おしゃれな人のマイベーシック、マイプレシャス【ミュージシャン/木村カエラ】
AKIRA YAMADA

好きになったらずっと好き。ぶれない軸をもつファッショニスタに共通するのはその一言。自分のものさしをもつあの人は、どこに共感し、どう選び、結果何を愛用しているのか? 「定番=ベーシック」と「特別=プレシャス」 なアイテム、さらにニューアルバム『MAGNETIC』への思いを通して木村カエラさんのスタイルの根源について聞いた。


木村カエラ
AKIRA YAMADA

木村カエラ(@kaela_official)/ミュージシャン

2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビュー、2013年には自身が代表を務める、プライベートレーベルELAを設立。ミュージシャンとしてだけでなく、モデルや絵本作家としてのキャリアも持ち、2020年6月には初の日記エッセイ『NIKKI』も出版。今年は自身初となるビルボードライブツアーを開催したほか、12月には3年5カ月ぶりとなるフルアルバム『MAGNETIC』をリリースする。


おしゃれな人のマイベーシック、マイプレシャス【ミュージシャン/木村カエラ】
nike
AKIRA YAMADA
「ナイキ」の靴下

何年前から履いているかはもう忘れてしまいましたが、この靴下は履き心地が抜群で、すごく楽なんです。毎シーズン、色やデザインの違うものが出ていて、買うつもりがなくてもサイトをチェックするとついつい集めてしまう。もともと収集癖があるタイプなので、今後靴下は全部「ナイキ」でもいいなと思っているくらい。

私にとってのベーシックは「めちゃくちゃいいから、買ってごらん!」と、気軽に周りの人に薦められるもの。日々安心を与えてくれて、かつ私らしいもの。朝起きてコーヒーを飲むくらい、当たり前に近くにあるものがいいなと思って選びました。

kaela kimura
AKIRA YAMADA

特にビビッドカラーがお気に入りなんですが、ちょっと落ち着きたい時はブルー、晴れやか気分の日はイエロー、というようにその日の気分に合わせてカラーセラピーのように選んでいます。

昔から、自分の中で安心できる、できないの判断基準として足元のコンディションがあって。たとえばライブでは、自分が納得できる力加減や心地良さで靴ひもが結べないとステージに出られないくらい。靴と靴下の相性もそうなんですが、靴との隙間、指の伸び方全てにおいて気になってしまう。どれだけ可愛い靴下でも、ツルツル滑るものだったり、肌と密着しないものだったりすると落ち着かない。それくらい、足元のコンディションが満足できないと無理なんですよね。そういう点で、この靴下は私にとって安心を与えてくれる大切な存在です。

靴下って手頃なアイテムではありますが私の中では欠かせないアイテムなので、忙しい日でも自分の靴下だけは乾燥機をかけずにちゃんと干したり。他人の目に止まらないアイテムですが、私の中の愛おしい気持ちが洗濯にも表れていますね(笑)。


おしゃれな人のマイベーシック、マイプレシャス【ミュージシャン/木村カエラ】
コム デ ギャルソン
AKIRA YAMADA
「コム デ ギャルソン」のレザージャケット

寒くなるといつも着ている、「コム デ ギャルソン」のレザージャケットは、『Scratch』というアルバムで初めてチャートの首位を獲った記念に購入したもの。たまたま「コム デ ギャルソン」のお店で出合って、一瞬で目が離せなくなってしまって。「これ(このジャケット)って、私そのものだ。だからきっとおばあちゃんになるまで着るだろうな」と感じたんです。

当時はまだ若かったし高価だったので購入を一瞬ためらったんですが、ここで買わないとすごく後悔する気がして、思い切って買ったのを覚えています。

木村カエラ
AKIRA YAMADA

私、とにかく赤が好きで。赤いものを見るとつい目がいってしまうんですけど、このジャケットはパーツごとに色の異なるレザーが使われていて、背中が赤なんですよ。その赤を背負う感じもいいな、と思って。一見派手なデザインに見えますが、丈もコンパクトだし襟も丸いし、形はクラシックなんですね。品があるのにどこか奇想天外--それは自分の中での表現のテーマでもあって。絶対に外せない部分なんです。

