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シャツ¥78,000、Tシャツ¥20,000、パンツ¥68,000/すべて3.1 フィリップ リム(3.1 フィリップ リム ジャパン)、ブーツ¥24,800/ヴァリジスタ
主演として少しだけみんなの世界を変えてあげられたら

ELLE 以前、『あの頃、君を追いかけた』で共演の中田圭祐さんに取材した時に聞いたのですが、台本読みで初めて会ったその日に山田さんが声をかけて、男子チームは一致団結したそうですね。

僕はとにかく脇役が多かったので、「こんな主演がいたらいいなっていう主演になろう」と思っていたんです。本当にいろんな主演の人を見てきて、それぞれの距離感は主演の人が各々考えて作ってるものだと気づきました。ピリッとさせるのか、ほんわかさせるのか、その人次第でコントロールできる。この作品に関していえば、男子チームの仲の良さと女子とのズレみたいなものが面白さのひとつでもあるから、台本読みの段階で、先に男子チームだけ集めて、「楽しくやろう」と声をかけ、「やりたい芝居、やりたいアイデア、やりたいことがあったら、何でも言ってくれ。みんなで作っていこう」と話し合いました。

ELLE 男子チームはこれから注目の若手俳優陣が名を連ねていましたよね。

女子2人(齋藤飛鳥・松本穂香)は人気がとんでもないことになっていますけど、男子チームは「芸人やめて俳優始めました。これが初めての作品です」みたいな人とか、これからという人ばかり。彼らにものびのびやってほしいと思ったし、飛鳥ちゃんも演技はやっていたけど、映画は初めて。「これはかなり任されているな」という自負があったので、臨むにあたり、考えることがたくさん、ありました。

ELLE それこそ主人公の浩介のようにチームを引っ張っていたんですね。

「俺がいると、少しだけ世界を変えられる」って、この映画の台詞でもあるんですが、少しだけみんなの世界を変えてあげられたらと願っていました。俳優って名前と顔が一致しない時期、名前を憶えてもらっていないことや「顔を知らない」って言われるときがいちばん、つらいんです。僕だって、まだまだ。その間がいちばん、悔しいというか苦しい。知られていればいいわけじゃないし、そこが指標ではないですけど、この仕事は観てもらって初めて成立するもの。知ってもらっていた方が映画を観に来る人も、確実に増えますから。

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ELLE 特に主演作ということで、今回はより思い入れが強いのでしょうか。

違わないっちゃ違わないし、違うっちゃ違う。別にどの現場にもかける思い、情熱は一緒だけど、なんか思いが違う、そういう感覚がありました、

ELLE 『デメキン』『虹色デイズ』ときたので、高校生役はもうやらないのかなとさびしく思っていました。

僕も思ってました。もう、ないんじゃないかって。でも、僕より年上の人がまだまだやってるなら、僕もそんなこと、言えないなと(笑)。この作品は10年間のお話でもありますから。

ELLE 制服、似合っていました。まだまだ着られそうです。

僕の学生時代もだいたいあんな感じです。小中高とバカやって、いじられキャラでした。「黙っていればいいのに」ってまず言われるタイプ。まあ、「黙っててもよくない」と言われてないだけ、よかったです(笑)。

役だったら、坊主でも裸でも、なんでもやります
これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『あの頃、君を追いかけた』本予告 10月5日金公開
『あの頃、君を追いかけた』本予告 10月5日金公開 thumnail
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ELLE 今回は準備することが多かったのではないですか。劇中で出てくる武術はどれくらい練習したのでしょう?

武術に関していえば、浩介は独学で学んでるので、うまくちゃダメなんです。指導の先生はとても丁寧に教えてくださったんですが、「すみません。下手に見せたいので、劇中ではむちゃくちゃ下手くそに演じます」って、型だけ覚えさせてもらいました。うまくやったら、きれいに見えるから、映画のためにやっていると思われてしまう。役のためを考えたら、下手くそのままのほうがいい。だから、体も鍛えず、少しだけ体重を落としたんです。見られるために体を作ったと思ったら、観ている方も一気に冷めてしまって、ストーリーに違う要素が入ってしまう。とにかく役を生きるには何がいいのか、徹底的に考えました。

ELLE 坊主になるシーンもありましたね。

坊主にするのも「キャッチ―だな」と思ったんです。「きっと話題になる」と(笑)。まずは観てもらわなきゃダメですから。結果的には3シーンくらいしかなかったんですけど、あのときは「このあと、仕事なくても、いいや」ってくらいの思いでやりました。映画を観て、「かつらっぽい」と思われて、幻滅されるより、やっちゃった方がいい。僕は見かけや見栄えに全くこだわりがないんです。何より、にじみ出るものが大切。僕が映画に賭ける覚悟が浩介が真愛 に寄せる思いとシンクロすればいいと思いました。

ELLE 役なら、なんでもやりますか。これはちょっと、できないなと思うことは?

