はじめに
1. 構図とは
2. 構図を決める時のコツ
3. 基本構図とテクニック
1)日の丸構図
2)三分割法
3)黄金比
4)対角線構図
5)二分割構図
4. ポートレートにおすすめのレンズ
100mm / F4
18mm /F3.5
85mm / F4、35mm /F7.1
50mm / F4
105mm / F4
まとめ
作例に使用したカメラ
Canon EOS RP / EOS 5Ds R
作例に使用したレンズ
Canon RF24-105mm F4 L IS USM / EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / EF24-105mm F4L IS USM
株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイト撮影を中心に活動。アパレルメーカーとのコラボ展の企画など写真を通じて幅広く表現活動を行っている。
2012年 個展「The Secret Garden」開催、TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD入賞
2013年 グループ展「nice to meet you」、個展「Out of the Garden」開催
2015年 個展「NY Love Stories」「Ginza Love Stories」開催
2017年 個展「Rhapsody in Blue」開催
2021年 個展「LAUNDROMAT」「WONDERLAUND」開催、写真集『WONDERLAUND』刊行
旅行やイベントごと、日々の仕事や日常のさまざまなシーンで、人物写真、ポートレートを撮影する機会は増えています。どうしたら素敵なポートレートを撮ることができるのでしょうか。
このブログでは、プロカメラマンの鵜川真由子さんによるポートレート撮影についての基本となる考え方やコツを、シチュエーションごとに8回に分けて進めていきます。
構図、自然光、ライティング、焦点距離、背景やボケの活かし方、夜のポートレートなどなど、毎回、鵜川さんが撮影した素敵な作例写真と共にお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。
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写真や絵画などの画像を構成する基本的な要素のことです。
具体的には人や物の配置、光と影のバランスやコントラスト、縦位置か横位置どちらで撮るのかなど、たくさんある要素をどう選びとるかによって写真の仕上がりが大きく変わってくるのです。
構図にはいくつかの法則があります。「よくわからないけど何だか気持ちいい」と感覚的に感じる写真を紐解いてみると、実はその法則に従った美しい構図であることがわかります。
その中からいくつかを紹介しますので、どう撮ればいいのかがわからず撮影の際に迷ってしまうという方は、まずはこの基本法則を取り入れてみるといいでしょう。
魅力的な構図とはどのようなものでしょうか。
・被写体が美しく写っていること?
・主役が引き立っていること?
・視覚的な効果をうまく使っていること?
その通り。もちろんそれらはとても大切な要素です。
ではいいポートレートとはどのようなものでしょうか。
写真とは不思議なもので、撮った人が何を見てどう感じているのかということが現れてしまいます。
人物を視覚的な記号としてだけ捉えていても、綺麗な写真であってもいいポートレートとは言えません。撮る”人”と写す”人”の関係性が垣間見えた時に、見る人が共感していい写真だなと感じるのでしょう。
つまり自分が「被写体の何に魅力を感じるのか」や「何を伝えたいのか」をよく考えていけば、その部分を引き出して視覚化するために必要な技術や法則が自ずと選択できるようになっていきます。
というと難しく聞こえるかもしれませんが、例えば友達と旅をしている時には楽しんで写真を撮っていますし、2人ともリラックスしているので自然と笑顔が溢れますよね。
そういった、
・大好きな友達と旅するワクワク感や、躍動感を伝いえたい!
・でも街の魅力も見せたい!
