禁断の“ネタバレあり”インタビュー!

 2013年10月10日にアークシステムワークスより発売されたプレイステーション Vita用ソフト『月英学園 -kou-』。コアなゲームファンとしても知られる声優・杉田智和さんが、豪華スタッフを集めて自分でゲームを作ってしまった、として異例の話題を呼んだ本作だが、その始まりはいつ、どこにあったのか。原作者としての杉田さんが秘めた想いを、存分に語っていただいたぞ。

※『月英学園 -kou-』とは?(→詳しくはこちら

※インタビューには物語の核心に迫るネタバレが含まれています。未クリアーの方は十分にご注意ください。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_08

杉田智和(Tomokazu Sugita)
声優。代表作品:『銀魂'』坂田銀時役、『ジョジョの奇妙な冒険』ジョセフ・ジョースター役、『翠星のガルガンティア』チェインバー役など。

『月英学園』の原点

――ソフトが発売されてから1ヵ月が経ちますが、いまのお気持ちはいかがですか?

杉田智和さん(以下、杉田) 無事に発売できて安心した、というのがいちばんの気持ちです。森利道プロデューサー(アークシステムワークス)もよく言っていますが、アドベンチャーゲームは育てていくものだと思っていますので、本当にたいへんなのはむしろこれからなのかもしれません。『月英学園』という作品が世の中に生まれた責任は僕にありますから、最後までしっかりがんばろうと思っています。

――杉田さんの周囲の方々の反響はいかがでしょう?

杉田 どうも出演声優の方々にファンの方から感想がいっているみたいです。それを聞いた声優さんが、仕事の現場などで僕に伝えてくれることも多かったりします。

――独特な感想の届きかたですね(笑)。

杉田 作品に対して言いたいことがあると、お客さんの声はメーカーではなくて出演声優にいきがちなんだなって、改めて痛感しました(笑)。

――そもそも、本作はどのようにして生まれることになったのですか?

杉田 企画という意味では、じつはけっこういい加減です。僕の古くからの友人で、本作でもシナリオや演出で深く関わっている熊川秋人さん。最初は、当時悩ましいことになっていた彼の社会復帰計画の一環でした。でも、いざ始めると自分でも表現したいことがあって、オリジナルをやろうという話になり、『月英学園』が生まれた。それで小説、同人ゲームと作ったら、よくお世話になっている森さんが声をかけてくださり、『月英学園 -kou-』が生まれることになりました。

――物語の原点、という意味ではいかがでしょう?

杉田 発端は中学生のころの、誰に見せるでもなかった妄想にあるんだと思います。物語を生み出すとなると、まず自分の好きな作品が2~3個混ざったようなものが生まれてくると思うんですよ。

――『ウルトラマン』を愛する某アニメ監督さんによる某新世紀、という感じでしょうか?

杉田 それが理想形だと思います。当時の僕の場合は、CLAMPさんのマンガ『X』や、格闘ゲームの『ザ・キング・オブ・ファイターズ』、RPGの『ロマンシング・サガ』。その3つを強引に混ぜたような話を妄想していました。いまにして思えば、それが『月英学園』の原点なんです。そこに『ジョジョの奇妙な冒険』とか、ほかにも好きな作品が後からどんどん混ざっていって……。僕の人格形成に影響した多くの作品から、大小違いはあれど何かしらの影響は受けている、と言わざるを得ません。

――劇中にも、このセリフの元ネタは……と思う部分が見られますよね。

杉田 当たり前のように発していた言葉なのに、「これってアレじゃん?」って後から気が付いたりもしましたね。本当に、原点を生み出した偉大な方々へのリスペクトは尽きません。シナリオ担当の熊川さんと根岸和哉先生は、そんな僕の感覚をよく汲んでくれたと思います。最近では僕が好きだった作品に僕自身が出演する機会も出てきて、複雑な心境にもなるんですが、楽しむ気持ちを忘れずにいられるなら、おもしろいものにできると信じてやっています。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_11

原作者は仕事をしすぎていた?

――出演声優の方々が他に類を見ないほど豪華ですが、キャスティングはたいへんだったのでは?

