランドを立ち上げようとしている若者がいたら、どんなアドバイスをしますか。

A わたしがブランドをはじめたころよりも今日のシナリオはずっと複雑だ。過酷な競争を勝ち抜き、突出するためには並々ならぬ努力が必要になってくる。若いデザイナーには、まず、人々の欲求を調べ尽くし、欲求に論理的に応えていくよう進言する。ファッションの海を泳ぎきろうと思えば、それが唯一の方法なんだ。

Q インターネットの普及でファッションにかんする情報が溢れました。人々の服の選び方はどのように変わってきましたか。あるいはこれからどのように変わっていくと考えますか。

A インターネットはファッションとの関わり方をドラスティックに変えた。そこに異論をさしはさむ余地はない。

しかし、変わっていないこともある。それは、ファッションは自分が着たいと思うものをみつける行為であるということ、そしてその服に袖を通すことで気分を高揚させるポテンシャルがあるということだ。つまりファッションは、デザイナーとカスタマーをつなぐ架け橋のような存在なのだ。これはどんなに画期的なバズマーケティング、あるいはファストファッションが生まれても揺らぐことのない部分だ。

Q どんな人物にあなたの服を着てほしいと考えますか。

A わたしはこれまでも、そしてこれからも、わたしの美意識を理解してくれるカスタマーに着てもらいたいと思っている。そして、アルマーニの服を着ることで、人々が洗練されて、静かなる自信を獲得してくれたら、これ以上の喜びはない。

Q 自分のブランドを一言で表すとすれば、どんな言葉ですか。

A 本質。

上野・表慶館にてショーを行った
2020年クルーズコレクションのお披露目の場に選んだのは東京は上野。さる5月、東京国立博物館の敷地に建つ表慶館の回廊をモデルが闊歩した。

Words 竹川 圭 Kei Takegawa