「女っていうのは本来、為時の娘みたいに邪魔にならないのがいいんだぞ」

「女こそ、家柄が大事だ」

「家柄のいい女は嫡妻にして、あとは好いた女子のところに通えばいい……」

打毬大会の後で、そんな話を盗み聞いてしまったまひろ(紫式部/吉高由里子)。あれほど情熱的な和歌をよこした藤原道長(柄本佑)だって、きっとそうに違いない。


そう思い込み、泣きながら雨の中を帰宅。道長から贈られた和歌を灯りにくべてしまうのでした。

一方、道長は打毬に誘った直秀(毎熊克哉)の左腕に疵を見つけ、先日自分が矢を射た盗賊ではないかと疑いを抱きます。

NHK大河ドラマ「光る君へ」、今週も目まぐるしい展開でしたね。それではさっそく、気になるトピックを振り返っていきましょう!

■藤原忯子を喪い、失意の花山天皇

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悲歎に暮れ、出家遁世を考える花山天皇(イメージ)月岡芳年筆

触穢(しょくえ。死などのケガレにふれるタブー)から、藤原忯子(井上咲楽)の死に顔さえ見届けられなかった花山天皇(本郷奏多)。


かつて彼女の手首を縛った帯紐を握りしめる様子は、倒錯しながらも深い愛情を感じさせる描写となっていました。

さて、すっかり気落ちしてしまった花山天皇を支えるのはわずかな寵臣たちのみ。叔父の藤原義懐(高橋光臣)と教育係の藤原為時(岸谷五朗)……劇中では言及されませんでしたが、乳兄弟の藤原惟成(吉田亮)も忘れないで下さい。

心から自分を信じてくれている花山天皇を裏切るのは忍びない。為時は永らく務めていた間者を辞める決意をしました。

「そうか。
そんなに苦しいこととは知らなかった。ならばこれまでと致そう。永きにわたり、ご苦労であった」

意外なことに藤原兼家(段田安則)は為時の申し出を快諾。これに裏があるのは言うまでもありませんね。

【考えられる兼家の意図】

(1)花山天皇はボロボロ(心身はもちろん、警戒態勢も)であり、もう間者は必要ないor他の者で足りる。

(2)為時は自分よりも花山天皇を選んだ。
ならば退位後の報復人事を楽しみにしておれ。

晴れ晴れとした顔で帰宅した為時を、藤原宣孝(佐々木蔵之介)は咎めます。まひろは喜びますが、乳母のいと(信川清順)は泣き出す始末。

果たして花山天皇の退位後、為時は10年間にわたる冷や飯食いを余儀なくされることになります。



■忯子を皇后に?居並ぶ群臣の答えは

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左大臣・源雅信。菊池容斎『前賢故実』より

花山天皇は亡き忯子に皇后の称号を贈ろうと、群臣に図りました。
が、結果は否決。

兼家は「先例があればよろしいかと」と言っていましたが、要するに「先例があるなら出してみろ」と言っているに過ぎません。

もうみんな花山天皇に見切りをつけて、藤原義懐に否(ノー)を突きつけたのです。

ちなみに、当時の重臣たちは以下の顔ぶれとなっています。

【花山天皇時代の重臣一蘭】
関白・太政大臣:藤原頼忠
左大臣:源雅信
右大臣:藤原兼家
内大臣:空席
大納言:藤原為光・源重信
権大納言:藤原朝光(あさみつ)・藤原済時(さだとき)
中納言:藤原文範・源重光
権中納言:藤原顕光・源保光
参議:藤原為輔・藤原義懐・源忠清・藤原公季(きんすえ)・大江斉光(ただみつ)・藤原佐理(すけまさ)・源伊陟(これただ)・藤原時光

