Netflixシリーズ『離婚しようよ』錦戸亮インタビュー──「もっとわがままに生きてもいいのかなって」

Netflixにて6月22日(木)より全世界独占配信中の『離婚しようよ』で、4年ぶりにドラマ復帰し、主人公のふたりを翻弄する役どころを演じる錦戸亮にインタビューした。加納恭二というキャラクターの魅力から「本当のカッコよさとはなにか?」まで、じっくりと語る。
Netflixシリーズ『離婚しようよ』錦戸亮インタビュー──「もっとわがままに生きてもいいのかなって」

Netflixシリーズ『離婚しようよ』6月22日(木)より全世界独占配信中!

役者・錦戸亮が帰ってきた。

Netflixシリーズ『離婚しようよ』は、世間体のために仲良し夫婦を演じる新人議員・東海林大志(松坂桃李)と国民的女優・黒澤ゆい(仲里依紗)が、“離婚する”という目的のためにさまざまな障害を乗り越え、一致団結して突き進んでいく「離婚コメディ」だ。錦戸は、ゆいと偶然出会って親密な仲になる“色気ダダ漏れの自称アーティスト”、加納恭二を演じている。

毎日パチンコに通い、アトリエと称するガレージのような自宅で不思議な“アート作品”を作って暮らす彼の存在は、夫婦生活に嫌気が差していたゆいにときめきをもたらす。ゆい曰く「生きているのか死んでいるのかわからないような人」であり、発言も行動も奔放で、たしかにある種の色気に満ちた人物だ。

『離婚しようよ』より。錦戸が演じる、自称アーティストの加納恭二

本作は宮藤官九郎と大石静の共同脚本となる。それぞれが1話ずつ書き上げるのではなく、交換日記のように交互に少しずつ書き継ぐスタイルで制作されたという。宮藤は恭二について「(引用者注:女性は)そういうところに色気を感じるのかって。正直、全然わからなかったから大石さんに書いていただいてよかったです(笑)。映像になってわかりました」と語る。いっぽうの大石は「私よりも上の世代の、全共闘の男みたいな感じなんですよ。いまの脚本家は書かないようなキャラかもしれないけれど、ちょっと古い世代はああいうのが好きだった」と明かしている(共にプレス資料より)。

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たしかに、昭和の少女漫画に出てくる「はみ出し者のヒーロー」のような風情があるキャラクターだ。そんなキャラクターの魅力を、錦戸自身はどうとらえていたのだろうか。

「周りに左右されないところかな、と思います。自分がいいと思ったものはいいし、興味があるものにはとことん興味があるけれど、ないものには一切ない。テレビやSNSなど、これだけ情報があふれている中でそれを貫くのって、不安にもなるし、けっこうしんどいことだと思うんです。でも、恭二は自分を貫くことを恐れていない。というか、きっと自分がどう見られているかなんて、まったく考えてもいないんでしょうね」

『離婚しようよ』より。大志のライバルになる野党議員・想田豪

本当のカッコよさとは

劇中では、大志の対立候補である野党議員の想田豪(山本耕史)が得意の弁舌をふるい聴衆がそれに呑まれるなか、居合わせた恭二が想田の言い間違いをはっきりと指摘するシーンがある。自由人に見える彼の、芯にあるものを感じる場面だ。飄々としていながらその奥には熱さが潜む──。そうした部分は錦戸本人のイメージと相通じるものがあり、彼以外には演じられなかったのではないかと感じる。そう伝えると「本当ですか。そう言っていただけるとうれしいですね」と少しはにかんだ表情を見せた。

「恭二のそうしたカッコよさが魅力的に映ればいいなとはもちろん思いましたけど、だからといって僕自身が魅力的に映ろう、色っぽく演じようとするのは違うな、って。そういうのはバレた瞬間にめっちゃサムくなりそうだから。そこはもう『そういうふうに見えますように』と、祈りながらやっていました」

ちなみに、劇中で恭二が煙草を吸うシーンが何度かあるが、その所作のひとつには錦戸の提案が活かされているという。

「屋外で煙草を吸った後でどうするかというときに、『靴の裏で消したら?』って提案したんです。ポイ捨てするわけにはいかないし、踏んで消して拾うのもカッコ悪いじゃないですか。アイデアっていうほどのものでもないですけどね」