まったくないです。役だったら、なんでもやります。例えば「ゴキブリを食べろ」って言われたら、ちょっと嫌です。でも、本当にそこが重要なシーンなら、やるかもしれない(笑)。

ELLE 浩介は自宅では全裸ですが、あれも微妙に大変そうですね。

そのせいで動きが小っちゃくなっても面白くないから、僕はすごく自由にのびのびやってました。カメラマンさんがアングルとか探ってくれていましたので、プロのかたにどーんとお任せして(笑)。一応、前貼りみたいなものはしていますが、途中からもうどうでもいい気持ちになってくるんですよね。脱ぐことに関して、僕は抵抗がない方だと思います。古代の人たちはみんな裸じゃんって思っちゃう。

必要としてくれる人が好きです
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ELLE 浩介の恋愛観に関してはどうですか。真愛みたいに男子みんなが憧れるような女の子は好きになりますか。

僕はモテてる人が好きじゃないんです。「僕よりいい人と一緒になるんだろうな」って思っちゃう。「僕のこと、必要ないんじゃないか」って勘ぐってしまう。いちいち悲しみたくないんです。そんなの面倒くさい。必要としてくれる人が好きです。あと、楽しそうにしている子がいいです。

ELLE 「女たるもの負けず嫌いに限る」って劇中、浩介は言ってますけど?

僕の場合は楽しんでる子がすごく好きですね、一緒になっておかしなことをやって、馬鹿笑いしたりしたい。「女の子なんだから、守ってよ」って要求する子に限って、価値観が凝り固まっていて、柔軟性がないように感じる。男女でなく、「人間」として考えられる人がいいです。

ELLE 浩介と真愛は趣味や価値観もかなり隔たりがあります。そういう相手を10年も思うことはできますか。

浩介って「バカと天才は紙一重」の天才なんですよ。でも、みんなにはバカにしか見えない。いろんなことを知ってて、考えているのに、表現するのが下手で、やりたいことが伝わらない、天才の苦労をわかってもらえないタイプだと思う。そんな浩介だからこそ、真愛の人間的魅力を見抜いているんだと思うんです。この人しかいないって。人間を見るタイプだから、真愛を思い続けられたんでしょうね。恋ばかりじゃない。僕にはそう思えました。周りからはバカにしか見えなくていいけど、浩介はいろんなことを見通しているんです。

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©『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ

ELLE 誰よりも深く浩介のことを考えて、演じていたんですね。

詩子に「芸術家と犯罪者を足して割ったような」と言われる浩介ですが、それって天才ってことだと思う。彼の芸術家的独創性っていうのは急に拳法をやりだすとか、そういう面からもわかります。一方、その行動力、そこに至るまでの激情や感情の高ぶりは、普通の人間では持ち合わせられない部分だと思う。裸でいるのも裏を返せば、「服なんてなんで必要なの?」って思ってるかもしれない。世のなかの常識を当たり前だとは決して思っていない。「どうして人間ってこうも周りを気にするんだろう」というような確信をついている子なんだと思うんです。

ELLE そんな自由な浩介をやっている間、自分自身に影響を受けたりしませんでしたか。

僕が浩介を侵食したり、浩介の感覚を自分にしみ込ませたりするうち、僕がやる浩介ができあがればいいなと思っていました。台詞も思えなかったら言わないし、思っちゃったら、台本に書いてないことも言っちゃう。もちろん、作品の流れ、空気は読むし、監督にも観てもらって、調整はするんですけど。いつも言っているのは「役を生きたい」ということ。お芝居をしたくないという思いで、やっています。

今がいちばん、位置的に中途半端(苦笑)
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ELLE ユニークな活躍ぶりですが、どんなふうに作品を選んでいるんですか。

世間的に知名度の高い、人気のある人にはかなわない。今がいちばん、位置的に中途半端です(苦笑)。めちゃめちゃそう思ってます。普通に街に出たら、まだまだ気付かれない。 運よく寿命で死ぬまでくらいにみんなに知ってもらえたらいいな。

ELLE 中村倫也さんが「次は山田さんの時代」って言ってましたよ。

この前、飲んだときもある人が「裕貴は来年くると思う」って言ってくれたみたいで、なんでそんな風に言ってくれるのか、わからないですけど、うれしいですね。倫也さんはめちゃくちゃお芝居も繊細で、すごく頭の切れる人。プライベートが謎で、生活感がまるで見えないんですけど、勝手に大好きです。ずっと作品も観てきて、最近、仲良くしていただいてるんですが、一緒にカラオケに行っても、いきなり歌い出したかと思ったら、楽しそうに見守ってくれたり。「なんなんだ、この人」って、謎は深まるばかりです(笑)。

