【中秋の名月】月見団子の由来や意味とは? 月見団子のレシピ付(2021年は9月21日)

日本古来の伝統食は、日本の気候や風土、歴史によって長年育まれてきた大切な食文化です。中でも、暮らしの節目節目にくり返される「行事食」には、日本人のスピリットが凝縮されています。本連載は、日本の伝統食、行事食にスポットを当て、知っておきたい基本知識について、日本料理研究家の柳原尚之さんにお話しいただき、さらに覚えておけば日々の食ライフがランクアップする、日本料理の基本レシピも随時紹介!

2018年09月23日
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【中秋の名月】月見団子の由来や意味とは? 月見団子のレシピ付(2021年は9月21日)
Summary
1.十五夜とは何か? お月見の歴史について(2021年は9月21日)
2.なぜ十五夜には団子を供えるのか? 十五夜にまつわる雑学
3.お月見に欠かせない、月見団子のレシピを公開します!

連載第10回:十五夜の「月見団子」の歴史について【日本料理研究家/近茶流嗣家・柳原尚之】

2021年の中秋の名月は9月21日(火)。旧暦では8月15日の満月のことを「中秋の名月」または「十五夜」と呼ぶ。この日は古くから月に見立てた団子を供え、お月見をするのが日本の文化。秋の彼岸も明け、暑さも落ち着き、月を愛でるにもよい気候である。

ところで、日本ではなぜお月見をするのだろうか。そしてなぜ団子を供えるのだろうか。今回は十五夜にまつわる月見団子について、NHK『きょうの料理』講師でおなじみの「江戸懐石近茶流嗣家(きんさりゅうしか)」・柳原尚之さんにご登場していただき、日本の伝統食文化「お月見」について解説していただいた。

中秋の名月「十五夜」とは?

十五夜の行事は中国から伝わったとされています。中国ではこの日を中秋節と称し、月餅(げっぺい)などのお菓子を備えて観月の宴を開きます。日本では宮中行事としての月の宴が初めて開かれたのは897年とされています。平安時代には貴族たちが詩歌を詠み、風流を競ったようです。

ところで、現在は十五夜だけが祝われていますが、本来は十五夜だけでは「片見月」といって、お月見として不完全とされていました。古くはその後の十三夜も大切に祝われていました。十三夜は十五夜の前ではなく後に来るので、「後の月」といい、旧暦の9月13日の月見をさします。昔は両方をセットで祝って初めて「両見月」とされ、お月見を完遂したことになりました。また十三夜は満月の一歩手前の月であり、不完全に美意識をもつ日本人独特の風習でもあります。

なお、十五夜は里芋の収穫期にあたるため、別名「芋名月」と呼ばれ、15個の団子と、里芋を供えます。一方、十三夜は「豆名月」や「栗名月」と呼ばれ、13個の団子と、豆や栗を供えていました。お月見は、農耕の収穫祭としての一面もありました。

なぜ十五夜に団子を供えるのか? お供えの方法は?

月見団子は望月(満月)に見立て、丸く形作ります。伝統的なお供えの方法は、月がよく見える場所に台を置き、御三方や大皿に15個の団子をうず高く盛ります。里芋やさつまいも、枝豆、栗などの秋に収穫を迎える野菜とすすき、秋草を供えて名月を祭ります。ところでなぜすすきを飾るのでしょうか。背の高いすすきを飾ることで、神さまが降り立つ「依代(よりしろ)」とされているためです。正月の門松も同じです。

このお月見の行事が庶民に広まったのは江戸時代。ちょうど米の収穫の時期も近く、とれたての米を団子にして、収穫を祝ったと伝えられています。が、私の見解では、月見団子には新米ではなく、稲刈り前に残った米が使われたのではないかと考えています。夏を越して古米になった米を粉にして、団子にしたほうが合理的で、そのまま炊くよりもおいしく食べられるので、上手に活用したのではないかと思っています。

関東と関西、月見団子は違う? お月見にまつわる雑学

十五夜団子は満月を思わせるように大きめに形づくります。小さい団子は「仏団子」と呼ばれ、仏壇に供える団子を思わせるため嫌われます。江戸時代の年中行事を記した『東都歳事記』には、十五夜の朝に団子を作る記述がありますが、団子の大きさは三寸五分(約10cm)とあります。かなり大きいですね。また15個団子を重ねるのは難しく、9段、4段、、1段の14個ですと安定がいいのですが、15個の場合、ひと工夫が必要です。

なお、地域によって団子の形や風習は異なります。たとえば関東では丸型が一般的ですが、関西の月見団子は楕円形、芋型に形づくり、きな粉をふります。芋型というのは芋名月にちなんでいるのかもしれません。

私の家でも、昔から十五夜には団子を供えていました。これは父が小さい頃の話ですが、月見団子に関してはおもしろい風習があります。「月見団子は他の家のものをとってもおとがめなし」と言われていたそうです。昔は子供たちが竹の先に五寸釘をつけ、「垣根ごしに刺したものは泥棒にならない」というルールがあり、よその家の庭先に供えられた月見団子に狙いをつけて突き刺し、持って帰って食べたそうです。

月見団子の食べ方は、平らに押しつぶしてこんがりと焼き、砂糖醤油をつけて食べるとおいしいです。この味も子供の頃から、お月見の思い出として残っています。

昔から日本人は、お月見を好み、親しんできました。その名残に、卵黄を満月に見立てた「月見うどん」や「月見そば」、ハンバーガーなどもあります。昔も今も、月の光は人々の心の平安のよりどころになっているようです。

手作りできる「月見団子」のレシピを公開!

【材料(15個分)】

・上新粉 600g
・熱湯 700ml

【作り方】

① ボウルに上新粉を入れ、熱湯を2~3回に分けて回しかけながら菜箸でかき混ぜる。

② 手で触れるくらいの温度になったら、ダマのないように全体をよくこねる。

③ ②を棒状にのばして15等分し、両手のひらで一つひとつ球状に丸める。

④ 湯気の立った蒸し器にさらしの布巾を広げ、③をのせて、ふたをして30~40分間蒸す。

⑤ 蒸し上がった団子を素早くとり出し、うちわであおいで風を送り、団子につやを出す。冷めたら御三方または大皿に姿よく盛る。

十五夜に供えた団子は、布巾に挟んで手で平らにつぶすか、薄く切って網で焼き、砂糖醤油をつけて食べるととてもおいしいです。今年は手作りの月見団子で、ゆっくりお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考文献
『柳原一成の和食指南』(柳原一成著 NHK出版)
『ニッポンの縁起食』(柳原一成・柳原紀子著 NHK出版)

※写真はイメージです
写真提供元(一部):PIXTA
編集協力:糸田麻里子(フードライター/エディター)