「私たち後輩は、保田さんの見切れの教材VTRをみて勉強した」

これは10月8日に放送されたテレビ朝日の深夜番組『あるある議事堂』で、先日芸能界引退を発表した“ももち”こと嗣永桃子が放った一言。
「保田」とは誰あろう、モーニング娘。
の全盛期に同グループのサブリーダーとして活躍した保田圭のこと。事務所側からは「見て!この保田の必死さ!」と、彼女が歌番組の収録時にほんの一瞬画面に写りこむ様を、何パターンも視聴させられたと、ももちは述懐していました。

特定のファンは皆無? モー娘。のサブリーダーを務めた保田圭


思えば、モーニング娘。が社会現象化していた今から15年ほど前。中学生だった筆者のクラスでは、「メンバーの中で誰が好きか?」という議論が、男子の間でしきりに展開されていました。

人気を集めていたのは、やはり、安倍なつみ・後藤真希・石川梨華などのエース格のメンバー。いずれも、眩い輝きを放つ、グループにおける一等星ともいうべき存在です。

そういった会話の中で、保田を“イチ推し”に挙げる人というのはゼロ。一等星の如く輝くなっちやゴマキの付近で、さながら、六等星のようなこの地味なサブリーダーを、わざわざ、積極的に応援していこうという世論は、皆無に等しかったのです。

「もう一生しゃべらなくていい」と怒られたことも


保田がモー娘。に加入したのは、1998年5月。第2期メンバーとして、市井紗耶香、矢口真里と共にデビューを果たしました。

この時既にメジャーデビュー曲『モーニングコーヒー』のヒットで、一躍注目のアイドルとなっていたモー娘。へ加入するということは、半ば勝ち馬に乗ったも同然。本来であれば、嬉しむべきところなのですが、保田の表情は冴えません。自分のルックスレベルが周りよりも数段劣っていることに、早くも気づいてしまったのでしょうか。

この状況を打破するべく、クールキャラを演じたり、ガツガツと前のめりなキャラになったりと試行錯誤を繰り返すもことごとく失敗。また、トークスキルも低かったため、ある番組の収録後にマネージャーから「もう一生しゃべらなくていい」と叱責されたこともあるといいます。

そのせいなのか、一時期、彼女はテレビに出演しても、さながら擬態をつかう虫のように、セットと同化していました。まるで「私なんか見ないで…」とでも言いたげに。

『うたばん』で弄られキャラとしてブレイク!


そんな不遇な保田にも、一筋の光明が差し込みます。あるときを境に“弄られキャラ”としてのポジションを確立し始めたのです。もっとも、その本領を発揮したのはTBSの『うたばん』。石橋貴明と中居正広から毎回鬼のように弄られまくり、しまいには高名な陶芸家の手によって「保田キャラ立ち人形」なるものまでつくられるなど、異例の大フューチャーを受けたのです。


こうしたバラエティ番組におけるネタキャラとしての扱いを、事務所側もしっかりバックアップ。ソロ写真集を出版するにあたり、他のメンバーはハワイや沖縄などで数日かけて撮影するところを、保田の撮影場所は事務所近所の麻布十番。衣装も用意されず、私服のまま数時間でチャチャっと済まされたとのこと。

ネタキャラ……というか、単に雑な扱いなだけな気もしますが、それでもへこたれず、先述したように、教材VTRができるほど、事前にカメラ割りをチェックし、カメラマンにも話を聞きにいった上で、テレビ画面に見切れていったという執念はすさまじいものです。
確かに、光り輝く一等星ではなかったかも知れません。しかし、にぶくても、そこにいることを主張し続けた六等星が放ったそのいぶし銀な輝きを、私たちは決して忘れないでしょう。

(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりビデオちょこっとLOVE [VHS]