2021年6月29日に4周年を迎えたスマートフォン向けアプリ『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ』)。同作の4周年を記念して実施した、所恵美役の藤井ゆきよさんのインタビューをお届けする。

※本インタビューは6月上旬に実施しました。
※本記事は週刊ファミ通2021年7月15日号に掲載したインタビューに加筆、修正を行ったものです。

藤井ゆきよ(ふじい ゆきよ)

5月8日生まれ、神奈川県出身。アニメやゲーム、洋画吹き替え、ラジオなど声優として幅広く活躍中。照明技師出身という異色の経歴を持つ。近年のおもな出演作に『ゲゲゲの鬼太郎』(犬山まな役)、『美少女戦士セーラームーンCrystal 』(土萌ほたる:セーラーサターン役)など。(文中は藤井)

『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」
『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」

勇気を出したアピールが恵美との出会いを導いた

――恵美と出会うきっかけとなった、オーディションのことを振り返っていただけますか?

藤井最初に候補を見せていただいたとき、「こんなにたくさんのアイドルがいるグループなんだ」と驚いた記憶があります。私はその中から北沢志保ちゃんを受けていたんです。歌唱審査もあって、課題曲は『relations』でしたね。

――最初は、キャラクター的には恵美とは対照的な志保で受けていたんですね。

藤井そうなんです。それでひと通り審査が終わった後、「私、明るいキャラクターもできますよ!」と伝えたら、資料を渡されたのが恵美だったんです。じつはそのとき、恵美はオーディション対象ではなかったので、勇気を出してアピールしていなかったら出会っていなかったかもしれません。

――思わぬ出会いだったようですが、恵美の第一印象はいかがでしたか?

藤井イラストを見た印象は「クールで姉御肌な、カッコいい女の子なのかな?」というものでした。最初はセリフもそんなになかったので、どんな性格なのか探っていたのですが、いまの恵美が出来上がったのは、最初にドラマパートを収録したCD『LTP04(※1)』からでした。そこで彼女の内面がぐっと理解できて、演技も変わったと思います。

※1  LTP04……2013年7月31日発売の『LIVE THE@TER PERFORMANCE 04

――クールどころか、「にゃははっ♪」とよく笑う女の子ですよね。

藤井そうですね。でも、その笑い声も最初はそう書かれていたわけではないんです。私の笑い声が「にゃははっ♪」って聞こえるらしく、いつしか台本にもそう書かれるようになってしまったんですよ(笑)。でも、感動してすぐ泣いちゃうのは私に合わせたのではなく、最初からでした!

――そこは大事なところですね!(笑) 演技をする際に意識していることはありますか?

藤井恵美は楽しくてノリのいいセリフが多めなんですが、笑顔の裏で気を遣っていたり、辛くてもがんばって明るく振る舞うシーンもあったりするので、そういうところでは彼女の複雑な心境を乗せられたらいいなと思ってはいますが、大きく意識していることはなく……。むしろいまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)。それでもひとつ挙げるとしたら、プロデューサーさんやメンバーたちへの想い、愛情ですね。私も皆が大好きなので自然と溢れ出るようにはなっているのですが、その気持ちは大切に演じています。

――収録もスムーズに進んでいそうですね。

藤井台本の解釈で悩ましいところがあっても、現場のスタッフさんが「考えておきました!」と先回りして確認しておいてくれたり、その場ですぐ擦り合わせられるので苦労することはほとんどないですね。収録のたびに皆の恵美像を聞けるおかげで彼女の世界を広げられているので、いつも本当にありがたいと思っています。

――藤井さんの中では恵美はどういう女の子なのでしょうか?

藤井基本的な部分は変わらないのですが、周囲にいるメンバーによって立ち回りがちょっと変わるところはありますよね。年下の女の子ばかりだとお姉さん的な役回りになることが多いけど、そういう役割の子がいる場所では逆に盛り上げ役になったり。空気を読めるというか、場がうまく流れるように自然と動ける子ですよね。アイドルとしての完成度はまだ発展途上かもしれませんが、人としてすごく魅力的だと思います。私なんかよりもずっとしっかりしているなと感じることも多々あるんですよね(笑)。

――2017年からは『ミリシタ』が配信開始となり、設定も一旦リセットされることになりましたが、そのことで何か変化はありましたか?

