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「わかりやすさの先へ」水川あさみ×アオイヤマダ

「わかりやすさの先へ」水川あさみ×アオイヤマダ

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世の中には、人の理解し得ないことがある。
言葉にできないこと、目には見えないことが確かにある。
そのなにかに触れたくて、伝えたくて、私たちは今日も表現と対峙する。

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映画『唄う六人の女』に出演する、水川あさみとアオイヤマダへのインタビュー。

感情に頼らず演じるおもしろさがあった(水川)

― 以前、水川さんの初監督作『おとこのことを』のインタビューで、「いい映画の条件は余白があること」だとおっしゃっていたんですね。本作『唄う六人の女』を観ていて、その言葉を思い出しました。観る側に想像と解釈の余地がある映画だなと。お二人は完成した作品をご覧になって、どんな言葉が浮かびましたか?

アオイヤマダ(以下、アオイ):「思いやり」でしょうか。人間に対しても、自然に対しても分け隔てなく、ちょっとした思いやりを持つことでよりよい方向に進んでいくように感じました。私は石橋義正監督の(2000年のTV番組『バミリオン・プレジャー・ナイト』で放送された)際どくて尖った世界観の『唄う六人の女』が大好きだったのですが、それとはまた違う壮大なテーマを投げかけて、考える余白を与えてくれる作品でした。

水川あさみ(以下、水川):私は「野生」という言葉がぴったりきました。本質に戻っていくようなメッセージ性があるなと。余白もすごく大事にしていると思うし、ちゃんと問題提示して、すべてを説明せずに考えさせてくれる。そういう意味では今、こういう映画がいろんな人に必要なんじゃないかなと思います。だからアオイちゃんが言うように、石橋監督らしさも滲み出しつつ、今までの作品とは雰囲気が違うのは、より多くの人に届けたいという意味があるのかなと勝手に捉えています。

― 監督からはどんな演出がありましたか?

水川:とにかく無表情でいること、凛としていること、リアクションをしないことを徹底してほしいと言われていました。身体の形や角度、目線も違うパターンを何回も撮っていったんですけど、監督の頭の中で画がしっかり決まっていた印象です。監督の「こういうものが欲しい」という演出が明確なんですよね。そのイメージに自分をフィットさせていくという新しい役のつくり方で、感情に頼らず演じるおもしろさがありました。

― 自分の身体性を理解していないと難しそうです。アオイさんはいかがでしょう?

アオイ:私は最初から自分の中の100を出して、やりすぎだったら抑えていくタイプなんですね。それに対して監督からは、もっとさりげなく、もっとさりげなくと。それは、観ている人に想像させたい、余白を作りたいということなんですけど。

水川:アオイちゃんが階段を上っていく後ろ姿のシーンで、最初はすごいお尻を振りながら上っていたんですけど、もっと抑えてって、かなりのテイクを重ねていたんですよ。それ自体は短いシーンなんだけど、その役においてどんな意味があるのか、どうやって役を見せればいいのか、監督が提示していくことに私たちはちょっとずつ合わせていく感じでしたね。

アオイ:普通にワンテイクで終わるだろうと思っていたら、皆さんをめちゃくちゃ待たせちゃって。正解はわかんないけど、とりあえず持っていたお盆だけは倒しちゃいけないというふわふわした状態でハッと振り向いたときにOKが出たんです。無駄な感情はいらない、あなたはお盆をただ運ぶということに集中するだけ。

背中で見せようとするなと。

アオイ:はい。それに気づくまで10回ぐらい撮ったんですけど、申し訳なくて。

水川:全然そんなことない。でもその合わせていくという作業がすごくおもしろかったね。

アオイ:そう、おもしろかったです。

食べたもので身体はできている(アオイ)

水川さんとアオイさんは本作が初対面ですか?

水川:そうです。

共演シーン自体はそんなに多くはないですよね。撮影中にお話する時間はありましたか?

水川:待ってる間にね。

アオイ:ご飯の話になって、あさみさんが「私、炊飯器持ってきてるんだよね」と。「炊飯器を!」っていうところから盛り上がって。私もご飯を作るのが好きなので、この間、豆板醤を一緒に作りました。

なんと。

水川:料理を教えてくださる方のところで、豆板醤を一緒に作って中華を食べて。

食べることをすごく大切にしているところも、お二人の共通点ですよね。アオイさんは今日の衣装も“おべんとうドレス”ですけど、食べるということをどのように捉えていますか?

