2022年のアメリカ合衆国中間選挙は、あらゆる意味で政治の舞台へのZ世代の到来を告げるものでした。早い段階での出口調査によると、18歳から29歳までのこの世代の投票率はおよそ27%。1994年以降に行われた中間選挙の中では、2018年時の31%に次いで高い数字です。このことが、共和党による「レッド・ウェーブ(赤は共和党のイメージカラー)」を阻止する一つの要因となり、ミシガン州やウィスコンシン州での接戦でちがいを生んだとされています。

さらに何人ものZ世代が出馬したことも話題に。その一人がイスラム教徒のインド系アメリカ人女性、ナビーラ・サイードさん。23歳にしてイリノイ州第51地区という、白人が大半を占める郊外の地域で現職の共和党員を破って当選しました。2023年1月に州議会で正式に宣誓をすれば、最も若い議員の一人としてイリノイ州の政治を支えることになります。

なぜ大学卒業後わずか1年で公職選挙に立候補したのか、ヒジャブをかぶっての選挙活動はどんな気持ちだったか、そして、どうやってこの画期的な勝利をつかむことができたのか――。サイードさん自身が<コスモポリタン アメリカ版>に語ってくれました。

instagramView full post on Instagram

出馬までの道のり

――ご自身と、地元の町について少し教えてください。

両親はインドのハイデラバード出身で、1980年代にイリノイ州に移住しました。私は、大学に通っていた時期を除いて、生まれてからずっとイリノイ州パラタインに暮らしています。ここで公立学校に通い、コミュニティの中で育ち、今も地元のモスクと関わっています。

その一方で、政治の支援はコミュニティに十分に届いていないと感じていました。たとえば、生殖に関わる女性のための医療を守ることや、銃による暴力について常識的な解決を図ろうという、基本的な価値観が表明されているとは思いませんでした。

――では、なぜ選挙に出ようと決意したのですか?

最初は自分の年齢を考えて、立候補している誰かを支援しようと思っていました。でも、ある友人に「自分が立候補したら? あなたがすればいいじゃない?」と言われたんです。

そうした信頼を誰かから寄せられたことが、出馬を考えるきっかけの一つでした。彼女は私に働きかけ続け、すすめ続け、他の人々からもそうした言葉を聞くようになりました。

母は「あなたが立候補しないなら、誰がこの町で立候補するの? いつになったらもっと効果的なリーダーシップやもっと多様な人々の代表が現れるの?」と言いました。

軽く受け流したときもありましたが、早い段階で家族からのサポートを感じ、決断を下すことにしました。

地域を代表する「若いリーダー」になるために

――若い世代として、どうやって自信をつけましたか?

年齢にかかわらず、誰でも最初は自信を持ちづらいはず。

たとえば選挙活動で戸別訪問をすると、私の年齢を聞く人もいました。私は少し躊躇したり、緊張したりもしましたが、「へえ、それは嬉しいね。あなたみたいに若い人が訪れてくれるなんて素晴らしい」と言ってくれる人も数多くいたんです。若いリーダーが増えていることを喜ぶ多くの年上の人々と出会えたことは、素敵な経験でした。

選挙運動を通して、自分の若さは“障壁”というよりも“強み”だと思うようになりました。私は自分がZ世代であることを誇りに思うし、政治に関心があり、積極的に関わる世代の一員であることも誇りに思います。私たちの世代の投票率の高さが、その証です。

――選挙運動ではどこに注力しましたか?

私たちの選挙運動では、人々と本当のつながりをつくるように努力し、彼らがいる場所に会いにいく、という基本原則に戻りました。さまざまなアドバイスも受けましたが、心から相手の話に耳を傾け、人々の関心に応えることを常に意識していました。

私自身は戸別訪問で2万軒の家を訪問し、チーム全体では5万5,000軒をまわりました。

――選挙運動中、ステレオタイプや偏見を感じたことはありましたか?

よく、「ヒジャブをかぶって選挙活動をするのはどんな気持ちでしたか?」と聞かれます。でも、実際にお会いした人たちが、どれくらい私のヒジャブを気にしていたのかな、と思います。なぜなら(戸別訪問で)私のヒジャブやアイデンティティについて聞く人は少なかったからです。障壁やデメリットになると思う人もいるかもしれませんが、正直なところ、どちらとも感じませんでした。

私のユニークなアイデンティティを考えると、乗り越えなければならないステレオタイプや偏見はありましたが、それは自分たちと必ずしも外見が同じではない候補者を地域から出さないための説得材料として使われているように思います。

マジョリティが若くて、イスラム教徒で、インド系アメリカ人だという地域はありません。そんなことはありえないのですから、それを誰かが立候補しようとするのを思いとどまらせる理由にしてはならないと思います。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「私の地域は、共和党員が勝つと思われていました。白人の郊外の有権者が、“私のような人”に投票することはないと言われていました。もちろん私は、一人でこれを実現したわけではありません。不可能を可能にするために協力してくれたすべてのメンバーに感謝しています。ありがとう」(Twitterより)

誰も無視されない政治へ

――あなたが一番取り組みたい問題は何ですか?

銃による暴力の阻止です。私は小学校3年生のときに行われた、学校での銃乱射に備えた避難訓練をはっきりと覚えています。

戸別訪問をすると、保育所でも銃乱射に備えて避難訓練をしていると聞きます。常識に根ざした銃規制の法制化を進めることが大事だと思います。

――Z世代への誤解や、ご自身の政治への関わり方で人々に理解して欲しいことはありますか?

若い人々であれ、有色人種であれ、あらゆる集団が政治的プロセスから排除されないことが大切だと思います。一つの集団全体を“なまけもの”だと見なしたり、関心を持っていないと言い張って、政治家がその存在を無視するのは間違っています。

そういった(排除のある)政治には違和感を覚えます。私たちは彼らを無視してはいけないし、投票所に足を運ぶ理由を作り、若者とコミュニケーションをとらなくてはいけないのです。前回の選挙では多くの若者が投票所に足を運びましたし、こうした古い考えがなくなることを願っています。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN US