9月29日から10月1日にかけて行われたフィギュアスケート近畿選手権。

シニア男子は壷井達也が合計232.09点で優勝、シニア女子は合計174.83点で吉田陽菜が優勝した。

この近畿選手権で西日本選手権への出場権を獲得したシニア・ジュニアの選手たち、そして全日本ノービス出場を決めた選手たちの結果を振り返っていく。

【シニア男子】壷井達也が優勝

GPシリーズ出場のため、免除されている壷井達也、片伊勢武アミンを除く12名が西日本選手権へ出場を決めたシニア男子。

壷井達也は近畿ブロックで初優勝を決める。

新SPを披露した壷井達也
新SPを披露した壷井達也
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SPでは、今までにない“男らしさ”がテーマの新プログラム『アランフェス』を披露。

3回転ルッツのコンビネーションにミスが出るも、冒頭の4回転サルコウ、トリプルアクセル(3回転半)をクリーンに成功。

一番時間をかけたという出だしの部分で観客の心をつかみ、SP首位に立った。

翌日FSでは振付師マッシモ・スカリさんの提案で新調したという衣装で、初の試合に臨んだ。

新衣装で今大会に臨んだ壷井
新衣装で今大会に臨んだ壷井

冒頭4回転サルコウをなんとか着氷したが、2本目のコンビネーションで惜しくも転倒。しかしその他のジャンプをまとめ立て直した。

4回転に関しては、練習では確率が上がっていたというだけに「6分間練習で調子の悪いまま修正できなかった」と悔しさを滲ませた。

演技後、壷井は衣装については今後試行錯誤していきたいと語った
演技後、壷井は衣装については今後試行錯誤していきたいと語った

初お披露目となった衣装に関しては、「実際に試合をしてみたら、腕の部分が重いのが気になった」と今後試行錯誤を重ねていくようだ。

今季はGPシリーズ2戦に出場予定。

10月20日に控えるスケートアメリカに向けては、「悔しい思いができたことが収穫。また一から練習をやり直して、表彰台を目指して頑張っていきたい」と意気込んだ。

13年ぶりの出場で2位となった織田信成
13年ぶりの出場で2位となった織田信成

2位には13年ぶりの出場となった織田信成。

今年の全日本選手権は、2008年に自身が初優勝を果たした長野県・ビックハットで行われる。

「思い出の地でもう一度滑りたい」と本格的に現役復帰を果たした。

イタリア語で「白い雲」を意味する新SPのジャンプの構成は、2010年の現役時代と全く一緒だという。

ショート初戦となった今大会、冒頭トリプルアクセルをクリーンに着氷しノーミス演技で会場は大歓声に包まれた。

キスクラでは涙を流す場面も
キスクラでは涙を流す場面も

演技を終えコーチで母の憲子さんにつられ、キスクラでは涙を流す姿もあった。

SP3位で迎えたFSは、冒頭4回転トゥループを着氷させ会場は騒然とした。

さらにトリプルアクセルからの3連続ジャンプ、点数が1.1倍になる後半にもトリプルアクセルも成功させ、FSトップスコアを叩き出し準優勝。

「点数はまだまだ伸ばしたい。4回転はもう一本入れていきたい」と若い子たちに負けじと闘志を燃やす。36歳“晩年この一手”の挑戦に目が離せない。

シニア男子表彰台(近畿選手権)
シニア男子表彰台(近畿選手権)

【シニア男子】
1位 壷井 達也(シスメックス)232.09点
2位 織田 信成(大阪スケート倶楽部)230.90点
3位 片伊勢 武 アミン(関西大学)207.47点
4位 木科 雄登(関西大学)203.71点
5位 佐々木 晴也(京都大学)194.57点
6位 本田 ルーカス剛史(木下アカデミー)194.25点
7位 三宅 星南(関空スケート)179.19点
8位 三島 悠生(ひょうご西宮FSC)144.04点
9位 嘉手納 宙大(臨海フィギュアSC)138.84点
10位 小林 隼(同志社大学)136.62点
11位 彦阪 昇吾(立命館大学)128.31点
12位 前川 裕士(大公大FSC)118.45点
13位 川口 清壽(佛教大学)116.97点
14位 高浜 琢斗(大阪経済大学)101.29点