ELLE 中村さんに限らず、世のなかも注目しています。

注目されている人はほかにもいっぱい、いますよね。もし、そうなら、もうちょっと感じさせてもらいたいなぁ(笑) 。主演といってもこれが3本目だし。例えば、仲がいい吉沢亮、菅田将暉、福士蒼汰とかとご飯やカラオケに行こうってなったら、こっちが気を遣いますから。その3人は何とも思ってないけど、僕がつい「大丈夫? 個室がいいよね?」って、店を探す(笑)。周りの人が気を遣うようになったら、「俺も注目されてるな」って思うかもしれません(笑)。

ELLE 山田さんの気遣いが細やかなんだと思います。

周りに人がいないとやれない職業ですから。映画は一人で作ってないし、みんなが楽しかったらそれが一番。自分は苦しくても、周りの人が楽しかったって言ってる姿を見れればそれで楽しくなれます。

ELLE この作品からは楽しさは伝わってきますが、苦しかったところはありますか。

今からですね。どれだけの人に観てもらえるのか。それが今悩ましいです。2017年、出演映画が12作公開されて、思ったことは、「観てもらわないと意味がない」ってこと。12作も撮影していた2016年がいちばん、大変だったんですけど、どんなに自分が思いを注いでやったとしても、「観てない」って言われたら終わりなんです。それがめちゃくちゃ悔しかった。だから、とにかく現在がいちばん、苦しい。「映画が公開されること、伝わってるのかな?」って心配になってしまうことも多々あります。 撮影のときは苦しいことは一切、ありません。めちゃくちゃ楽しかった。苦しいのは始まる前、いまのこの時期。いちばんぴりぴりする状態です。

モンハンやファイナルファンタジーが大好き
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ELLE 自分の作品を劇場に観に行きますか。

以前はやっていましたが、最近は行かなくなりましたね。僕が決めることじゃないから。僕が判断して、「ああ、よかった」なんて思っても意味ない。人に観てもらってからが本当の勝負。そういう気持ちになって、観に行かなくなりました。

ELLE 昨日は何を観に行ったんですか。

『インクレディブル・ファミリー』です。映画を観ることを仕事にしたくなくて、普段は全然、自分に関係のないものを見ます。

ELLE 『インクレディブル・ファミリー』! やはり普段からつい仕事のことを考えてしまう性質ですか。

普段が勉強です。悲しんだこと、悔しいと思ったこと、笑ってたこと、くだらないことで笑ったこと。日常を観察して、どこまで芝居して、どこまでリアルに持っていくのか。表現に関して、寝るまで、ずっと考えています。だから、ゲームするんですよね。生きてるだけで考えちゃうから、何も考えたくなくなる。

ELLE どういうゲームをするんですか。

モンハンやファイナルファンタジーが大好きです。年末から正月にかけて、実家にも帰らず、初詣はちゃんと行ったけど、その間、誰にも邪魔されず、ひたすらゲームをしていました。FFのXVをやっていたときは主人公の気持ちになりすぎて、先に台詞を言いましたもん。「俺、お前らのこと好きだわ」って口にしたら、あとからゲームから聞こえてきたから、「うわ、すごい俺! どっちが主人公?」ってひとりで盛り上がりました(笑)。


2018年10月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
あの頃、君を追いかけた

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©『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ

台湾の人気作家、ギデンズ・コーが自身の自伝的小説を自ら映画化し、2011年、大ヒットした同名作品の舞台を日本に移しリメイク。男子高校生・水島浩介(山田裕貴)と彼の憧れだった優等生・早瀬真愛(齋藤飛鳥)との長きに渡る恋模様を描く。松本穂香、佐久本宝、國島直希、中田圭祐、遊佐亮介といった旬の若手俳優たちがクラスメイトを演じ、青春の1コマを彩る。
http://anokoro-kimio.jp/


山田裕貴/1990年9月18日生まれ、愛知県出身。「海賊戦隊ゴーカイジャー」(11)で俳優デビューし、テレビドラマ・映画と活躍の場を広げる。昨年は12作の映画が公開された。近作では、映画『あゝ、荒野』(17)『万引き家族』(18)、ドラマでは「ホリデイラブ」、「特捜9」、「健康で文化的な最低限度の生活」に出演。19年前期NHK連続テレビ小説「なつぞら」に出演も決定している。
Instagram: @00_yuki_y
Twitter: @00_yuki_Y


CHECK!!

ELLE Japan公式インスタグラムのIGTVで、山田裕貴さんがナビゲーターを務める特別企画を配信中!

Movie Camera: Tsuyoshi Hasegawa Movie Edit: Nuran Demir


Photo: Go Tanabe Styling: Yushi Oda Hair & Makeup: Suga Nakata Interview & Text: Aki Takayama