アオイ:食べたもので身体はできているし、次の日の体調が全く違いますね。

なにを食べたかで次の日の自分が変わってくる。

アオイ:はい、自分の実体験として感じています。それに食に限らず、天候とか月の満ち欠けとか、自然の現象でも体調は変わりますよね。あさみさんと、そんなことも話していて。『唄う六人の女』は自然の現象と女性が重なっていて、アニミズムも感じますがそういう映画って説教臭くなってしまいがちじゃないですか。でも私たちは(京都府南丹市の)美山という自然の豊かな町でロケをして、自然のすごい力を実際に感じて、実体験として作品に落とし込めたのはよかったなって思っています。

自然の持つ底しれぬ力は、画面からも伝わってきました。水川さんは食に対してどう向き合っていますか?

水川:アオイちゃんと同じになっちゃうんだけど、私もやっぱり食べるもので身体ができていることを実感しているんですよね。若いころは好きなものを好きなように食べてきたけど、30代になって結婚したり、会社を独立したり、いろんな変化とともに自分の身体もどんどん変わっていく。それでも食を大切にすることで、自分の身体がいい方向に変わっていく感覚がある。それがすごく楽しくて。

たとえば、こういう食事がいいという、おすすめはありますか?

水川:食べたいものを食べればいいと思うんです。私やアオイちゃんは、わりと地味なものが好きで、ご飯とお味噌汁とお漬物と、お魚を焼いたり、お肉を焼いたりみたいな。

アオイ:強制はしないですね。でも私、ぬか漬けをやり始めて。ぬかに触れてかき混ぜることや、天気や気温、湿度によってぬかの調子が変わってくることなんかもおもしろいんです。そうやって体感的にも食を楽しんでみるのはいいんじゃないかな。

たしかに、食べるだけじゃないところに目を向けてみるのはよさそうですね。

アオイ:それに食に興味がなかったら、たぶんあさみさんとも話せていないし。コミュニケーションツールのひとつになるところもいいなと思います。

純粋な人たちが集まったからできた映画(アオイ)

本作は、竹野内豊さんと山田孝之さんのW主演となっていますが、水川さんはお二人とも多く共演していますよね。

水川:そうですね。でも竹野内さんは一度だけ。

意外です。映画『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』だけなんですね。

水川:はい。夫婦の役をやらせていただきました。孝之は同い年ですし、幼馴染みみたいな感じですけど。

竹野内さんを鞭打つシーン、あれは本当に叩いているんですか?

水川:叩いています。先端も尖った鞭ですね。馬のお尻を叩く。

本当に痛そう。

水川:竹野内さんに「すみません」と。でも監督が本気でやれとおっしゃっていたので(笑)。

水川さんから見て、竹野内さんと山田さんはどういった俳優だと感じますか?

水川:全くタイプの異なる二人です。

役柄だけでなく?

水川:実際も全然違うなと。役としても陰と陽の対比を表しているし、すごくぴったりだなと思いました。竹野内さんはいい意味でおっとりしていて、独自の空気感をまとっている方なんですね。だけど孝之は自分を痛めつけることで役に入っていこうとする。そんなふうに全然違う二人の立ち振る舞いがすごく印象的でした。私は今回、ぶつかり合う二人からは少し引いて見ていられる役だったからこそ、そういう空気感を読み取れました。

そのぶつかり合いにご自身も参加したいとはならない?

水川:ならないです(笑)。

アオイさんは、竹野内さんと山田さんとは初めてでしたか?

アオイ:初めてでした。二人とも全然違うタイプなんだけど、純粋でやさしいというのは共通していて。山田さんは、実際に空腹状態を作って撮影に臨んでいるんですよ。夜ご飯を一緒に食べさせてもらったときに「本当にありがたい」と言いながら食べている姿を見て、すごい人だなあと。竹野内さんは……固まった頭皮が動いたと喜んでました(笑)。

ええ(笑)。

アオイ:美山の自然の中にいたら、「頭皮が動いたんだよ」って。すごく真面目な方なので、きっとさまざまなことを考えて、頭皮も固まってしまっているんだなぁと。自然からもピュアに影響受ける人なんだなと思いました。

水川:ピュアだよね(笑)。

アオイ:みんな純粋すぎて。純粋な人たちが集まったからできた映画なんだなと思います。

お芝居は本来とてもクリエイティブなこと(水川)

アオイさんは本作をはじめ、ヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』の公開も控えており、俳優としての活動も活発になっていますが、お芝居を楽しめるようになってきた感覚はありますか?

アオイ:楽しいです。でも、演じるというよりも、自然体のままの役をいただけることが多いので、これからはあさみさんみたいに全然違う人柄もやってみたいです。

水川さんのお芝居から刺激を受けましたか?

アオイ:あさみさんは役に入るのがなだらかな印象なんですよね。スタートでスーッと入って、カットでスーッと抜けていくのが「あ、すごく素敵だな」と思って。私もそういうふうになりたいなって。あさみさんがいると常に場が明るくなるところも素敵です。

水川:うれしい。

アオイさんはまだ23歳ですが、水川さんはどんな20代前半を過ごしましたか?