【シニア女子】木下アカデミーが表彰台独占

GPシリーズ出場のため、免除されている吉田陽菜、千葉百音を除く7名が西日本選手権へ出場を決めたシニア女子。

木下アカデミー所属の18歳トリオが表彰台独占となった。

トリプルアクセルを武器に、今季シニアとして本格参戦となる吉田陽菜が近畿制覇。

吉田陽菜は今季シニアに本格参戦
吉田陽菜は今季シニアに本格参戦

げんさんサマーカップ優勝、CSロンバルディア杯では3位表彰台と好成績を残し迎えた今大会。

SPでは、調子が良くなかったと話すトリプルアクセルを回避し2位発進。

FSで逆転した吉田陽菜
FSで逆転した吉田陽菜

FSでその大技に挑戦するも転倒。しかし他のジャンプをまとめ、スピンではすべて最高評価のレベル4を獲得するなど、演技構成点でトップスコアを獲得し逆転V。

次戦は、自身初となるGPシリーズのスケートアメリカに出場。「直すところは見つかったので2週間本気で追い込みたい」と自己ベスト更新を目指し突き進む。

「挑戦」の新プログラムを披露した千葉百音
「挑戦」の新プログラムを披露した千葉百音

今年5月に移籍を決意し、近畿選手権デビューとなった千葉百音は2位。

自身にとって「挑戦」と語る新プログラムの『黒い瞳』を圧巻の表現力で披露。

会場はスタンディングオベーションでSP首位に立った。

FSではミスが重なってしまった千葉
FSではミスが重なってしまった千葉

一方FSではジャンプでミスが重なり苦しい結果に。

9月のオータムクラシックの際にでん部を負傷したことを明かし、「なかなか本調子に持っていくことができず、今大会に臨んでしまった」と振り返った。

演技後、悔しそうにする千葉
演技後、悔しそうにする千葉

次戦は吉田とともにGPスケートアメリカに挑む。

「今回、自分の中ですごく悔しい演技をしてしまった。次は失敗が許されないと思う。しっかり覚悟を決めて臨みたい」と引き締めた。

3位には清水咲衣。

今季から木下アカデミーへ移籍し、本田ルーカス剛史とのペアを結成。シングルではシニアへ転向し、二刀流で挑む。

ジャンプを全て着氷しFSでは2位。シニアデビュー2戦目にして表彰台と弾みをつけた。

ペアとの両立については、「大会が終わるたびに心身の疲労があるので、連戦でも1つ1つ演技に集中できるよう、気持ちの切り替えを早く出来るように意識したい」と語った。

次戦はペアとして東日本選手権、シングルとして西日本選手権に出場する。

シニア女子表彰台(近畿選手権)
シニア女子表彰台(近畿選手権)

【シニア女子】
1位 吉田 陽菜(木下アカデミー)174.83点
2位 千葉 百音(木下アカデミー)160.88点
3位 清水 咲衣(木下アカデミー)158.56点
4位 籠谷 歩未(神戸クラブ)147.84点
5位 白岩 優奈(関西大学)134.26点
6位 柴野 ちりさ(甲南女子大学)127.19点
7位 鈴木 なつ(関西大学)123.79点
8位 大関 凜花(同志社大学)118.64点
9位 前野 百花(同志社大学)116.43点

【ジュニア男子】森本涼雅が4年ぶりの制覇

西日本には出場した上位14名に加え、ジュニアGPシリーズ出場のため、予選免除されている垣内珀琉・中村俊介が進出した。

優勝は森本涼雅。

ノービスA時代の優勝以来、ジュニアとしては初の4年ぶりとなる近畿制覇。

2019年ノービスA時代 同じ木下カンセーアイスアリーナで優勝を飾った森本涼雅
2019年ノービスA時代 同じ木下カンセーアイスアリーナで優勝を飾った森本涼雅

SP2位で迎えたFS。

2週間前に左足を痛めた影響で4回転トゥループを回避し、トリプルアクセルに挑戦。

成功とはならなかったものの、最後までパワーみなぎる演技で自己ベストを10点更新し、さらに目標の190点超えをクリアで逆転Vとなった。

FSでは自己ベストを更新した森本
FSでは自己ベストを更新した森本

「最近は自信もなくし、ネガティブ思考になっていた。今回こういう結果が出て本当にうれしかった」と話すなど、今季好調の兆し。

全日本ジュニアでは、憧れの全日本選手権出場を目指し、さらに結果を求めて挑む。

ジュニア男子表彰台(近畿選手権)
ジュニア男子表彰台(近畿選手権)

