フジテレビの新アニメ枠「+Ultra」にて、2019年1月9日よりスタートする『revisions リヴィジョンズ』。

プラネテス』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』など数々の作品を手掛けた谷口悟朗が監督を務め、『PSYCHO-PASS サイコパス』の深見真がシリーズ構成・脚本を担当。

キャラクターデザイン原案には『Wake Up, Girls!』の近岡直、アニメーション制作は『永遠の0』『ALWAYS 三丁目の夕日』の白組が務めることでも話題の“青春(ジュブナイル)災害(パニック)群像劇(アンサンブル)”だ。

主人公となるのは、幼いころ誘拐された過去をもつ高校2年生の堂嶋大介。その誘拐事件をきっかけに、幼なじみのガイ、ルウ、マリマリ、慶作との絆はバラバラになっていた。
そんな中、渋谷の中心部だけが300年以上先の「未来」に飛ばされるという不可思議な現象「渋谷転送」に巻き込まれる。
そこで待っていたのは、広大無辺な荒野と森、点在する廃墟…そして、未来人「リヴィジョンズ」と彼らが操る巨大な機械の化け物だった。

理由もわからぬまま化け物たちに蹂躙されていく渋谷を助けようと現れたのは、誘拐事件の大介の恩人と同名で瓜二つの女性・ミロ。
彼女は、大介たちだけが操縦できる人形兵器「ストリング・パペット」を提供し、渋谷を守れと促す。
誘拐事件の際、ミロに言われた「仲間を守る運命」を信じて生きてきた大介は、ついに訪れた危機と手に入れた力に歓喜。「現在(いま)」を取り戻すため、「未来」と戦うことになる――。

今回、人類が生き残る未来を守る組織アーヴの“バランサー”であるミロを演じる小松未可子さんにインタビュー。
実際に災害が起きた時のことをシミュレーションして制作されたというリアリティ溢れる本作の見どころや、「キャラクターが濃い!」と語る谷口監督作品の印象、さらに小松さん自身が描く声優・アーティスト業への“未来のビジョン”などもたっぷりと語っていただいた。
[取材・構成=米田果織/撮影=市原達也]

TVアニメ『revisions リヴィジョンズ』

2019年1月9日よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24: 55から放送開始
NETFLIXにて1月10日(木)より日本先行全話一斉配信

■青春“災害”群像劇が意味するものとは?

――すでにアフレコは終えられているということですが、作品にどのような印象を持ちましたか?

小松未可子(以下、小松)
「青春“災害”群像劇」という初めて聞くジャンルで、どんなお話なのかまったく想像がつかなかったのですが、アフレコが終わった今、本当に「青春“災害”群像劇」の通りだなと感じました。

谷口監督作品の印象ってSFやロボットというイメージが強いと思うのですが、今回は未来に転送された人たちの“災害”の部分がメインとなってきます。

また、主要キャラクターとなる5人の男女の“青春”となる部分、そして災害に立ち向かっていく渋谷の人たちの“群像劇”となっていて。本当にいろいろな要素が散りばめられている作品です。

――「300年以上先の未来」という舞台について、作品ではかなり衝撃的な“未来”が待ち受けていましたが……。

小松
そうですよね。いわゆる私たちが想像する未来って、現代よりさらにバージョンアップしているイメージだったんですけど、この作品の未来は荒廃して何もない状態になっていて……300年以上先の未来に未来がない!(笑)
しかも、人類の存亡をかけた戦いが繰り広げられているという。
私だったら、どう生き延びていいかわからない。
本当にこんな未来だとしたら、絶望しちゃいますよね。

――そんな未来で人類の生き残りをかけて戦っているというミロ。演じるうえで感じた魅力は?

小松
ミロは、いわゆる「組織の人間」で、自分の感情より組織の任務に命を懸けているので、
彼女には大介たちが送ってきたいわゆる「青春時代」というものはなく、本当に生きるためだけに尽くしてきたのだと思います。

そんな人生を送ってきているにも関わらず、ミロは、この物語の中で一番マトモなキャラクターだと思います。
作品を見てもらえばわかると思うのですが、大介みたいに“自分”を押し付けないというか……。
真面目で、ブレがなくて、でも、その中に年相応の部分もあって。

「何のために戦うのか」とずっと自問自答していて、人間ならではの感情を持ち合わせているところが魅力だと思います。
組織に属していなくて、普通の人生を歩んでいたら、「普通の子」になっていたんでしょうね。

――劇中、大介たちが過去に出会うミロ、未来で出会うミロ、という2つのパターンの出会いがあると思います。その際、意識して演じ分けた部分はあるのでしょうか?