杉田 僕の所属事務所(アトミックモンキー)のキャスティングマネージャー・森永さんの力が大きいですね。僕が彼に伝えたオーダーは、漠然としたイメージが多かったので。

――どのようなオーダーを出されたのでしょう?

杉田 自分の中で確定していたのは、御月大河役の中村悠一さんと、御月英理役の早見沙織さんだけで、あとは既存作品などから来る「○○みたいな声」とかですね。ガヤのオーダーとか酷いですよ(笑)。「僕より落ち着いた声」とか「断末魔がうまい人」とか(笑)。全体を底上げする意味で、「メインをそろえて安心するな、脇こそ気にしろ」と森永さんに厳しく言っていたのに、最終的にトンデモないことになるくらいよくやってくれて、僕もかなりびっくりしました。

――本作にはご自身も出演されていますが、やはり特別な想いがありましたか?

杉田 それどころじゃなかった感が強いかも(笑)。原作者として、シナリオやイラストのチェックに修正提示、収録の立会いに演出面の強化。果てはデバッグにまで首を突っ込んで、製作途中ではアップデートのたびに全編プレイし直していたんです。たとえば、栄斗圭が変なことを言うたびに集中線が入る演出があるんですが、あれが最初はなくて、すごく痛々しかったので提案させていただきました。いまの形になって安心したけど、またイチからプレイして、僕が思う問題を細かく洗い出して……(苦笑)。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_01
▲ドーン! という音や集中線の演出とともに、インパクトのあるセリフを放つ栄斗圭。

――もはや総監修ですね……合計で何周くらいプレイされたのでしょう?

杉田 個人的な趣味で必要以上にチェックしたルートもあるので、正確には言い難いけど、かなり入念にプレイしたことは間違いないです。アークシステムワークスさんには色々としつこく修正をお願いして、苦労させてしまいましたが、おかげで満足度は大きくアップさせられたと思っています。

――ちなみに、杉田さんはどのシナリオがお気に入りなのですか?

杉田 あえてひとつ挙げるなら、丹下桜さんに演じていただいた兼城いずみのルートかな。最後で出る1枚絵がもう本当によくて、イトケンさん(音楽担当:伊藤賢治氏)の曲もマッチしすぎで、「なるほど!!!!」って。ほかのところだってもちろんなんですが、あそこはとくにグッときました。

――メインどころではないキャラクターとは、意外ですね。

杉田 じつはいずみは、最初のシナリオ会議では容量の問題から存在自体削るという話だったんです。ルートの名称も“久遠院ルート”で、本当の意味でのバッドエンドになるはずだった。なのに最終的には、強硬に削除に反対していた僕だけじゃなくて、苦渋の提案をした熊川さんも「いずみがいちばん好きだ!」って言い出すくらい気に入ったとか、シナリオも紆余曲折あって、シナリオ担当全員が深く手を入れた合作状態になったとか、印象に残る出来事が多かったからかもしれません。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_02
▲杉田さんイチオシの1枚絵はゲームをプレイしてのお楽しみ。兼城いずみは主人公・遠山浩のクラスメイトだが、人には言えない秘密があるもので……?

杉田さんがキャラクターに込めた想い

――後堂恭一郎など、あまりほかでは見ない独特なキャラクターも登場しますが、あの見た目にはやはりこだわりが?

杉田 キャラクターには皆、基本的なコンセプトがあります。たとえば後堂恭一郎は、僕がなりたくてもなれなかった自分の表現なんです。

――リーゼントでスカートを履きたかった……のでしょうか?