藤井演技に関しては『ミリシタ』になったから変化させる、という必要はほとんど感じませんでした。ただ、ほかのメンバーとのエピソードがたくさん追加されて、そのたびに彼女たちの新たな一面を知ったり、絆が深まっていくのを感じるのは楽しかったです。

――とくに印象に残っているエピソードはありますか?

藤井フローズン・ワード』のエピソード(※2)です。もともとこの曲を収録したときは自分なりの解釈で歌っていたのですが、このエピソードで「恵美はこういう気持ちで歌っていたんだ」ということがわかったので、つぎに『フローズン・ワード』を歌うときはその感情を乗せて表現できたらと思います。

※2 『フローズン・ワード』のエピソード……メインコミュ第70話『Dears

――最近のゲーム内イベントで印象に残ったものはありますか?

藤井“聖ミリオン女学園 あなたへの花束”ですね。シナリオの青木さんがかなり攻めた内容にしてくださっていて、プロデューサーさんたちの考察がはかどりそうだな、と密かに思っています(笑)。言葉の奥にあるものを想像してしまうような作りになっているので、皆さんがどう考えてくださるのかが楽しみです。ストーリーを読んでから楽曲『花びらメモリーズ』の演出を見るとさらに味わい深くなるんですよ。

『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」
『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」

――反応が楽しみですね。さて、続いてはライブやイベントのお話をうかがっていきたいのですが、藤井さんがステージに立つときに心掛けていることは?

藤井ミリオンライブ!』のキャスト内でも演じるアイドルとどう向き合うかはそれぞれ異なると思うのですが、私の場合はすべて恵美になりきろうとは考えていません。恵美に背中を押してもらってステージに立っている、という感覚です。そのうえで、支えてくださっていることへの感謝の気持ちがプロデューサーさんたちに届くように、そしてプロデューサーさんたちの気持ちに寄り添えるように、ということを大事にしています。

――その中で、とくに印象に残っているライブやイベントはありますか?

藤井全部が思い出深くてひとつ挙げるのは難しいのですが、いちばん最初のCDのリリースイベント(※3)でしょうか。人生初の歌って踊るイベントでしたし、プロデューサーさんたちに受け入れてもらえるのか不安になって、本番前はトイレから出たくないと思っていました(笑)。でも、楽屋で共演の今井麻美さん(如月千早役)やころちゃん(最上静香役の田所あずささん)、天ちゃん(北沢志保役の雨宮天さん)、もちょ(箱崎星梨花役の麻倉ももさん)が励ましてくれたり、楽しい話をして緊張をほぐしてくれたりして、何とか舞台の上に立てたんです。

 それに、出迎えてくれたプロデューサーさんたちが本当に温かくて、不安だった気持ちが吹き飛んだことを覚えています。いまでも歌とかダンスは苦手なんですが、あのイベントのおかげで「応援してくれる人たちのためにがんばろう」という気持ちで乗り切ることができるようになれました。

※3 いちばん最初のCDのリリースイベント……2013年8月11日に行われた、CD『LIVE THE@TER PERFORMANCE 04』のリリースイベントのこと。前半はトーク、後半はライブという構成だった

――その半年後には、さいたまスーパーアリーナ(SSA)での“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014”がありましたね。数百人から、一気に数万人の前でのパフォーマンスでしたが、心境はいかがでしたか?

藤井正直「なんてスパルタなの……」と思いました(笑)。そのときも緊張で震え上がって、内心「サイリウムの海に溺れそう~!」とずっと足元がおぼつかない感覚でした。ソロ曲の『アフタースクールパーリータイム』では最初だけ麻美さんといっしょに歌う演出になって、「麻美さんのいるところに駆け込めばいいんだ」と勇気をもらってステージに出ることができたものの、1コーラスで麻美さんがハケてしまうので「最後までいてくれていいのに~!」って思いながら必死に歌っていました。

――練習もたいへんだったんじゃないですか?

