記事のポイント

  • カニに関する新たな研究によると、カニは生物のグループとして、最古の恐竜と同じくらい古い生物であることがわかました。
  • 進化モデルによって、「どうやらカニは海洋から陸上へと生息地を移し、ときに再び海洋へと戻っていた」という事実が明らかになりました。
  • カニは、「生物が水中生活と陸上生活の両方にどのように適応するか」という点について、科学者に大きな見識を与える可能性があります。

カニは恐竜と同時代から生き
何度も生息環境を変えてきた

あなたの大好きなカニは、もしかしたら水中生活から陸上生活へ、あるいはその逆へとその生息地を移行しているのかもしれません。

『システマティックバイオロジー』誌(オックスフォード大学出版局が発行する査読付きの科学ジャーナル)に掲載された新しい研究によると、真正カニ類( 短尾下目<カニ下目>に属し、109科7600種以上からなる)は、最古の恐竜と同じくらい古い生物であるだけでなく、これまでの歴史で生息地を水陸間で何度も移してきたことが研究結果として明らかになりました。

ハーバード大学の研究員でこの研究の筆頭著者であるジョアンナ・ウルフ氏は、「私たちの研究によって、過去1億年の間に、真正カニ類が陸地と淡水域のみで生息していたときが約17回あることが明らかになりました」と声明で述べています。

研究チームは他にも、非常に陸上性の高いカニの仲間は木に登ることができるなど、明らかにカニらしくない特徴もいくつか発見しました。また、これらの成体のカニは、完全に水に浸かると死んでしまうということも…。

20年にわたる研究によって導き出された結論は、「真正カニ類は、他の節足動物よりもはるかに多く7~17回も海洋環境を離れ、歴史の中で急激に分散していった」というものになります。そしてカニの歴史自体は、私たちがこれまで考えていたよりもずっと早く始まっていたようです。

この研究では、三畳紀(約2億5190万年前に始まり、約2億130万年前まで続いた地質時代)中期に、最古の恐竜の一部と並んでカニが生きていた痕跡が発見されています。つまり、「カニ類が生息していた時代は、これまで想定されていたよりも4500万年も古い」ということになるわけです。

さらに驚いたことに、研究チームはカニが完全な海洋生物から完全な陸生生物に移行し、また元の海洋生物へと戻ったという痕跡を時代経過の中で2、3回目撃したということ。そこでウルフ氏は、「カニは、陸上で生活するというが(進化の過程における)目標ではなかったようですと言います。

「私たちの研究結果では、完全な海洋環境から潮間帯や河口域の環境へ移行するのは容易であり、主に陸上で生活するシオマネキ(カニの一種)のように、水からさらに離れた生活に移行することは、そのおよそ100倍も困難であることを示唆していました」

カニをより適切に分類するために、研究チームは3つの新しいデータセットを作成しました。(88科の真正カニ類から)海洋性と非海洋性の両方のグループを含む344種からなるものです。

これを用いてDNA、化石の記録、歴史的データを記録することで、“陸上化”に至る2つの経路を追跡しました。一つは浜辺や海岸林、ジャングルなどの潮間帯を通って、海洋性から陸上性へと直接移動する経路を追跡しました。もう一つは、河口、水没した淡水、河岸、そして最後に海岸林やジャングルを経由して、海洋から陸上へと間接的に移動する経路の追跡になります。

そこで、「特定の特徴を備えたグループによる陸地化への収束現象が、非常に多く見られました」と、ウルフ氏は言います。そしてこう続けます、「これにより、他のグループで何が起こったのか?を予測できるようになるはずです。これを生命の系統樹全体に適用できるようにすることが、私たちの目標になります」

カニ科の歴史をよりよく理解することは、生物学者が他のグループの形態をよりよく予測するのに役立つかもしれません。この研究の共著者でフロリダ国際大学のヘザー・ブラッケン・グリッソム助教授は、「カニは私たちを驚かせ続けています。このような研究によって、生物の生息地の変遷や重要な出来事の時期について、より詳しく知ることができるでしょう」と語っています。

Translation / Kotaro Tsuji
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics