焼き枯らしという言葉を聞いたことがありますか?
その昔、いまほど交通網が発達していなかった時代、川魚は海から遠く離れた山間部で、貴重なタンパク源でした。
そのためこの貴重なタンパク源を保存しておくために釣ったアマゴやイワナ、アユなどにエラからワラを通すか、串を打ってわらづとに刺し、囲炉裏端や囲炉裏の上などに吊して乾燥させました。
こうして作った川魚の干物を焼き枯らしと呼んだのです。
山間部で焼き枯らしにするのは、アマゴやイワナなど川魚が中心でしたが、川沿いの集落などでは河口でよく釣れるハゼも焼き枯らしの材料にしたようです。
焼き枯らしと焼き干しは微妙に違う
一方、焼き干しと呼ばれる干物があります。
焼き枯らしと焼き干しは、同じものだと思っていませんか?
しかし、微妙に違うようなんです。
焼き枯らしは、魚を囲炉裏端などに吊るし、遠火でじっくり乾燥させたものです。
焼き干しは、囲炉裏端などで一度焼いたものを、今度は天日で乾燥させたものなんです。
気象条件を活かした干物作り
このような干物の作り方を漁村などであまり見かけないのは、日照と浜風に関係があるそうです。
漁村では、日差しがたっぷりあり、朝夕には浜風がよく吹きます。
このような気象条件を生かし、生の魚をそのまま天日と浜風で乾燥させた干物作りが発達したと言われています。
逆に山間部では、日照時間が短く浜風も吹きません。
そのため焼き干しや焼き枯らしは、山村の民の知恵が生かされた干物なのです。
焼き枯らしにしたイワナに熱燗をたっぷり注ぎ、ダシが出るのを待っていただく骨酒の旨さは、山里ならではの味わい。
しかし、朝どれのアジに立て塩をして浜風に当て、一夜干しにしたものをさっと炙っていただくのも捨てがたい味です。
どちらも試してみたいですね!