そんなことを考えながら撮った写真が下記の5枚です。
自分の素直な欲求に従うことが、いい写真を撮ることへの第一歩だと思います。
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これらの写真を紐解きながら、基本構図をいくつかご紹介していきたいと思います。私はずっと感覚的に撮っていたのですが、良く撮れた!と思う写真は、実はこの法則に当てはまるんだということを知った時は驚きました。
構図が決まらず撮り方に迷った時に、思い出して画面構成の参考にして下さい。
ポートレートの主役はもちろん人物ですが、背景の情報があってこそ際立ちます。空間をどう生かすのかで写真の質がぐんと変わってきますので、被写体だけに注目するのではなく、画面の隅々までよく見て撮ることを心がけるといいでしょう。
最も基本的な構図の一つで被写体を真ん中に持ってくるシンプルな方法です。
一番見せたいものだけを強く見せる効果があります。
自転車に乗りながらふと声をかけた瞬間に振り向いた様子。
カメラを少し傾けることで画面に動きが生まれています。何気なく撮っているような効果もあるので、旅の臨場感を伝えるスナップショットには最適です。外での撮影にはいろんなものが写り込んできますので、背景のポールなどに人物の頭が被らないように気をつけましょう。
街灯の光を利用しているためこのような色味になりました。夜の街はこのほかにもネオンやライトがたくさんあるので、そういったものをうまく活用すると一味違った楽しい写真になるかもしれません。
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高台の上から見渡す風景に心を奪われて撮りました。
旅先で出会う絶景を写真に収めるのは実はとても難しいですよね。人を入れての記念写真もどう切り取ったらいいか迷ってしまうことも多いと思いますが、そんな時には余計なものを省いてシンプルに撮ることをお勧めします。
ここで気をつけるのは人物の大きさです。この場合は小さ過ぎると訴求力が下がりますので、カメラに近い位置に立ってもらうといいでしょう。また、レンズの絞りを少し絞ることで(この場合は絞りF9 )背景もしっかり描写されますので、人と絶景の両方が際立った写真になります。
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こちらは自撮りです(笑)。雨の日のスクランブル交差点をバックに三脚を立ててスローシャッター(0.3秒)で撮りました。ポケットに入れた左手に持っているスマホのアプリでシャッターを押しています。
後ろを歩く人たちをブラして表情を消すことで、中央の被写体に視線が向くような効果が生まれています。
人に寄ったポートレート
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日が沈み、あたりが青みがかってきた時間帯に撮った一枚です。ここで見せたいのは彼女の表情そのものなので、余計なものが写り込まないようにシンプルな背景を選びました。彼女が普段見せない内面に触れられたら…なんてことを考えながら撮っています。
絞りをF4にすることで背景の空と海の境界線をぼかしました。濃い青と薄い青の比率にも注意です。
画面を縦横に三分割した線の交点に被写体を配置する方法です。カメラのグリッドを使えばピッタリ合わせることができますが、スマホなどで撮影するときは真ん中より少しずつずらした位置だと認識しているといいかと思います。
街をぶらぶら歩いている時に見つけたカラフルな壁。二人とも可愛いものが好きなのでテンションが上がり、即席の撮影会が始まりました。ここでのポイントは黄色と赤の比率と人物の配置です。
こちらは少し変則的ですが、画面を三分割した場合のバランスの取り方です。信号待ちの時に振り返ったところをパシャリ。大胆な人物の配置によって背景にある特徴的な建物と人物の両方が引き立つ構図になっています。
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旅先で出会ったジャズミュージシャンのカロリーナ。
フォトセッションをしていろんなポーズをとってもらいました。後ろの窓枠が三分割なのでわかりやすいですね。顔にしっかり光を当てるために太陽の方角を向いています。
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横位置ではこのようになります。
後ろの建物に合わせると分割しやすいですね。人物を浮き上がらせるために背景にはピントを合わさずぼかしています(絞りF4)。逆光を利用してハイキーに仕上げました。人物に露出を合わせることで画面全体が明るくなり、柔らかい光に包まれているような効果があります。彼女のアンニュイな表情がとても素敵な、お気に入りの一枚です。
絵画やデザインを学んだ方にはお馴染みかと思います。古代彫刻や絵画・建築などで用いられている、人間が最も美しいと感じる比率(近似値1:1.618)だそうです。
私はというとダヴィンチ・コードなんかで目にした記憶がありますが正直なところ、写真を撮る際にこの比率を意識したことはありません。しかし心地よいと感じるバランスなのでしょう、無意識のうちに選び取っていました。
サグラダ・ファミリアにてステンドグラス越しの美しい光が作り出す模様を背景に。繊細な装飾を見げてうっとりしている友人の表情に惹かれて撮りました。これを見るとその時の感動が蘇ってきます。
しかし、顔だけにクローズアップすると光の美しさまで表現できないので、少し引いた位置から空気感が伝わるよう撮りました。このサグラダ・ファミリアの建築にも黄金比が用いられているそうで、運命的なものを感じました!