小松
その通りで、第1話にはミロと大介たちとの「初対面」シーンが2カ所あります。
未来で出会った時、ミロは「過去に大介たちに会ったことはない」と言っています。
その点に関しては、そのミロは果たして幼少期の頃に会ったミロなのか? 変化してしまったのか? ということを、推理して見ていただきたいです。
それが物語のキーとなってくる箇所でもありますので、演じ分けについては、あえてノーコメントで(笑)。

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■『純潔のマリア』以来4年ぶりとなる、谷口監督作品への想いとは?

――本作には、さまざまな立場となるキャラクターが登場します。もしも小松さんが未来に跳ばされたとしたら、幼なじみ5人の中だとどの立場にいると思いますか?

小松
私はこの5人のように強く生きられないと思うんですよね。
目の前にロボットがあっても乗らない……あ、試し乗りはするかも(笑)。
乗ってみて動かせそうだったら……いや、でも戦闘には行きたくないですね。
命大事いのちだいじに!

この中だと、慶作かマリマリかなと思います。誰か引っ張ってくれる人がいて初めて、「自分もこう動かなきゃ!」と意識が芽生えるような気がします。
「こうしなきゃ」って自分が言うことに自信が持てないし、それが正解だとも思えない。だから、大介の行動力には本当に驚かされますね(笑)。

――大介の行動には驚かされるというか、むしろ身勝手というか、痛いというか……。でも、こういう人、小学校の頃のクラスメイトでいた気がします(笑)。

小松
いました!(笑) 自分にしかわからない宿命、運命というものを感じていて、周りに強要はしないけど「俺ってこうだから」と、当然のように伝えてくる人いましたね!
でも、その感じ、実は分からなくもないんですよね……(笑)。
運命を信じる気持ちは、私にもあるので。

大介が信じている理由はきっと、ミロに言われた「みんなを守ることが大介の運命であり使命なんだ」という言葉で、自分の道を切り開けたからだと思います。
でも、従来のアニメ作品だと、それによってスーパーヒーローになるはずが、大介はどこかネジが外れた「アイツ痛いやつだぞ」と思えてしまうようなキャラクターに仕上がっているのがリアリティというか、悲しい部分ですね(笑)。

――大介役の内山昂輝さんご本人はかなり落ち着いて、大介とはまったく正反対なキャラクターなイメージですが、アフレコ現場ではどのような役作りをされていたのでしょうか?

小松
確かにうっちー(内山さんの愛称)本人は、普段はすごくクールに見えますよね。お酒を飲むとすっごくテンション高くなるんですけど(笑)。
でも、以前共演した際、とてもはっちゃけた役を演じられていたので、そこでうっちーって、こうやって役に入り込むんだなと驚いたことがあったので、今回はそんなに驚きませんでした。

今回演じている大介は、その時に演じていた役とはまた違った、ちょっとひねくれた方向で、ちょっと狂気じみている部分があるんです。
現場では、その大介のひっかかりとなる「狂気さ」「危うさ」をもっと引っ張り出そうと音響監督からディレクションがあったので、さらにグレードアップして「危ないヤツ」になっていく様子が面白かったです(笑)。

――では、小松さんがミロを演じるうえでディレクションされたことは?

小松
オーディションだったのですが、割と最初に作り込んでいったミロ像がブレることはなかったかと思います。
でも、谷口監督は心配されていたみたいで(笑)。以前ご一緒させていただいた『純潔のマリア』という作品で、私は男の子役を演じていたんです。
やっぱり、最初に出会ったキャラクターの印象が強かったようで、「男の子にならないかが心配だった」と仰っていました。

――その『純潔のマリア』から4年ぶりに谷口監督作品出演となります。

小松
谷口監督といえばSFやロボットアニメのイメージがあったのですが、『純潔のマリア』は中世が舞台で、ロボットは全く出てこない作品だったので、自分の中では「意外だな」と思った作品が出会いとなりました。
個人的に『コードギアス 反逆のルルーシュ』などを見ていて、すごく好きだったので、監督復帰作である貴重な作品で出会えたことが嬉しかったです。

ですが、谷口監督の作品の主人公は、やはりどこか変わってますね(笑)。
アンチヒーローではないですが、一筋縄ではいかない、正統派ヒーローではない。
どこか人間の影の部分にスポットを当てていて、なぜ彼が主人公なのかを考えさせられる作品が多いイメージがあります。キャラクターが濃い(笑)!

――ロボットといえば、今回登場する「ストリング・パペット」はかなり変わった形状をしていますよね。

小松
そうなんですよ! 今まで見てきた従来のロボットとはまた違う部分があるというか、乗るには乗るけど、コックピットじゃなくて、着ぐるみ? のような。しかも丸見え! 斬新だなと思いました。

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■もし“子ども”の自分にアドバイスを送れるなら?

