難解なストーリーと映像美で素晴らしいインパクトを残した2011年放送の『輪るピングドラム』。病死した年若い妹を復活させるために奮闘する兄弟が主人公。
16年前に起きた事件にからみ、複雑な人間関係が交錯します。そして、本作のメイン主人公こそ、今回ご紹介する兄弟の弟「高倉晶馬(たかくらしょうま)」です。

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】

■両親の罪を背負う覚悟

 1995年3月20日うまれの16歳。高倉家の次男で、兄の冠葉(かんば)、妹の陽毬(ひまり)と3人暮らし。
家族を大事に想い、体の弱い妹、いつもどこかにいってしまう兄にかわり、家事全般を引き受けています。兄は兄で、妹の病気治療のためのお金を稼ぐためにいろいろと怪しい活動もしているのですが、どうやら気が付いてはいない様子です。

 また、16年前に大事件を起こしたピングフォースという組織に両親とともに所属していましたが、人を傷つけた両親を憎く思い、組織ともども軽蔑しています。そして高倉家に振りかかる不幸を、大罪への罰だと受け入れています。

■受け身な性格と生活

 晶馬は基本、受動的な性格です。妹の命を救うために、突然現れた妹の姿をしたプリンセス・オブ・クリスタル(以後プリクリ様)の密命で、良心の呵責に耐えながら、荻野目苹果(おぎのめりんご)をストークします。
16年前の事件の被害者である荻野目桃果の妹・苹果(りんご)に惹かれているようで、いろいろと手助けしたり身を守ったりしますが、実のところは全くはっきりしません。あげく、自分の気持ちに気が付いた苹果に対して、被害者家族と加害者家族であることを理由に拒絶します。相手がパワフルな苹果でなかったら、何の進展もしないでしょう。それ以外にも、いろいろとゴチャゴチャするなか、比較的いつもカヤの外の晶馬。ある意味ほっこり要因です。

■両親の消失

 冠葉や陽毬の思い出の中では、高倉の両親は完璧な両親です。
しかし、テロリストのリーダーでもありました。実親に捨てられた陽毬や、実親にさげすまれた冠葉にとっては良かったのかもしれませんが、実子の晶馬にとっては違ったようです。

 まず、二人と比べてスタートが違うので、行方不明なのも「捨てられた」「裏切られた」と感じるでしょう。晶馬にとっては、冠葉や陽毬の実の両親への気持ちと同じ思いを両親に対して感じているのかもしれません。さらに、晶馬の思い出の中にいる両親の姿は「テロリスト」として活動している姿ばかりです。

 最終回、幼い冠葉と晶馬は檻に閉じ込められています。
これは「愛されていない子ども」の象徴だとも言われています。冠葉・陽毬にとっては十分でも、晶馬にとっては両親からの愛情足りなかったのか、もしくは「養子に優しく接する自分たち」に酔っていて、晶馬がおろそかになっていたのか・・・真相はわかりません。

 檻の中で、生きるためのリンゴ(愛・命)を最初に手に入れたのは冠葉です。そして半分を晶馬に渡します。かつて、こどもブロイラーという子捨て施設に捨てられた陽毬と、リンゴを分け合った晶馬。「運命の果実(りんご)を分け合った人」が運命の人ならば、陽毬の運命の人は晶馬で、晶馬の運命の人は冠葉ということになります。
両親の行動に疑問を持ちながらも従い、行方不明になってからは憎むだけだった晶馬。行動力を伴う冠葉がいなければ、生活もままならなかったのではないでしょうか?

 大切なものを守るために紅蓮の炎に焼かれるという裏ワザができる桃果と妹の苹果。陽毬の命を救うために炎に焼かれる苹果と自分の運命を入れ替え、晶馬が苹果に愛を告げるシーンは涙なしでは見ることが出来ませんでした。優しいだけではない晶馬の気持ちが胸にささる名シーン、ぜひご自分の目でお確かめ下さい。

【原稿作成時期の都合により、内容や表現が古い場合も御座いますがご了承下さい】

★記者:藤原ユウ(キャラペディア公式ライター)

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