松山英樹 大逆転優勝は「すごい」の連続だった… 破格6億円の賞金獲得になった背景

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難コースを制した

 米メディアが盛んに話題にしているのは、「マスターズとジェネシス招待の両方で勝利した選手」のリストに松山が加わったことだ。

 これまで両大会を制した選手のリストには、13名の名前が記されていた。古くはサム・スニードやベン・ホーガン、ニック・ファルドやフレッド・カプルスといった懐かしい名前もある。他にも、フィル・ミケルソン、バッバ・ワトソン、ダスティン・ジョンソン、そしてジョン・ラームなど、今ではリブゴルフに移籍してしまった選手の名前もある。

 すでに13人が達成していることなのに何がすごいのかと思われるかもしれないが、マスターズの舞台であるオーガスタ・ナショナルとジェネシス招待の舞台であるリビエラは、どちらも世界屈指の難コースだ。

 その難コースで開催されるマスターズとジェネシス招待で、重いプレッシャーを跳ねのけて勝利することはきわめて難しく、ましてやその両方を制することは偉業と言っても過言ではない。

 実際、ロリー・マキロイ はどうしてもマスターズで勝つことができず、オーガスタ・ナショナルはマキロイにとっては鬼門となりつつある。

 そして、1992年にリビエラでPGAツアーにデビューしたタイガー・ウッズは、通算82勝を挙げながら、どうしてもリビエラでだけは勝利することができないでいる。帝王ジャック・ニクラスも同様だ。

 松山は2021年にマスターズを制し、そして今回、ジェネシス招待を制して、この偉業リストの14人目にその名を刻んだのだ。

賞金が高額化した背景

 米国を拠点とするPGAツアーで外国人選手が勝利を挙げることはいろいろな意味でハードルが高く、言語も文化も大きく異なるアジア出身の選手がPGAツアーで大活躍することはより一層の難行だと思われてきた。

 そんな見方を大きく変えた先人は、PGAツアーで通算8勝を挙げた韓国出身のチェ・キョンジュ(崔京周)だった。だが、松山はチェの記録を超え、アジア勢としては最多となる通算9勝を達成。それもまた「すごい」。

 だが、やっぱり一番すごいのは、松山が手に入れた賞金の額である。

 この大会はPGAツアーが誇る賞金総額2000万ドル(約30億円)のシグネチャー・イベントの一つで、優勝賞金は超破格の400万ドル(約6億円)だ。

 ちなみに、松山が21年マスターズで得た優勝賞金は207万ドル(約3億1000万円)だった。もちろん当時としては破格の優勝賞金だった。だが、リブゴルフという新たなツアーの登場で時代が変わり、リブゴルフ対抗策としてPGAツアーにシグネチャー・イベントなるものが創設され、ビッグな賞金が用意されるようになった。

 その矢先に、不調を絶好調に転じさせ、数々の驚異的数字を記録し、大逆転勝利を挙げて、6億円をゲット。「すごい」以外に言葉が見つからない。

 松山の勝利は、それほど「すごい」勝ちっぷりだった。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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