インドやイランが原産といわれ、豊穣や繁栄を象徴する聖なる果物として古文書にも記されているざくろは、健康メリットも豊富。ざくろの実の仮種皮(種子のまわりの肉質の部分)や種、果汁に含まれる栄養価について探ってみた。
ざくろの健康効果その1. 抗酸化物質が豊富
ざくろの仮種皮には抗酸化物質の一種であるポリフェノールが豊富です、と教えてくれたのは「POMワンダフル」の栄養コミュニケーション部長で、理学修士、登録栄養士の資格をもつマギー・ムーンさん。
「ポリフェノールは抗酸化特性を有する生理活性植物の一種で、時間の経過とともに細胞に損傷を与える不安定分子と闘うことで知られています。これらの有害な分子をフリーラジカルと呼びます」とムーンさん。
とくに、ざくろにはフラボノイド(ポリフェノールの一種)の1つであるアントシアニンが含まれている。アントシアニンは、血圧の低下やがんの成長抑制など、さまざまな健康効果が研究で期待されている。
またざくろを美しいルビー色にしているのも、このアントシアニン。一般的に、果物の色が濃いほどそこに含まれる抗酸化物質も多い。そのため深紅のざくろに豊富な抗酸化物質が含まれるのも、当然のことかもしれない。
その2. 食物繊維の良い供給源
米農務省によると、ざくろの仮種皮に含まれる食物繊維は1サービング(0.5カップ)あたり4g。これは1日あたりの食物繊維の推奨摂取量(大人の場合)の15%近くに相当するのだそう。
なかでもとくに注目したいのは、ざくろに含まれる食物繊維のほとんどが不溶性食物繊維だということ。不溶性食物繊維は、食物が消化管を通りやすくするのを助け、消化器系を健康に保つ効果がある。また血糖値を安定させ、食事時には満腹感をもたらしてくれる。
3. ビタミンCも供給
「2分の1カップのざくろは、ビタミンCの良い供給源です」とムーンさん。ざくろ2分の1カップには約9mgのビタミンCが含まれている。これは大人にとって重要な微量栄養素の1日あたりの推奨摂取量の約10%に相当する。
ほとんどの動物は自分の体内でビタミンCを生産できるのに、人間は生産できない。そのため人間はビタミンCを食事から摂取する必要がある。
それ自体が抗酸化物質であるビタミンCは、ほかの抗酸化物質が体内でうまく機能するのに役立つ。たんぱく質の代謝、コラーゲンの合成、神経伝達物質の生成など、体に不可欠ないくつかの身体プロセスで重要な役割を担うこのビタミンは、免疫システム機能を助け、非ヘム鉄(プラントベースの鉄源に見られる)の吸収を助ける働きもあるという。
4. 運動能力の向上に役立つ
ざくろに含まれる抗酸化物質のもう1つのメリットは、運動能力に関するもの。
「一酸化窒素が体内で分解されるのを抗酸化物質が防ぐことで、一酸化窒素の生物学的利用能を高めるのに役立つ可能性があります」とムーンさん。
一酸化窒素によって血管が拡張されることで、運動中の血流が改善される。
「一酸化窒素は、運動中に体が必要とする酸素と栄養素を得るのに役立ちます」とムーンさんは説明する。
5. 炎症の抑制に効く
ウェルネス系商品のレビューサイト「Fin vs Fin」の栄養アドバイザーである登録栄養士のケルシー・ローレンツさんによると、ざくろやざくろジュースに含まれる抗酸化物質のもう1つの健康効果は、体内の炎症を抑えることだという。
「ざくろジュースを定期的に飲むと、インターロイキン-6やC反応性たんぱく質などの炎症マーカーの減少につながることが、研究で判明しています」とローレンツさん。
慢性炎症は心臓病や糖尿病といった病気の前段階であるため、ざくろなど栄養価の高いさまざまな果物をできるだけ食事に取り入れたいもの。
食生活以外にも、ストレス、アルコール摂取、運動不足、自己免疫力の低下など、炎症はさまざまな要因によって起きることも覚えておきたいポイント。
6. 心臓の健康改善につながる
7. カリウムも豊富
「ざくろジュースは、健康な筋肉機能に欠かせない重要な電解質であるカリウムの良い供給源です」と語るムーンさん。
カリウムは、健全な神経機能と心拍数の調節にも必要な栄養素。ざくろジュースには1カップあたり約533mg、ざくろの仮種皮には0.5カップあたり205mgのカリウムが含まれている。
8. 腎臓の健康改善に役立つ
腎臓結石は腎臓にできる小さな石ころのようなもので、アメリカでは男性の約11%、女性の6%が発症するという。治療せずに放っておくと、血尿、激痛、腎臓に重度の合併症を起こす恐れがある。
ある研究では、抗酸化物質である食物性フィトフェノールに石の形成を防ぐ効果があることから、ざくろが腎臓結石の予防と抑制に役立つことが支持されている。
9. 複合糖質が含まれている
ダイエット業界では炭水化物に対して恐怖をあおるような情報が流れているけれど、炭水化物は毎回の食事やおやつで摂取するべき主要栄養素群。
実際、1日に食事から摂取する約半分(人によってはより多く)の量の炭水化物が必要だそう。食事やおやつにざくろやジュースを含めることは、炭水化物のニーズを満たすのに役立つ。
10. 食べる喜びが増す
食事や料理を通して食べ物の感覚を楽しむなど、食べる喜びが健康的な食事や栄養行動を育む可能性のあることが、いくつかの研究で判明している。
艶やかな色にダイナミックな食感と味をもつざくろは、食べても調理しても、感覚的体験に大いに貢献する可能性が高い。
「美しいルビーレッドのざくろをトッピングすれば、いつもの朝食用スムージーボウルから特別な日に作るごちそうやおかずまで、どんな料理でもスペシャル感がアップします」とムーンさん。
さらに、ざくろジュースは加熱しても抗酸化物質が失われないという。
「ざくろジュースは料理好きな方におすすめです。ざくろジュースの抗酸化物質は、コンロで最大2時間煮込んでも失われないくらい強力です」
ざくろの種は果汁よりも優れている?
その他多くの果物や野菜と同様、ざくろジュースには仮種皮と同レベルの食物繊維は含まれていない。というのも、ジュースにする過程で必須栄養素である食物繊維とビタミンCが失われてしまうからだ。
とはいえ、ざくろジュースを飲むだけでも、抗酸化物質、カリウムのような主要な栄養素、そのほかの健康効果をすべて享受できるのでご安心を。
ざくろに副作用はある?
ムーンさんとローレンツさんによると、ざくろを摂取する際に考慮すべき注意点がいくつかあるそう。
「乳児に初めての食べ物を与える場合は、その子供の発達レベルと許容できる食品の種類に注意を払う必要があります」とムーンさんは忠告する。
またざくろジュースはカリウムの良い供給源だけど、ムーンさんは次のように語っている。
「一般的に健康な人にとっては素晴らしいものですが、腎臓の調整機能に問題がある場合は、摂取量に気を付ける必要があります。個人によって状況は異なるので、かかりつけの医者と確認するのが一番です」
ローレンツさんは、ざくろやざくろジュースを大量に摂取すると、「ざくろの糖度が高いため」、下痢など胃腸の不調を引き起こす可能性があると指摘している。
いっぽうで、糖尿病患者のように血糖値に気を付ける必要がある人でもざくろを楽しめるけれど、ざくろの種またはジュースは、たんぱく質や脂肪(ヨーグルトなど)と組み合わせることで、血糖値の安定に役立つそう。
translation : Mutsumi Matsunobu photo : Getty Images
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※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。