【ジュニア男子】
1位 森本 涼雅(木下アカデミー)190.32点
2位 朝賀 俊太朗(大阪スケート倶楽部)175.77点
3位 高橋 星名(木下アカデミー)174.98点
4位 名倉 一裕(大阪スケート倶楽部)166.96点
5位 佐藤 光(松陰兵庫高校スケート部)163.27点
6位 磯和 大智(京都宇治FSC)157.82点
7位 向野 慶(神戸ポートアイランドクラブ)157.78点
8位 織田 信義(大阪スケート倶楽部)150.83点
9位 小島 志凰(浪速中・高スケート部)138.76点
10位 生田 琉悟(浪速中・高スケート部)135.10点
11位 磯和 大雅(京都宇治FSC)131.61点
12位 石原 弘斗(京都宇治FSC)128.35点
13位 飛永 恭兵(大阪スケート倶楽部)118.89点
14位 加藤 嶺(東大津ISC)107.63点

【ジュニア女子】山田恵がリベンジ果たす

西日本には出場した上位14名に加え、ジュニアGPシリーズ出場のため、予選免除されている柴山歩・村上遥奈・櫛田育良が進出した。

優勝は山田恵。

SP・FSともに自己ベスト更新と昨季2位のリベンジを見事果たした。

村元哉中&高橋大輔組も使用した『CONGA』
村元哉中&高橋大輔組も使用した『CONGA』

新SP『CONGA』は、昨季競技を引退した“かなだい”こと村元哉中&高橋大輔組も使用していた。

試合前、村元から直接指導を受けたという「楽しく盛り上げる踊り」をしっかりと表現し、ノーミス演技で観客を魅了した。

翌日のFSで披露したのは新プログラムの『Funny Girl』。

SPとFSで自己ベストを更新し優勝した山田恵
SPとFSで自己ベストを更新し優勝した山田恵

明るく元気な世界観で滑り切り、演技構成点は出場選手唯一の50点台を獲得した。

SPに続きノーミスで、FSも自己ベストを10点以上更新。スコアを見た山田は、キスクラでは涙を流して喜んでいた。

次戦の西日本へ向けては「のびのび滑って自己ベスト出したい!」と今季躍動の予感だ。

ジュニア女子表彰台(近畿選手権)
ジュニア女子表彰台(近畿選手権)

【ジュニア女子】
1位 山田 恵(木下アカデミー)175.42点
2位 岩崎 陽菜(なみはやクラブ)147.29点
3位 北谷 美結(京都宇治FSC)146.71点
4位 重田 美星(神戸ポートアイランドクラブ)140.88点
5位 山邊 百(松陰兵庫高校スケート部)137.04点
6位 大山 莉奈(神戸クラブ)126.82点
7位 藤原 ゆりあ(関空スケート)124.90点
8位 渡邊 愛子(神戸ポートアイランドクラブ)123.17点
9位 嶋田 愛和(関西大学KFSC)122.79点
10位 藤井 麗名(神戸ポートアイランドクラブ)122.66点
11位 豆板 美稀子(ひょうご西宮FSC)116.15点
12位 高橋 萌音(神戸クラブ)116.00点
13位 後藤 愛莉(ゴールドスターFSC)114.30点
14位 大門 桜子(京都宇治FSC)113.92点

【ノービスAB、男子・女子】

11~13歳が参加するノービスAクラスと、9~11歳が参加するBクラスでは、この近畿選手権を通過すると、10月21日開催の全日本ノービスへ出場できる。

話題の“ひき肉ポーズ”で喜びを表現する川勝玲奈・金沢純禾・河野莉々愛(左から)
話題の“ひき肉ポーズ”で喜びを表現する川勝玲奈・金沢純禾・河野莉々愛(左から)