藤井当時は初めての曲ばかりでしたし、とくに覚えることが多くて本当にたいへんでした。それに、私はほかの人より覚えるのが3~4倍くらい時間が掛かるので……。全体練習では時間内に覚えきれなくて、「持ち帰ります!」と毎回言っていました。それで、仕事終わりに自分でスタジオを借りて振付けを覚えるんです。ゆいトン(横山奈緒役の渡部優衣さん)と私はだいたい自主練コースでした(笑)。

――ひとりでやるんですか?

藤井基本的にはひとりで練習していましたが、スケジュールが合う子といっしょにやることもありました。ふつうにやっていたら間に合わないので、ライブの前は事務所にスケジュールを調整してもらって練習時間を確保したり、家中に歌詞カードを貼り付けて覚えたりしています。ちなみに「持ち帰ります」はいまでも言っています(笑)。

――事務所の協力もあったわけなんですね。

藤井デスクさんやマネージャーさんには本当にお世話になりっぱなしです。私、ライブの前は緊張で痩せていってしまうのですが、その姿を見て心配して声を掛けてくれたり、デスクさんは最初のライブの映像を見て「なんだかお母さんみたいな気持ちになっちゃった……」って泣いてくれたりして(笑)。私にとってはとても心強い存在です。

――先日行われた7thライブは、1年半ぶりの有観客でのライブとなったわけですが、いかがでしたか?

藤井その前の(2021年)1月に“ミリシタ感謝祭”の配信があったのですが、今年は無観客での開催だったんです。画面の向こうから応援していただいているのは理解しつつも、現場ではやっぱり違和感があったというか、あるべきピースが足りていないことをすごく感じていました。あらためて、プロデューサーさんたちの存在の大切さが身に染みましたね。だから今回、観客席から声は出せないという制限はありながら、私たちの側にプロデューサーさんたちがいてくれたのはすごく大きかったです。

――誰もが待ち望んでいた再会の場でしたよね。

藤井1曲目の『Flyers!!!』でステージに飛び出したとき、声はなくともマスク越しの表情や動きでプロデューサーさんたちの気持ちがすごく感じられたんですよね。この1年、きっとそれぞれ苦しいことを乗り越えて、ライブに戻ってくれたんだって思うと込み上げてくるものがあり……。会場に来てくれた人も、モニターの前で声援を送ってくれる人も、みんなありがとうって。

――ガールスカウト風の新衣装はどうでしたか?

藤井斬新でしたね! 今回も、衣装チームのTSUBASAちゃんが機能性とかわいさを兼ね備えたものを用意してくれたんです。野外で雨が降っても大丈夫なように、ポンチョも防水加工されていたんですよ。私は基本色が黒だったということもあって「このままキャンプでも着られそう」とか考えていました(笑)。

――これまでの衣装でお気に入りのものがあったら教えてください。

藤井夜想令嬢(※4)の衣装の再現度はすごかったですね。小道具もたくさんあって、こだわり抜いて作られたのがすぐわかりました。ゲーム先行で描かれた衣装を再現するだけでもすごいのに、さらに私たちの体型や要望に合わせて細部をカスタマイズしてくれて、TSUBASAちゃんにはいつも驚かされてばかりです。野村香菜子ちゃん(二階堂千鶴役)が使っていた剣は、技師さんに頼んで扱いやすいように作った特注品だったりするんですよ。

※4 夜想令嬢……夜想令嬢 -GRAC&E NOCTURNE-のこと

――夜想令嬢と言えば6thライブの歌中劇には驚かされました。

藤井4人とも役者が本業ではあるのですが、合わせて練習する機会もあまり作れなかったので苦労しました。でもすごく評判がよかったと聞いてうれしかったです。それに、苦労したぶん4人の絆は確実に深まりました。最後に披露した6thライブの追加公演では、ステージに上がる前に円陣を組もうとしたのですが、それまでの思い出が頭を巡って本番直前なのにみんなでウルッとしてしまって……。それで慌てて「円陣やめやめ!」って(笑)。

――そんなことがあったんですね!

藤井本当にいい子たちばかりで、私も出会えてよかったです。

『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」
『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」

――これから『ミリシタ』5周年、『ミリオンライブ!』10周年と大きな節目がやってくるので、涙腺を刺激される機会もたくさんやってきそうですね! そんな中、今後ライブやイベントでやってみたいことはありますか?

