「雪国の女性らしく、芯が強く、包容力のある女性を演じた」と話す北乃きいさん=福井県福井市内

 明治時代の麻生津村(現福井県福井市)に眼鏡産業の礎を築いた増永五左衛門、幸八兄弟。五左衛門の妻・むめを演じた。「雪国の女性らしく、芯が強く、包容力のある女性を意識した」と役作りを振り返る。

 劇中では、兄弟との出会いから結婚、3人の娘の母、眼鏡工場のおかみさんになる姿が描かれる。10代から30代までの福井の女性を演じ切った。

⇒映画「おしょりん」の予告動画

 増永家となったのは、越前市の国重要文化財の旧谷口家住宅。セットでなく、ここで過ごした時間は役作りに大いに役立った。「福井のボランティアスタッフと触れ合い、福井の女性像が膨らんだ」

 安定しない眼鏡製造の経営に苦悩する五左衛門や、眼鏡作りにまい進する職人たちを妻、おかみさんとして献身的に支え、勇気づけた。「夢に向かう男性の熱い気持ちは胸を打つものがあった。ちょっとやる気をなくしたり、これから何かを始めようとしたりする時にぜひ見てもらいたい作品」と力を込める。

⇒映画「おしょりん」原作者藤岡陽子さんの作品への思い

 多くの地元エキストラに支えられた。「職人役のエキストラは『カット』の声がかかってもずっと眼鏡をつくる工程を練習していた。福井の人はまじめだなと思った。この県民性があって眼鏡の高いシェアにつながっていると思った」

 声をかけてくれる県民からも元気づけられた。「『公開楽しみにしているよ』と言ってもらえたのがうれしかった。福井県全体で応援し娘のように扱ってくれた」

 ◇北乃きい(きたの・きい) 1991年神奈川県出身。2007年、主演作「幸福な食卓」で日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。ドラマや舞台でも活躍する。

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 福井の眼鏡産業の黎明期を描いた映画「おしょりん」が10月20日に福井県内で公開される。主要キャスト5人に作品や福井への思いを聞いた。