【ボート】川崎智幸を手本に生きる私

 「ボートレース記者コラム・仕事 賭け事 独り言」

 ボートレースのお盆シリーズは、全国を飛び回っている選手が地元に集まる。私、野白が担当する児島ボート(岡山県倉敷市)は毎年、お盆に「天領杯」が行われる。広島、香川支部からも選手が参戦しているが、大半が地元支部の選手で“ほぼオール岡山”。取材する私にとっても気心の知れた選手ばかり。昨年のグランプリ覇者・茅原悠紀(28)=岡山・99期・A1=がエース機を引き当て優勝して幕を閉じたが、前検日はエース機の茅原に対抗すべく、エンジンの整備やプロペラ調整に追われる選手が多かった。そんな中、低調機を引いた川崎智幸(48)=岡山・60期・A1=はいつも通りクール。淡々と作業しながらも、鋭い眼光で私をとらえた。これはきっとダメ出しのサイン。長年の経験からそう感じた私は、身構えて川崎の言葉を待った。「以前とは何かが違う」。その一言で震え上がって、あらゆるダメ出しを思い描いた。

 「えっ、化粧が濃い?」(前にそこまで頑張る必要あるの?と川崎にメークの頑張りすぎを諭された)

 「それとも髪の毛が重苦しい?」(それは以前に辻栄蔵に指摘されて直した)

 「香水がキツい?」(金田幸子みたいに香水が苦手な選手がいるから、ピットでは控えてるんだけどな)

 私はオロオロするばかり。だが、それら全てを否定して川崎は続ける。「明らかに以前会ったときとは違う」。前回、川崎に会ったのはGWシリーズ(鷲羽杯)。「変わったことといえば、GWから毎日1時間ウオーキングをしていますけど」と答えた。「それだ!!運動をして引き締めた体になっている。腰回りなんか全然違う」。ダメ出しではなく、引き締まった肉体を褒められたのだ。

 実は私、GWに体重が激減し、現在は2キロ戻った状態。それでもスーツはワンサイズダウンしている。GWシリーズ中に「ねぇ、体重が減ったんだよ」と何人もの選手に伝えたが、誰もかまってくれなかった。常に減量と向き合っているボートレーサーにとって、私程度のやせ方では「変化なし」と見なされたのか。それとも私になど「興味なし」、あるいは「やつれ果てた姿に目を背けた」のか…。そのときの川崎も、私に興味がなかった。私のことなど気にも留めていないと思っていたが、今回の指摘に驚いたうえに大喜びしてしまった。とにかく一番悲しいのは無関心。相手をちゃんと見て、しかるべきタイミングで適切な言葉を掛けてほしいのだ。

 40歳になる前、年齢を重ねることを恐れていた私に、川崎はこんな言葉をくれた。「誰でも年は取る。大切なのは年の取り方。年を取って自分の価値が落ちると思っているようではダメ。アンティークになればいい」。先日、40代最後の年齢となった私は、その言葉をかみしめている。若手と並んでも見劣りせず、重厚感のある川崎の姿こそお手本。無理に若作りせず、年相応に磨きを掛けよう。(児島ボート担当・野白由貴子)

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