――作品にちなみ、子どもの頃の自分に何かアドバイスを送るとすれば?

小松
真面目に勉強して、体を柔らかくして、姿勢は良くして……etc(笑)。小さい頃の自分が積み重なって今の自分が出来上がってしまったので、本当に「真面目に生きて」と伝えたいです。

――小松さんが声優という職業に就いたのは、幼い頃からの夢だったからなのですか?

小松
いえ、また別の夢を抱いていましたね。でも、幼い頃から声優という存在は知っていました。

――では、未来で声優になるとわかっていたら、どんなアドバイスを送りますか?

小松
「いろいろなアニメを見ておけ!」です。今、もっと見ておけばよかったなと思うことがたくさんあるので。
男兄弟がいるのですが、男の子が見るようなアニメにもそんなに触れてこなかったんです。『ドラゴンボール』は見ていたんですけど、『ガンダム』は見ていないとか。「後々『ガンダム』に関わるから、見ておいて損はないよ!」と伝えたい(笑)。
アニメだけじゃなく、映画もドラマも本にもたくさん触れておいた方が良いよって。

――子どもの頃見ていた作品で、影響受けたものはありますか?

小松
それはもちろん、『名探偵コナン』です! 大人になった今でも見ています。
『コナン』が大好きになったことがきっかけで、声優さんに興味を持ち、倉木麻衣さんが好きになって音楽にも触れたり、自分の人生のいろいろな入口になっている作品です。
あと、自分はいつか探偵になると思っていました(笑)。絶対いつか役に立つと思って、生徒手帳に毒の致死量とかメモしてましたね(笑)。
ある意味、大介に近い、中二病をこじらせた部分があったと思います。

――声優という職業では、いつか演じるという形で探偵になれるかもしれないですよね。

小松
やりたいですね! そういう意味では、まだ探偵になれるチャンスがくるかもしれない!

――探偵のほかに演じてみたい役や、「こうなっていたい」と願う未来のビジョンはあるのでしょうか?

小松
キャリアを積んで、ようやく演じることを認められる役って、「ラスボス」だと思うんです。
今声優界には、「この人がきたらかなわない」と思わせる人がたくさんいるのですが、私もいつの日か「小松にならラスボスを任せられる」「絶対かなわない」と思わせるキャラクターを演じてみたいです。

――アーティスト業ではいかがですか?

小松
地元・三重県でライブをすることが1つの夢ですね。

――「三重県といえば」というコンサートホールやライブハウスはあるのでしょうか?

小松
大小いろいろあるのですが、まずは自分の地元である桑名市のNTNシティホール(桑名市民会館)。1000人以上入る大きなホールで、幼稚園の時にお遊戯会で踊って以来踏んでいないあのステージに、また立ちたいと思っています。それによって、恩返しもできるかなって。

――大介にとってのミロの言葉のように、今、小松さんが頑張る理由になっている言葉はあるのでしょうか?

小松
高校の時、お仕事のために上京することになって、転校したんです。その際、担任の先生に「成功するまで帰ってくるな」って言われて。
もし地元でライブができたら、その恩師の方もお呼びしたいと思います!

また、その担任の先生が、私を送り出してくれる時に、長渕剛さんの「乾杯」を歌ってくれたんです(笑)。厳しい言葉をかけられた反面、送り出すために歌を歌ってくれたことがすごく嬉しくて。
今でも歌声を覚えているので、忘れられない1シーンですね。

――では小松さんから、声優を志す方に何かひと言お願いします。

小松
え!? まだ自分がそんなひと言を言える立場じゃないかもしれないですが……(笑)。
現在声優として活躍されている方の多くは、養成所に通いそこで技術を学んでデビューされた方がほとんどですが、私は養成所に通ったこもありません。そういう意味で、入り口が“正規ルート”じゃないんですよね。なので、どの入口でも“アリ”というか。
不安でも、未来がわからなくても、まずは1歩踏み出してみることで、未来へ辿り着くことができると思います。

――最後に、作品の見どころをお願いします。

小松
未来に跳ばされた「渋谷の半径約1キロメートル以内」という狭い世界が、3DCGで緻密に描かれています。そこに、ある意味「日本の縮図」があって。
さらに、主人公の大介がミロと出会ったことによってどう変わっていくのか、成長に期待してください。また、人類は何と戦っているのかという壮大な部分や、怒涛のように展開するストーリーは、毎話驚かされます。
最終的に大介たちや渋谷がどうなってしまうのか、考察しながら見ていただくと、より楽しめると思います。

――ありがとうございました!