ゆいと恭二の関係は、やがて大志の知るところになり、物語の終盤で2人は直接対峙する。政治家の家庭に生まれ育った大志は、これまで出会ったことのないタイプである恭二と言葉を交わして「君は僕の持ってないものを持ってる」「君はとめどなく自由だ、すげぇ」と素直に称賛する。しかし彼が立ち去った後、恭二は持っていた紙コップを床に投げつける。

「あの場所に来てくれる大志がすごいですよね。恭二はたぶん、もうその時点で敗北感を抱いていたんじゃないかな。かまそうと思っていたけど、かまされへんかったというか。だって、大志はきっとかまされたとも思ってないでしょうし、勝ってることにも気づかずに帰ってるでしょう?」

そう語った後、大阪人らしく「知らんけど!」と笑って付け足した。

『離婚しようよ』より。松坂桃李演じる新人議員、東海林大志

「本当のところはわからないですよ。あ、ただ、あの場面の映像を見たときに『自分、ちっさ!』と思ったのはたしかです。大志とのスケール感が違いすぎて(笑)」

大志と恭二、2人のどちらにカッコよさを感じるか? そう尋ねると「両方カッコいいんじゃないですか?」と答える。

「半端な答えですいませんけど……。それぞれがカッコいい部分も悪い部分も持ち合わせていると思います。2人に限らず、この作品に出てくるみんながカッコいいんですよね。ゆいさんも、ヘンリー(編注:ゆいの弁護士で、古田新太が演じる)も、ゆいさんのマネージャー(少路勇介)も、みんなそれぞれのカッコよさがあると思いました」

楽しそうなことを楽しくやりたい

恭二のカッコよさの根幹である「自分を持ち続ける姿勢」は、社会で生きていくなかで保ち続けるのはなかなか困難なことでもある。共感を覚える部分はあっただろうか。

「僕自身は今、けっこう好き勝手というか、自分のやりたいように生きているといえば生きていますね。やりたいことだけやっているってわけでもないんですけど、もっとわがままに生きてもいいのかなと思って、自分の時間を大事にするようにはなったと思います」

冒頭で記した通り、ドラマへの出演は4年ぶりとなる。なお、過去に出演したドラマでは、『流星の絆』(2008年)と『ごめんね青春!』(2014年)が本作と同じく宮藤官九郎脚本×磯山晶プロデューサー作品であり、いずれも金子文紀監督が演出を担っていた。

「『流星の絆』のときに、金子さんから『滑舌に注意して』ってずっと言われていたんです。僕ははっきりしゃべっているつもりやったんですけど。それが『ごめんね青春!』でひさしぶりに会ったとき、『めちゃめちゃ滑舌良くなったね』と言っていただいたんですよ。今回もたぶん、1、2回言われたんじゃないかな。滑舌だけ褒められました(笑)」

インタビューに同席していた磯山プロデューサーが「もちろんそれだけじゃなくて、『よく考えてる』って(金子監督が)すごく褒めてましたよ」と言葉を添えると、「そう思われてるの恥ずかしい! ダサい!」と悶絶する一幕も。

「この4年はたまたま機会がなかっただけで、ドラマ出演の期間が空いたことに対して、自分では特に思うところはなかったです。声をかけていただいたからには一生懸命頑張るだけで、こうやって呼んでもらえるならどこにでもいきたい。芝居に限らず、楽しそうなことを自分も楽しみながらやっていきたいですね」

楽しく心地よく、そして自由でいられるように、自分の心の赴くほうへ向かう──。その気負いのなさこそが人の目を惹きつけて離さない。

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Netflixシリーズ『離婚しようよ』

6月22日(木)より全世界独占配信中!

錦戸 亮(にしきど りょう)

1984年生まれ、大阪府出身。主な出演映画は『ちょんまげぷりん』『県庁おもてなし課』『抱きしめたい-真実の物語-』『羊の木』、出演ドラマは『流星の絆』『オルトロスの犬』『ごめんね青春!』『ウチの夫は仕事ができない』『トレース〜科捜研の男〜』など。2019年にソロ活動をスタートさせ、自身主宰のレーベル「NOMAD RECORDS」を設立。すべての楽曲の作詞・作曲・プロデュースを手掛けた1stアルバム『NOMAD』はオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得。以降も毎年作品を発表し、昨年11月には3rdアルバム『Nocturnal』をリリース。音楽活動も精力的に行っている。

取材と文・斎藤 岬、写真・ホシダテッペイ
スタイリング・本多徳生、ヘアメイク・松本 順(辻事務所)
編集・横山芙美(GQ)