ちょっと変わった構図は高台の上から見下ろして。画面の構成だけではなく、撮影者の視点を変えることでも印象的な写真になります。
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緑の大地にピンクのスカートが映えていて目を引きました。
人の表情をクローズアップするのではなく、少し引いた場所から見つめています。心の揺れを感じて欲しくて中途半端に斜めの構図にしました。
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遊具で遊ぶ少女。影が作り出す水玉模様と洋服の模様がマッチしてとても可愛かったので思わずパシャリ。2枚の写真は狙ったわけではないのに画面のバランスがほぼ同じで驚きました。
撮り方の癖もありますが、これが自分にとって心地の良い構図なのだと再認識しました。
主役と脇役を対角線上に配置することにより安定したバランスになる構図です。奥行きや遠近感を出す視覚的効果もあるので、背景の選び方次第でダイナミックな写真になります。
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サーフィンをするかっこいいママと息子くん。仲良しの二人を微笑ましい気持ちで撮りました。
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窓辺で物思いにふける少女。
暗い室内での撮影ですが、ストロボなどは使わず窓から差し込む自然光のみで撮影しています。
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厳密には対角線ではないですが、同じような視覚効果のある一枚。
私は寝転んで、地面スレスレから見上げて撮っています。さらに広角レンズを使うことで空に向かってそびえ立つような構図になりました。母の強さがよく出ていると思います。
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ジャズミュージシャン・カロリーナの別カット。
最初は少し照れていましたが、コミュニケーションを取りながら距離を縮めていきました。弾けるような笑顔が印象的です。ローアングルからあおるように撮っていることで躍動感が生まれました。
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※こちらは対角線構図ではないのですが、上の写真との比較で載せています。
その名の通り、画面を縦、または横に均等に二分割する構図です。
地平線や水平線など、主に風景写真で使うことが多いかと思いますが、私は時々人物撮影でも活用しています。人物を風景の中に溶け込ませたカットで使うことでストーリー性が生まれることが特徴です。
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こちらも私は寝転がって撮っています。広角レンズを使っているので奥行きを感じられます。地面と空とで全く違う世界が広がっているのも面白いですね。
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ほっこりする親子ショット。この場合、水平線が頭を貫かない方が好ましいです。自分の目線の高さを調整しながらバランスの良い場所を探りましょう。
ここまで見ていただいて、ポートレートと言っても様々な撮り方があることがおわかりいただけたと思います。つまりどのような表現がしたいかということによって、必要なレンズも変わってくるというわけです。
キヤノンEOS RP・Canon RF24-105mm F4 L IS USM(100mmで撮影)
絞りF4・1/200秒・ ISO200・W Bオート
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キヤノンEOS M・EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM(18mmで撮影)
絞りF3.5・1/125秒・ ISO400・W Bオート
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上の二つの写真は似たような画角で絞りの値もほぼ同じですが、背景の見え方、人物とのバランスが大きく違います。100mmの方がボケ感が強く、背景のビルも近く感じます。
一方18mmのレンズを使った方ではより大きなパースがついて奥の建物や人がとても小さく感じます。被写体がより大きく写るため、迫力のある構図になっています。
キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS USM(85mmで撮影)
絞りF4・1/100秒・ ISO100・W Bオート
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キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS USM(35mmで撮影)
絞りF7.1・1/100秒・ ISO400・W Bオート
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同じ場所で撮った2枚の写真。
キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS USM(50mmで撮影)
絞りF4・1/60秒・ ISO800・W Bオート
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キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS USM(105mmで撮影)
絞りF4・1/200秒・ ISO200・W Bオート
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望遠レンズを使えばこんな表現も可能です。
Photo & Text by 鵜川 真由子(うかわ・まゆこ)