藤井初期のころから「空を飛びたい!」って言っている子が何人かいるようなので、それはその子たちに任せたいと思います。私は飛ぶのは結構ですので(笑)。私は会場全体がひとつになって行うようなことをやってみたいですね。だって、会場にいるのは“お客さん”じゃなくて“プロデューサーさん”ですから。私たちといっしょに会場演出をしてもらいたいですよね。たとえば“プロデューサー演出セット”みたいなものを全員の席に用意しておいて、「この曲ではうちわを使って、この曲ではタオルを回して……」みたいな指示を入れておくとか。よりプロデューサーさんたちと二人三脚できるような構成にしたいです!

――それはすごく盛り上がりそうですね。『ミリシタ』の4周年キービジュアルには、恵美もメンバーに選ばれています。6月7日に配信された“ミリシタ 4周年まで待てない!生配信”でも少し話されていましたが、改めてお気持ちなどを伺えますか?

藤井まず「衣装がかわいい!」って思いました。生放送では「まだまだ『ミリオンライブ!』は止まらないぞ」というスタッフさんたちの心意気を感じましたね。MVも毎回凝った演出がされていて、こんなにたくさんの楽曲が出ているのにまだ私たちを驚かそうとしてくるのがすごいな~と。過去の記憶を振り返っているシーンには胸が熱くなりました。楽曲もステキなんですけど、あの映像と合わせるとよりドラマチックに感じられます。

――恵美じゃなくても泣いちゃいますよね。

藤井本当にそうですよね(笑)。楽曲の『Harmony 4 You』も、アイドルや私たちにリンクした歌詞が多くて、歌っていて自然と皆の顔が思い浮かんできて、気持ちが入る曲だったと思います。レコーディングのときは、「これはライブで歌ったら、目の前の光景とつながってもっと感動しちゃう」と思いながら歌っていました。

――あとは定番の質問もいくつかさせていただきたいのですが、恵美以外で好きなアイドルを教えてください。

藤井この8年でメンバーたちへの愛が深まりすぎて、ひとりを選ぶだなんてとてもできないんです。だから全員ってことでお願いします!

――愛が深いです! では、続いて好きなユニットや楽曲についてなんですが……。

藤井自分が参加したユニットはどれも思い入れがあって、その全部が好きなユニットです。もちろん、公演回数が多いものはやっぱりそれだけ思い出も多くあって、たとえば夜想令嬢の『昏き星、遠い月』は「『ミリオンライブ!』でこんな曲調をやれるんだ!」と驚きました。自分が関わった以外の曲では『花ざかりWeekend★』(※★は花びらマーク)とか『咲くは浮世の君花火』をよく口ずさんでいます。グルーヴがすごく気持ちを元気にしてくれるんです。

――それでは最後に、プロデューサーさんたちへメッセージをお願いします。

藤井本当にいつも心のこもった温かい声援をくださってありがとうございます。年明けの無観客ライブを通じて、『アイマス』はプロデューサーさんというピースが揃って初めてライブが完成するんだと改めて痛感しました。私がいままで踏ん張ってこられたのは、メンバーや私たちを支えてくれるプロデューサーさんたちがいてくれたからです。そんな、かけがえのない大切な存在になってくれてありがとうございます。この状況をいっしょに乗り越えて、そしてこの先ももっともっと楽しいことをいっぱいしましょうね! これからも『ミリオンライブ!』をよろしくお願いします!

『ミリシタ』4周年記念! 藤井ゆきよさん(所恵美役)インタビュー。「いまでは意識しなくても恵美が勝手にしゃべり出してくれます(笑)」

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 なお、2021年7月20日(火)20時より配信の今井麻美さんがパーソナリティーを務める生放送番組『今井麻美のニコニコSSG』(ニコニコ生放送/YouTube)では、『ミリシタ』4周年を記念して、藤井ゆきよさんがゲストとして出演予定。こちらも要チェック!

藤井ゆきよさんと『ミリシタ』! 今井麻美のニコニコSSG第140回(ニコニコ生放送)