ダルトンは、1980代にふたつのボンド映画に出演した後、訴訟の問題から新作の製作が数年間止まってしまったことを原因に、結局ボンド役を降りてしまいました。
彼がこれらの作品で期待された役回りは、ほぼ不可能に近いものでした。つまりそれは、原作者のイアン・フレミングがイメージしていた、歯を食いしばって辛抱するようなシリアスなキャラクターというボンド像の再現。それと同時に、前任者であるロジャー・ムーアが演じたボンドを、10年以上にわたって見続けてきた「007」ファンをつなぎとめるという期待…。これにダルトンは応えなくてはなりませんでした(ちなみにダルトンは80年代ということもあり、ボンドのセックスアピール度をトーンダウンさせていました。これはショーン・コネリーやロジャー・ムーア、そしてダルトンの次にボンドを演じたピアース・ブロスナンに比べると、とても大きな救いに感じていました)。
ダルトンが主役を務めた2作が、「007」の文脈から少々逸脱したものであることを確認できたなら、その20年後の「007」シリーズも方向転換を図ったという地点も確認できることでしょう。
代表作: 『007 リビング・デイライツ』