杉田 見た目の傾奇者というよりは、ああいう破天荒なキャラに、ですね。だから後堂には、僕が世の中に対して強く言えないことを言わせていて、活躍すると僕も胸がスーッとする(笑)。その一方で、大河は僕の中にある“優れた人間”というイメージそのもの。でも、大河みたいなタイプって、実際には孤独だったりする。そういう見えない脆さ、後堂は何も言わずに感じてぶつかるけど、ある意味真の理解者になってくれる。敵役として描かれる黒大河だって、本質的には同じなんですよ。

――黒大河とは、各個別ルートで姿を見せる、いわゆる偽者の大河のことですよね。

杉田 はい。内部的に大河と黒大河で呼び分けていました。でも黒大河だって、ただの偽者ではなく、もともとちゃんとした御月大河なんです。じつはあれは……。

――ちょっと待ってください。これは結構なネタバレが飛び出しそうな……。

杉田 あ、そうですね(笑)。では……。

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※ここから先は、物語の核心に迫るネタバレが多数あります。全編クリアー後にご覧になられることを推奨します。

杉田 新たな本が、姿を現そうとしています……(開放の間の執事調)。

――ありがとうございます(笑)。では、ここからはネタバレを気にせずお話いただきたいと思います。

杉田 悔い、改めまして!

――同人ゲーム版の内容からして、黒大河とは、あのときの大河、と思っていいのでしょうか?

杉田 そのイメージで概ねオーケーです。あの黒大河は、誰より優秀で、誰より世界を見渡し、誰よりやさしかったからこそ、自分がいた輪廻の中で匣に触れ、世界の真相を知ってしまったんです。そして、不条理なシステムそのものを止めると決意し、くり返される桃生町を渡り歩いている。

――黒大河は強烈な悪役のイメージがありましたが……。

杉田 方法はアレですが、じつは彼なりの正義の表れなんです。あれくらいやらないと不条理を覆せない。そのためにはほかのすべてを捨ててでも、という極論ですね。黒大河はシステムを破壊するための前段階で最適化し、やさしさを排除した最大効率で“収穫”を続けている、と思うといいかもしれません。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_03
▲各個別ルートで現れる残忍な黒大河。彼の所業には、思わず目を塞ぎたくなるものも多い。

――本作はいわゆる“ループモノ”ですが、プロローグと第一章の間で、一部キャラクターの設定が変わっていますよね? 

杉田 境界線がそこにあるんです。英理視点のプロローグが、第二章のシナリオ“匣”でマスターが就任した後。彼が“計画”を開始した回になります。遠山浩が現れる第一章のシナリオ“浩”は、それから何度もくり返しを経た桃生町が舞台。ループではなく再構築なので、キャラクターたちも以前とまったく同じではないんです。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_04
▲プロローグの時点で英理の武器は刀だが、浩が出会った英理の武器は赤い籠手。

――第三章……シナリオ“抗”の冒頭で少し状況が違ったように、それ以前も少しずつ変化していた、と?

杉田 そうなります。マスターが就任するまで実験をしていた研究者たちは、ワクチン開発なんて無理だと思っている。でも実験をやらないと居場所がないから、惰性でダラダラやりつつ、自分の趣味やら野心やらから、被験体をいじくる。御月英理というキャラクターはその代表で、人の思惑や欲望に翻弄されたキメラのような存在になっているんです。おかげで作った僕自身も、あれこれと考えさせられました。

――ご自身の影を重ねられる部分があったのでしょうか?

杉田  僕というより、僕が見てきたさまざまな状況の複合から浮かんだ考えだと思います。たとえ話をしますと、新人の女優さんがいたとしますよね。で、その子を売り出すのに、事務所の社長と、マネージャーと、スポンサーと、出演作の監督の4人が4人、違う売り出しかたや演出を推してきたら、本人はどうしたらいいのでしょう?

――それはかなり難しい問題ですね……。

杉田 しかもその多くはよかれと思って、でもどこか自分の都合だけで言っている。当然といえば当然ですが、その女優さんの一生まで見てくれるわけじゃない。それでうまくいけばいいけど、ダメだったら。翻弄された子を置いて、じゃあつぎの子だってなったりする。そんなとき僕はきっと「無責任過ぎだろ!」って思うんでしょうけど、中にはあらゆる意見を受け止めて自分の強さを発揮する人もいますし、そういう人が、僕がふだんマイクの前で共演する人たち、みたいな感触もあるので、複雑な気持ちになるというか……。何かたとえ話からズレてきましたすいません。

――ともあれ御月英理は、そうした新人声優のような立場にある、と?