水川:そんなの鼻水垂れ太郎でした(笑)。

いえいえ、10代からめちゃくちゃ活躍されていましたから(笑)。

水川:でもこんなに自分を持ってはいなかったな。アオイちゃんって若いんだけど、大木のようでもあるというか、ビジョンが明確なんです。だから話していても「若い子と話してる」という違和感がないんですよね。そういう人が表現をしているということへの信頼みたいなものがありますし、映画にもいっぱい出てほしいです。

幅広い作品に。

水川:そう。ダンスだけじゃなくて、表現するということをもっと広げてほしいなと。見ていて楽しいんですよね。目で追っちゃうの、アオイちゃんって。

アオイ:またあさみさんが監督されるときはぜひ。

水川:困りますね(笑)。

アオイ:お願いします(笑)。

水川さんは俳優として25年以上のキャリアがありますが、俳優という仕事に求められるものは変化していますか? 未来に向けてどう変わっていくのでしょうか?

水川:変わっていってほしいなとは思います。さっきも言ったように、わかりやすいものがいいとされる世の中になっていることに違和感を感じるときがあるんですよね。わかりやすいことも大切ですけど、なんでも説明しすぎることが表現を欠落させているような気がするんです。お芝居をするうえで、その違和感がどうしても邪魔になったり、不自然だなって思ったりする場面が、ここ20年で急速に増えてきているように感じています。

たとえ不自然でも、わかりやすさが求められている。

水川:そう。お芝居をするというのは本来とてもクリエイティブなことなのに、そうじゃなくなっていっていることはすごくもったいないですよね。もう少し作り手や受け手の意識のバランスが上がればいいのになと思うけど、なかなかそれは難しい。だからわかりやすいものもあって、そうじゃないものもあるというふうになっていけばいいなと思っています。

もう20年以上前になりますが、石橋監督の『バミリオン・プレジャー・ナイト』なんてまったく意味なんてわからないですもんね(笑)。

アオイ:意味わかんない(笑)。

でも、わからないということがイケていたというか、それをわかろうとしていた時代があったんですよね。

水川:あったよね、そういう時代。

アオイさんは今の時代において、表現者としてどう立ち向かっていこうと考えていますか?

水川:アオイちゃんは時代に逆行している感じがするよね。

アオイ:そうですね。私は幼少期からみんながわかるものがわからなくて、自分がわかっているものをわかってもらえないということが多くて、それに劣等感を感じていたときもあったんです。でも大人になってみたら石橋監督も含めて、わからないもののよさとか、噛み合わないことの不快さをクリエーションとして落とし込んでいる人が、意外といっぱいいたんですよね。今もたぶん昔の私と同じように悩んでいる子もいるから、そういう子たちが生きていく道筋みたいなものを自分も作っていけたらと思っています。

アオイさんみたいな人がいると、業界もどんどん変わっていきそうですね。

水川:安心するよね、本当に。アオイちゃんが隣にいるとよかったって思うのよ。

アオイ:うれしい、うれしいなあ。

Profile _

左:水川あさみ(みずかわ・あさみ)
1983年7月24日生まれ、大阪府出身。近年の主な出演作、『喜劇 愛妻物語』(20)と『滑走路』(20)では第75回毎日映画コンクール 女優主演賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞などを受賞した。また22年には映画『おとこのことを』で初監督を務め、「ブラッシュアップライフ」(23/NTV)「連続テレビ小説 ブギウギ」(23/NHK)『沈黙の艦隊』(23)に出演。『霧の淵』(23)、舞台『リムジン』『骨と軽蔑』への出演が控える。

tops ¥58,300・skirt ¥50,600 / OVERCOAT (oomaru seisakusho 3 info@overcoatnyc.com), pierce ¥8,800 / graey (https://graey.jp/), wide ring ¥33,000 / critical:lab (PR01.TOKYO 03-5774-1408), slim ring ¥56,100 / e.m. (e.m. AOYAMA 03-6712-6797), boots ¥161,700 / Sergio Rossi (Sergio Rossi Customer Service 0570-016-600), Other stylist´s own

右:アオイヤマダ
2000年生まれの表現者。15歳で上京し90年代のクラブやアートシーンを起源とする東京のファッション界に出会い、影響を受け活動の軸となる。メディアアート集団ダムタイプ「2020」等に出演、東京オリンピック2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース映画「Perfect Days」、ショートフィルム「KAGUYA BY GUCCI」、「Somewhere in the snow」、「FM999」やNetflixシリーズ「First Love初恋」に俳優として出演。

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