推薦選手の金沢純禾・川勝玲奈・河野莉々愛を除く上位5名が全日本ノービス出場となったノービスAは、3点差をひしめくハイレベルな上位争いが繰り広げられた。

ノービスA1年目の金沢純禾が、ノービスBからの大会3連覇を達成する。

ノービスBから大会3連覇を果たした金沢純禾
ノービスBから大会3連覇を果たした金沢純禾

カギとなる冒頭3回転ルッツ、3回転トゥループのコンビネーションを決め、さらに今大会から組み込んだという、ダブルアクセル+3回転トゥループ+ダブルアクセルの3連続ジャンプも成功させ、自己ベストを更新した。

次戦はノービスBからの2連覇がかかる全日本ノービス。狙うはその先の全日本ジュニア出場だ。

自己ベストを更新した川勝玲奈
自己ベストを更新した川勝玲奈

2位に川勝玲奈。

スピードの落ちないスケーティングと、完成度の高いノーミス演技で自己ベストを10点更新させる。

次なる目標は金沢・河野も構成に入れている“3回転ルッツ+3回転トゥループのコンビネーション投入”だ。

去年8位の全日本ノービスに向けては、「練習通りに演技して100点を目指したい」と意気込んだ。

昨季からの継続プログラムで挑んだ河野莉々愛
昨季からの継続プログラムで挑んだ河野莉々愛

3位には河野莉々愛。

昨季から継続の『火の鳥』を深みが増した表現力で滑り、演技構成点はトップスコアを獲得。

しかしジャンプの回転不足が響き、惜しくも連覇を逃す結果となった。

「今年中にクリーンで降りたい」と意気込むトリプルアクセルは、全日本ノービスで投入なるか注目だ。

シニア女子に続き木下アカデミー勢が表彰台独占となったノービスA女子。先輩・島田麻央の背中を追いかける期待の新星たちに期待がかかる。

ノービスA女子表彰台(近畿選手権)
ノービスA女子表彰台(近畿選手権)

【ノービスA女子】
1位 金沢 純禾(木下アカデミー)99.37点
2位 川勝 玲奈(木下アカデミー)98.02点
3位 河野 莉々愛(木下アカデミー)97.03点
4位 松浪 ひかり(関空スケート)72.89点
5位 一貫田 紗生(関空スケート)68.49点
6位 水越 蒼(大阪スケート倶楽部)68.06点
7位 能登 咲空(神戸クラブ)65.02点
8位 増尾 歩(京都宇治FSC)64.14点

ノービスA男子は4名全員が、ノービスBでは男女ともに上位5名が全日本ノービスの出場を決めた。

ノービスA男子表彰台(近畿選手権)
ノービスA男子表彰台(近畿選手権)

【ノービスA男子】
1位 佐野 海音(滋賀ドリームFSC)87.26点
2位 多々納 怜(京都宇治FSC)55.87点
3位 中村 道隆(ゴールドスターFSC)40.89点
4位 西川 楷人(滋賀ドリームFSC)40.45点

ノービスB男子表彰台(近畿選手権)
ノービスB男子表彰台(近畿選手権)

【ノービスB男子】
1位 デイリー スカイラー海聖(神戸クラブ)72.47点
2位 原 大  翔(神戸クラブ)58.14点
3位 乾 晟太朗(ひょうご西宮FSC)55.27点
4位 宮瀬 獅世(京都宇治FSC)53.13点
5位 寺岡 大粋(京都宇治FSC)51.83点

ノービスB女子表彰台(近畿選手権)
ノービスB女子表彰台(近畿選手権)

【ノービスB女子】
1位 久保村 真夕子(京都アクアリーナSC)62.14点
2位 平野 実里(京都宇治FSC)60.61点
3位 山田 葉月(京都宇治FSC)57.76点
4位 片山 姫和(京都アクアリーナSC)50.58点
5位 荒木 菜凪(ひょうご西宮FSC)49.99点

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班