杉田 少女エイリからイメージするとわかりやすいかも。医者も匙を投げる難病の少女がいて、本人に治りたいという意思があっても、どうにもできない。そんな状況でとある科学者が、単純な探究心からゲーム感覚で難病の治療に挑戦し、少女の体をいじったとしても、誰も彼を悪だなんて言えないじゃないですか。もちろん、モヤモヤはしますけどね。そうした不条理を僕が感じて、積み重なっていく中で、英理たちキャラクターの造詣も深まっていったんだと思います。

――さきほどのお話にもありましたが、後堂恭一郎であれば、杉田さんがちょっと待ってと思われたところで、問答無用で突っ込んでいきそうですね。

杉田 初回限定版のドラマCDがある種、そんな表現です。大河はできることを必死にやっているけど、家で兄の帰りを待つ幼い英理は、孤独で寂しかった。でも大河が頑張らないと、色々と壊れてしまう。そこに後堂少年が……といった内容です。感想はちょいちょいもらってるんですよ。フリートークがおもしろかったです、って。御立先生が泣きますよ(笑)

――内容に触れてないじゃないですか(笑)。

杉田 まあまあ、それもまたよし!(笑)

いつか描かれる“かもしれない”杉田ワールドの裏話

――ちなみにさきほどの医者の話は、もしや第二章……シナリオ“匣”での執行先生のことでしょうか?

杉田 執行先生は苦悩している側ですが、似た部分はあるのかもしれませんね。とはいえ彼も、どうにもできない現実を前に、自分にできることを精一杯やっている。まあ、そうしていたら息子の執行蓮が熱いことを言い出しちゃって、その結果桃生町から追放されるという悩ましい感じに……。

――執行律の失踪した兄・執行蓮に関しては、プレイヤーのあいだでも憶測が飛び交っているようですが。

杉田 蓮は執行先生の実子で、ちゃんとした“人間”です。劇中では失踪していますが、死んではいません。蓮は蓮で、大河やマスターとはまた違った考えで動いて、その結果、匣内部の人間から危険思想の持ち主だと判断され、追い出されたんです。

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▲失踪したとされる執行蓮。当初、彼の顔は出ない予定だったらしい。

――そのあたりのエピソードも詳しく考えられていたのですか?

杉田 はい。でも、じつは彼のことは皆さん、ある意味ずっと見ているんですよ。

――と、言いますと?

杉田 容量がいっぱいの匣の世界に、蓮が追い出されたことで生じたフリーのアバターと空き容量。これがのちにマスターの手によって、主人公・遠山浩へとリフォームされるんです。

――なんと!? そんな裏設定があったのですね。

杉田 だから浩は、大河や後堂、律などに“蓮に似ている”と言われる。蓮回りの語れていない裏設定で、機会があれば詳しく書きたいなとは思っていますが、皮肉なことにゲームの容量の関係で入らなかったんです、ごめんなさい……。同じようにいくつかの要素が、開放の間のプロフィール、各キャラの特徴3でちょいちょい語られていますので、シナリオを全編クリアーして終わりではなく、そこまでチェックしてもらえるとうれしいです。

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▲驚きの真実がプロフィールにしれっと!? 特徴3は要チェックだ。

――シナリオ“匣”でも最後に時間が飛びますが、プロローグとシナリオ“浩”のあいだのように、そこにも描かれていないエピソードがかなりありそうですね。

杉田 律ルートで見られるあの写真は、まさにその一部です。少なくとも執行と栄斗の二家では、子どもたちと、匣の世界で家族になる人たちと顔合わせがあった。そして話を聞いた少年タカが、強い力を姉に譲った、というのは確定です。でも姉のケイは、本来ない力を無理に後付けされたので、性格がカオスになってしまった、と。

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▲物語の核心に迫る第二章のシナリオ“匣”。その片鱗は、第一章のシナリオ“浩”個別ルートでも端々に見られる。

――そんななか、少女キョウは……。

杉田 強い男として少年タイガを支えたかった少女キョウは、斜め上の姿になりました。匣の中では、子どもたちのイメージが強く反映されるので。

――だから桃生町には雨が降らない、という話なんですよね。

杉田 桃生町の背景の一部は、少年タイガのつたない絵からくる、子どもたちの憧れのイメージなんです。でも子どもたちにとって、雨は黒くて怖いもの。だから周囲がいくら補足しようが、桃生町では降らないわけです。