プレシャスというキーワードには、思い出や記憶、未来といった大切なものを一緒に重ねていくものというイメージがあって、まさにこのジャケットにぴったりだと思いました。同じものを誰かが持っていたとしても、きっと全然違うものに見えるだろうし、誰にも真似できない。私だけのものだと思っています。本革なので時の流れとともに若干シルエットも変わってきているし、知らず知らずのうちに傷や汚れがついたりもする。でも、それがいいんですよね。一緒に時を重ねている感じがして。若い頃は、「少し派手すぎる?」とも思ったりしたのですが、今はとてもしっくりきていて、全然派手に感じなくなりました。

最新アルバム『MAGNETIC』を、3年5ヶ月ぶりにリリース
kaela kimura
AKIRA YAMADA

コロナ前はコンスタントに楽曲制作を続けてきて、アウトプットとインプットが追いつかず、「新しいものってなんだろう?」と探すことで精一杯になっていた時期もありました。そのタイミングでパンデミックがやってきて、立ち止まって考える時間ができたんです。ようやく動き出してこのアルバムを作ろうとなった時、初めてアルバム制作をした時のような勢いが戻ってきました。自分の中でアイデアやインスピレーションが満タンで、とても楽しみながら作ることができたんですね。

今回は、“未完成であること”もひとつテーマにしていて。過去数年間は世界的にも、 楽しむことを制限されていた日々でしたよね。でも、自分が「楽しい」「幸せだ」と思えることって、一番大切だと思うんです。そこをまた世の中の人にも伝えられたらいいなって。長くやればやるほど、私も完璧であることを追い求めてしまっていたけど、完璧で美しい状態を魅力的に思う人なんて実はあまりいないと思う。でも、人っていつも何か足りないものを探そうとする。そこが美しいなって。未完成だったり、未熟さだったり、欠けているものがあるほど魅力や美しさが際立つことってあると思うんです。その足りないものを補い合うこともできる。

コロナが始まった当初から、一人でやるよりも、同じように音楽で幸せを届けたいと思っている人と一緒にできたら、その思いが何倍にもなるんじゃないかなって思っていたんです。なのでいくつかの楽曲は、AIちゃんやiriちゃん、GEZANのマヒトくんといったいろいろなジャンルで表現をする方々とコラボレーションして作りました。『MAGNETIC』というタイトルにもあるように、「自分にとっていいものを引き寄せたい」という思いを、アルバムを通して伝えられたらいいなと思っています。

kaela kimura
AKIRA YAMADA

なかでも、AIちゃんと作ったタイトル曲の「MAGETIC feat. AI」のレコーディングでは、二人で歌うことですごく不思議な感覚を体験しました。とにかく楽しくて楽しくて、AIちゃんの声を聴くだけで興奮するし、AIちゃんも私の声を聴いて同じように元気になると言ってくれて。自分の思っていることや考えていることをポジティブに進めていこうとした時、正しい方向を向いていると物事がパチっと一致する時、全てがうまくいく時があるじゃないですか。まさにそんな運命すら感じるほどのインパクトがありましたね。

この何年かでなかなか前を向けなかったり、不安に思う日々を過ごしていた人もいるかもしれない。こういう大変な時にこそ、前向きに考える気持ちのきっかけになれたら。このアルバムが、一人一人のポジティブな気持ちを引き寄せる力になって欲しいと願っています。


magnetic
ビクターエンタテインメント

木村カエラ フルアルバム『MAGNETIC

2022年12月14日(水)発売
通常盤(CDのみ)¥3,300
初回限定盤(CD+Blu-ray)¥5,390
※初回限定盤にはハグレティックマグネット、「KAELA presents "KAELAB" Billboard Live 2022」を収録したBlu-rayディスクが付属。

■公式サイト
http://kaela-web.com/

■公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCKkQ_pc2evg1ugby1z00t_A/


(着用衣装)ジャケット¥59,400、スカート¥37,400/共にヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル(ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション) シューズ¥62,700/ファビオ ルスコーニ(ファビオ ルスコーニ ルミネ有楽町店) その他 スタイリスト私物

photo:AKIRA YAMADA styling:NOBUKO ITO text:MIKIKO ICHITANI