……何ともまぁ、みんな藤原か源ばかりですね。1人だけ大江がいました。


全19人中12人が藤原、6人が源。いかに藤原氏が隆盛を誇っていたかがよく分かります。そして、その中で頂点を競うのかも。

並居る強敵たちをなぎ倒し、道長が権力の頂点を極めるのは、もう少し先のお話しです。



■実資の妻・桐子は源惟正女か

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藤原実資。菊池容斎『前賢故実』より

今回初登場となった藤原実資(秋山竜次)の妻・桐子(中島亜梨沙)。


実資には妻が数名いましたが、この時点で妻となっていたのは源惟正女(これまさのむすめ)でしょうか。

以下、仮に桐子が源惟正女だったと仮定して話を進めます。

彼女は生年不詳、劇中の寛和元年(985年)に一人娘を生みました。実資とは結婚10+α年目、何かと夫の愚痴を聞かされてきたのでしょうね。

残念ながら、彼女は寛和2年(986年)に亡くなってしまいます。また一人娘も正暦元年(990年)に先立ってしまったのでした。

劇中ではとても蹴鞠の下手な描写がありましたが、実際の実資は蹴鞠の名手と伝わっています。

そんな実資が鞠を蹴損じてしまうほど、義懐の抜擢に心乱されたのでしょうね。

桐子「あなた、その愚痴は私に言わないで日記に書きなさいな」
実資「書けるかこんなこと!書くに値しない!」

……などと言いながら、実資は自身の日記『小右記(しょうゆうき)』に、しっかり書き残していたのでした。

……但三位義懐任参議、中将如故、雄無其開臨時所任歎、可奇々々、公卿定員十六人、而十九人、如何々々。

※寛和元年(985年)9月14日条

【意訳】義懐が参議だと?ありえない。ありえない!公卿の定員は16名だったのに、今回いきなり19名に。どういうことだどういうことだ!

花山天皇の寵愛をかさに急激な出世を遂げ、自分を追い抜いた義懐が、よほど許せなかったのでしょうね。



■さて、今週のF4は?

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その内F4のみんなで蹴鞠なんかもして欲しい(イメージ)

妹の藤原忯子を亡くして、兄の藤原斉信(金田哲)は気落ちしています。

あんな事になるなら、入内などさせねばよかった……悔やんでも悔やみきれません。

縁側から投壺(つぼうち、とうこ。投げ矢遊び)をしていますが、みんな心ここにあらずです。

ちなみに投壺は古くから大陸より伝来したものの、あまり流行らなかったようです。

むしろ桐子たちが遊んでいた双六(すごろく。現代のバックギャモンに近い)の方がよほど流行し、たびたび禁令まで出ています。

こういう当時の遊びや文化が実写されるのは、観ていてとても楽しいですね。

気晴らしに打毬でもやろう。最近見つかった弟・直秀の活躍もあってチームは大勝利。やりました。

しかし雨に降られた着替えの間で、女性談義を繰り広げてまひろに盗み聞かれてしまいます。

これは『源氏物語』の一場面「雨夜の品定め」をモチーフにしているのでしょう。主人公の光る君らが、女性についてあれこれと論評する場面です。

今週は遊び回ということもあってか、あまりパッとしませんでしたね。せっかくだから打毬競技の全容も観たかったと思います。

まぁ、イケメンがアップで観られて嬉しいファンサービスということで。

ちなみに、ききょう(清少納言。ファーストサマーウイカ)はこの時点で既に人妻。息子もいるのですが、今後登場するでしょうか。



■気になった細かなことあれこれ

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今日も貧しい者たちを救うために盗みを働く散楽の一員(イメージ)

一、猫の小麻呂はどこに行った?無事?

一、義賊たちの心遣いは嬉しいけど、高価な衣装をそのままくれても換金できません(足がつくから)。できればお米で欲しい。

一、まひろの考えた脚本のオチが知りたい。

一、先週の回想と今回で、直秀の左腕に当たった矢の位置が違う気がする。あと、矢が当たって痛い時はもっと近くに手を当てた方がリアル。

一、打毬の観覧席、ききょうの席はそこで大丈夫?少なくとも左大臣の娘である源倫子(黒木華)と同列ではなさそう。

一、藤原道隆(井浦新)の道兼に対する優しさが怖い。どんな裏切りを見せるのだろうか。

一、道長は異母兄である藤原道綱(上地雄輔)の存在を思い出してあげて欲しい。

一、怨霊の夢に怯える兼家がとてもかわいい。そして藤原寧子(道綱母。財前直見)が閨を共にしている奇跡的な場面が見られて、他人事ながら幸福感を味わえた。

等々。

■第8回放送「招かれざる者」

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打毬をモチーフにした打毬楽(イメージ)

直秀「一緒に行くか?」

まひろ「行っちゃおうかな」

道長に失望したまひろは直秀について行こうか迷うようです。

しかし義賊?の裏稼業が発覚して散楽一座は一網打尽に。まひろが哀しみの琵琶を奏でます。

あー、これは直秀処刑されましたね。あるいは釣りでしょうか。

そろそろ花山天皇が出家するんじゃないかと思うのですが、藤原道兼(玉置玲央)の誘い文句に注目です(寛和の変)。

道兼とまひろの直接対話もあるようで、こちらも何が語られるのでしょうか。

次週も急展開が予想されるので、見逃さないようにしましょう!

トップ画像:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

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