――少女アカネについてはいかがでしょう? 学園長・久遠院朱音の素顔には、プレイヤーさんも驚かれたと思いますが。

杉田 カプセルの中で、アカネちゃん、が……っ!? とまあ、朱音が語った「他の被験体と融合した」というのはそういうことです。だから、麻生さつきだけが能力をふたつ持っている。そういう事故もあったからこそ、マスターも必死なんです。

――杉田さんのファンの方々には、桑島法子さんの声がああいったキャラ、役どころで聞こえてきた時点で、ニヤリとした方も多そうですが?

杉田 執事なんて後付けだよ! デスフラグオーケー!? みたいなね(笑)。いやまあ真面目に言うと諸々考えたところで、執事なのはその立場上、桃生町では街を支配する人の横にいる、という結論に至ったからです。言わば隠れた摂政。ミネバ・ザビに対する、表に出ないハマーン・カーン。でもいざ久遠院倭人を傀儡にしてみたら、お飾りの朱音にもちゃんと意思があった。ああいう存在であるがゆえに、勝手に境遇が似てると思って、黒大河に同調した。これは執事も意外だったけど、都合がいいので許容した、なんて背景もあります。

――そこもまた、お話が描けてしまいそうな……。

杉田 なので、容量との戦いがそれはもうたいへんでした(苦笑)。

――少女エイリと御月英理、久遠院朱音、この3人はある意味同じなのに、英理だけ声が違うのはなぜですか?

杉田 英理がくり返す実験のあと乗せサクサクで、とっくにキメラになっちゃってるからですね。原型すらわからないほどにいじられている、と思っていただければ。同じことが、マスターと浩の関係にも言えます。

原作者にして人気声優の杉田智和さんに直撃!『月英学園 -kou-』に込められた真の想いとは?【ネタバレ注意!】_10

ふと思い出したときに、もう一度

――では、そろそろお時間ですので、締めに入らせていただきます。これを言っておきたい! などありましたら、お願いします。

杉田 最初にも言いましたが、アドベンチャーゲームは育てていくものだと思っています。そして、いつでも気軽に遊べるものでもある。僕自身、いまになって『シュタインズ・ゲート』や『428 ~封鎖された渋谷で~』をやり直したりもしますから、『月英学園 -kou-』をご購入くださった皆さんも、ふと思い出したときに、もう一度遊んでくれたらうれしいです。ここまで記事を読んでからもう1回あの世界にダイブすると、見えかたも少し変わるかと思いますので……いまからでも2周目、いかがでしょう?(笑) そして森プロデューサー、AndroidかiPhoneで……いかがですか!? 

――今後の展開なども考えていらっしゃるのですか?

杉田 もちろんですが、期待されているものとは違うと思います。“続編”という意味なら、それをやれるだけの感性とエネルギーは現状ではありません。いまは燃え尽きて超必殺技のゲージが消滅したような状態なので……。時間が経って、『月英学園』を始めたころのような純粋な感情をまた得られたとき、何かやるんじゃないかなとは思っています。

――それでは最後に、ファンの方々へのメッセージをお願いいたします。

杉田 みずから考え、言葉を発し、感性を傾ける。自分で何かを感じ、動くことが大事なんです。他人が持っているものは変えられないし、自分のものにはできない。でも、自分の持っているものは大事にできるし、いくらでも輝ける。匣の中の世界はくり返しで、さまざまな人の意見が渦巻いていますし、僕たちもどうこう言っていますが、どうか皆さんが素直に感じた『月英学園』を大事にしてください。完走、ありがとうございました!


月英学園 -kou-
メーカー アークシステムワークス
発売日 2013年10月10日
価格 6090円[税込]
ジャンル アドベンチャー / 学園・ファンタジー
備考 PS Store ダウンロード版は4800円[税込]、限定版8190円は[税込]、プロデューサー:森 利道、 原作:杉田智和、御立弾、音楽:伊藤賢治、キャラクターデザイン:すめらぎ琥珀、さらちよみ、哉ヰ涼