文・神谷晃(GQ)
2016年シーズン、メジャー通算3000本安打を達成したイチロー。毎年塗り替える記録の数が多過ぎて今さら驚くことはないが、ここではキャリア最低だった打率.229という昨年の大スランプを乗り越えてというところに注目したい。そういう意味でも2016年は特別な年になったはずだ。
キャリア最低の記録に終わった2015年、イチローの年齢は42歳。あの躍動感も影を潜め、さすがに限界説も囁かれたが、今年見事に復活を遂げた。3000本という記録よりもむしろ、43歳にしての復活にこそ価値があり、賞賛されるべきだろう。
オリックス時代に死球などでシーズン後半を欠場したこともあったが、イチローはとにかく怪我がない。メジャー移籍後も、故障者リストに入ったのは、第2回ワールド・ベースボール・クラシックス(WBC)の激闘、そして極度のストレスによって胃潰瘍になったとされる2009年開幕時の1度のみ。世界中のどのスポーツを見渡しても、20年以上にわたって第一戦で活躍を続けるトップアスリートは皆無だ。
記者はイチローと同じ1973年生まれ。カラダのあちこちに不調を抱える年齢なだけに、その凄さはどの世代よりも理解できるつもりだ。イチローが所属するフロリダ・マーリンズの地元紙によると、「最低でも50歳までプレーしたい」と本人が語っているという。どうやら、「GQ MEN OF THE YEAR」でイチローを直接表彰できる機会は、まだまだ先のことになりそうだ。