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ささきひろこ 食文化やガストロノミー、食のサステナビリティをテーマに活動するジャーナリスト。これまでのネットワークを生かし、食の社会課題解決を目指したソーシャルデザイン活動も展開。2017年、「シェフス フォー ザ ブルー」を設立。農林水産省水産政策審議会特別委員。「日本食普及の親善大使」選考委員。

日本の海から魚が消えている!この危機的状況を救うためシェフたちと立ち上がった

a group of people in a room
新江ノ島水族館で開催した食&トークイベント「Bistroえのすい」。50名のゲストを招き、相模湾の現状と課題を伝えた。

日本の近海から、魚が消え始めていることを知っているだろうか。フードジャーナリストとして長年活動している佐々木ひろこさんは、8年ほど前、漁業を追う企画に携わったのをきっかけにこの事実を知り、猛烈な危機感を覚えて、日本の海を守るため立ち上がった。
「1982年にピークを迎えた日本の海の生産量は、その後減少を続け、当時の3分の1まで減少していました。そのことを私だけでなくシェフも、魚河岸の仲卸人でさえ知らなかったのです」。まずはシェフたちに伝えようと、閉店後の深夜12時から定期的に勉強会を開催したところ、半年ほどしたころには皆、顔が青ざめていた。これが「シェフス フォー ザ ブルー」の始まりだ。
 なぜ魚が減っているのか。その理由は複雑だと佐々木さんは言う。「地域や魚種によってさまざまな理由があります。国土開発により、干潟が減り河川の護岸工事が進んだことで土が痩せ、水が痩せたこと。船の漁獲能力の向上に任せて乱獲したために魚の生育が間に合わなくなったこと、それに加えて温暖化によるこの数年の水温上昇がダメ押しとなっています」
 シェフたちが学ぶだけでなく、食べ手が知り、その意識が変わることが大切、と啓発活動も始めた。「ファーマーズマーケットにフードトラックを出店し、サステナブルな魚介を使った料理提供からスタート。水族館で魚の現状を学びながら行う食イベントや、水産業に関心を持つ学生を集めた人材育成プロジェクトも実施しました」
 現在は東京と京都の40名ほどが会員だが、全国のシェフや流通・加工事業者、漁業者とも連携を広げていくため、2023年11月に「C‐BLUE コミュニティ」を設立した。「海と食文化の未来を考えるラジオ番組の配信、ウェブでのサステナブルな魚種のレシピ紹介や、漁場訪問のフィールドワークなどを開催していきます」

世界に誇る海洋環境を守るためにできること

a group of people sitting in chairs
人材育成プロジェクト「THE BLUE CAMP」。東西で選抜された各8名の学生が、シェフの伴走のもと座学、漁場視察、研修等を経て「海の未来をつくるレストラン」を企画運営。

私たち消費者は何に気をつけ、どんな食選択をすればよいのだろうか。「魚の生育サイクルを守るため、幼魚を買わない、サステナビリティに配慮したレストランを選ぶなどの選択ができるでしょう。“ポケットマルシェ”や“食べチョク”などで信頼できる漁業者さんから直接購入することもできます」
 いちばん大事なのは“食べる人の声”と佐々木さん。「日本の魚の自給率は、かなり低下した現在でも59%。魚は日本人の食の自立に不可欠です。また日本は4本の海流をもち、緯度の広い国土特性から多様な魚種が生息する漁業環境をもっていて、これは世界に誇るべきもの。日本の豊かな魚食文化を未来につなぐために、まずは一人一人が知ること、声を発することが大きな力になります」

text YURICO YOSHINO


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