News Release

推定500匹のコクゾウムシが練り込まれた土器を発見

世にも稀な大量のコクゾウムシ混入土器が導く古代日本人の生活

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Maize Weevil

image: <p>(Left) A living maize weevil.</p> <p>(Right) Image of a maize weevil impression from the surface of a pottery fragment.</p> view more 

Credit: Prof. Hiroki Obata

熊本大学の研究者が、平成28年2月に発見した北海道の遺跡から出土した縄文時代後期の深鉢形土器に、推定で500匹のコクゾウムシが練り込まれていたことを発見しました。今回の発見は、縄文時代のクリ栽培とその拡散、それら食物に対する縄文人たちの精神性を表徴する世界的にも極めて希な発見です。

コクゾウムシはオサゾウムシ科の甲虫であり、貯蔵米の害虫として知られています。2003年ごろより、土器の表面や断面についたタネやムシの痕跡を探る土器圧痕法という研究手法により、日本全国で縄文土器を中心にコクゾウムシの圧痕が多数検出されてきました。このコクゾウムシは、現在では、圧痕で発見される昆虫の9割以上を占めています。

熊本大学の小畑教授らは、2010年、約1万年前のコクゾウムシ圧痕を日本南部の種子島で発見し、それまでイネとともに朝鮮半島(ユーラシア大陸)から渡来したと考えられてきたコクゾウムシが、イネの伝播よりはるかに昔からドングリやクリなどの貯蔵堅果類を加害する害虫であることを明らかにしました。

小畑教授らは土器圧痕調査を進める中で、2012年には日本の北部に位置する青森県三内丸山遺跡においてもコクゾウムシが存在することを突き止めました。寒い冬を持つ地域にもコクゾウムシが生息していたことは、人間による食料の拡散と冬でも暖かな屋内環境があったことを示すもので、まさに現代の貯蔵食(穀)物害虫拡散のメカニズムがすでに縄文時代にあったのでは、と推定されます。

このような中、小畑教授らは、2013年から開始した北海道の遺跡における土器圧痕調査の過程で、北海道で初めてコクゾウムシ圧痕を発見し、ついに2016年2月にはコクゾウムシを多量に土器の粘土中に練り込んだ土器を発見しました。小畑教授らはこの土器をX線CT撮影し、断層に現れるコクゾウムシの空隙を数え、土器の残存部に417点のコクゾウムシ成虫が含まれていることを明らかにしました。さらに、土器は部分的に欠落箇所があり、これらが完全に残っていた場合、土器の表面積の計算上、501点という多量のコクゾウムシ成虫が入れられた可能性があります。

また、小畑教授らは、全国で発見された43箇所337点のコクゾウムシ圧痕の体の大きさを計測・比較し、東日本のコクゾウムシの体長が西日本のコクゾウムシより2割ほど大きいことを発見しました。その大きさの違いを、彼らの加害した食料(縄文人の利用堅果類)の違い、つまり、東日本のクリと西日本のコナラ属(イチイガシ:果実は通常ドングリと呼ばれる)の栄養価の違いに因るものと推定しています。

さらに、クリは北海道には本来自生しないもので、これまでの研究で、三内丸山遺跡に代表される円筒土器文化圏の人々が北海道へ運んだものと考えられており、今回の北海道館崎遺跡におけるコクゾウムシの発見は、クリ果実(コクゾウムシに加害された)を東北の縄文人たちが船で津軽海峡を越えて運んだ証拠である可能性を指摘しました。

小畑教授は次のようにコメントしています。

「多量のコクゾウムシ成虫が混入された意味については、論文中では詳しく触れていませんが、縄文人たちがクリの化身としてクリ果実の豊穣を願って練り込んだものではないかと推定しています。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Journal of Archaeological Science: Report」に2018年11月13日に掲載されました。

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[Source]

Obata, H., Morimoto, K. & Miyanoshita, A., 2019. Discovery of the Jomon era maize weevils in Hokkaido, Japan and its mean. Journal of Archaeological Science: Reports, 23, pp.137–156. Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.jasrep.2018.10.037.


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