レインボーフラッグといえば、LGBTQ+のコミュニティを表す旗として、SNSなどで目にした人も多いはず。レズビアンもこの中に含まれているのですが、実はレズビアンだけの旗も存在するのだそう! 複数のグループを象徴するものがあり、それぞれ意味が違うバージョンが、数百存在するのだとか。

<コスモポリタン イギリス版>では、中でも注目すべき「レズビアンフラッグ」をセレクトしました。それぞれのフラッグはどのようにできて、どんなことを表すのか、見てみましょう。

一番よく使われているレズビアンフラッグは?

「公式」フラッグというのはないのですが、下のデザインがここ10年ほどで一番よく見られるもの。

 
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色合いの違うピンクと白、赤を使い、レズビアンを表すために広く使われています。ただし、これは「リップスティック」(化粧をするレズビアン)や「フェム」(女性的)なレズビアンだけを表していると感じる人も。

オリジナル・バージョンから進化したと思われるのが次の画像。2010年に作られ、左側に口紅マークがついています。最初のでいいと思う人もいる一方、オリジナルも次のものも「“男性っぽい”レズビアンを排除している」と主張する人もいて、色のバリエーションがさらに増えることに。

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でもレズビアンの中には、オリジナルを基にしたバージョンはすべて反対、という人もいるそう。それは、元々のデザインを作ったナタリー・マックレイが、ブログで人種差別やバイセクシャル嫌いのコメントを書いたといわれるためなのだとか。

最新のレズビアンフラッグは?

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

上のバージョンでは、“男性っぽい”も、トランスジェンダーも、ジェンダー・ノンコンフォーミング(従来の男らしさ、女らしさに当てはまらない人)も含まれています。2019年にTwitterユーザーのエミリー・グウェン氏がデザイン、シェアしてから人気を高めているそう。

一番古いレズビアンフラッグは?

 
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上の旗は最古のレズビアンの旗のひとつで、1999年までさかのぼります。デザインしたのはシスジェンダーの男性で、ゲイのグラフィック・デザイナー、ショーン・キャンベル氏。

この旗には別のデザインも存在しますが、共通するのは黒い逆三角形。第二次世界大戦の時代にナチスがレズビアンの女性に強制的につけさせた目印なのだそう。

三角形の中には諸刃の斧が描かれ、レズビアンのフェミニズムと強さを象徴しています。

紫がよく使われるのはなぜ?

これは、レズビアンが他のレズビアンに合図するために、スミレの花を用いてきたから。

アイコニックなレインボーフラッグにも、レズビアンを表す色として紫が入っています。これはサンフランシスコのアーティストだった故ギルバート・ベイカー氏が1978年にデザインしたもので、7色を使用。

アップデートされたレインボーフラッグではさらに黒と茶色が加わり、肌の色を表して、有色人種と、人種差別との闘いを表します。2017年にフィラデルフィアを拠点とするLGBTQ+活動家たちが採用したのだそう。

昨年また、ダニエル・クエーサーの手で改訂され「前進の旗」と呼ばれるデザインとなりました。クラウドファンディング<Kickstarter>の彼のページによると、追加された5色が表わすのは以下次のとおり。

  • 空色、明るいピンク、白:トランスジェンダーの人々
  • 茶色、黒:社会的に排除されている有色人種の人々
  • 黒:AIDSと共に生きる、あるいは生きていた人々と、それにまつわる偏見

ヨーロッパで最も売れているレズビアンとバイの女性向け雑誌<DIVA>の編集長キャリー・ライエル氏は、LGBTQ+を表す旗についてこう語ります。

「バイセクシャルやトランスジェンダー、インターセックスの人たち、そして有色人種は、LGBTQ+コミュニティの中でも見落とされがちです。非難されたり攻撃されたりすることもあります。LGBTQ+の頭文字に加えられているのに、歓迎されていない、居心地が悪いと感じることも多いんです。これが、自分たちを表す色をもつ理由のひとつ。レインボーフラッグはすばらしいけれど、自分自身の旗もかかげられたら、さらに力づけられるでしょう。最も社会から無視されている人たちが安心できる場所を探し、信頼関係と同朋を見つけることを助けてくれるんです」
Portrait Of Young Lesbian Couple
Brad Gregory//Getty Images

「シンボル」は絶えず変わっていくもの

LGBTQ+の権利の活動家で、ウェブサイト<EveryQueer.com>のライターであるメグ・ケイル氏は、「レインボーフラッグはクィアのシンボルとして世界中で受け入れられていて、偏見を持たない人々や場所を見つける手がかりにもなるんです。レズビアンには長年いろんなバージョンの旗があった。けれど『プライド」の旗やトランスジェンダーの旗のように人気が出たものはありません」とのこと。

「わたしは『リップスティック・レズビアン』の旗がピンクだけのバリエーションを使っているのが嫌。そもそも『リップスティック・レズビアン』という言葉は70年代、80年代にレズ・ポルノをシスジェンダーやストレートの男性に売るためのマーケティングの手段だったんですよ。当時、レズビアンには男性っぽいというイメージや偏見があって、大半が男性の視聴者にウケが悪かった。だからポルノ産業は『リップスティック・レズビアン』という言葉をパッケージに入れて、女らしい女同士のポルノなんだとわかるようにしたんです」
「残念ながらその頃はメディアにレズビアンを代表するような人は皆無に等しかったんです。そのため女性っぽいレズビアンのうちで自分から『リップスティック・レズビアン』と名乗る人も出てきた。90年代と、2000年代の初めには、『リップスティック・レズ・シック』がメディアのトレンドになります。そこでフェミニンな外見・態度のレズビアンは、ジェンダー・ノンコンフォーミングな人たちよりも“ノーマル”であると受け取られ、前面に押しだされるようになったわけです」
Young Lesbian Couple Embracing Against Gray Background
Galina Zhigalova / EyeEm//Getty Images
「わたしは自分のアイデンティティはフェムだと考えます。それは、社会がそうしろというからフェミニンを装っているのではなくて、自分にとってジェンダーの表現が一番自分というものを表していると思うから。リップスティック・レズビアンという用語や、不愉快なピンクだけの旗の歴史をみると、クィアのアイデンティティを覆い隠して、特定のアイデンティティが利用されているように感じるんです」
「シンボルというのは文化や社会の変化とともに拡大し変わっていくものと思います。新しい旗や、よりインクルーシブな旗で、みんながもっと目に立つようになり、そして支持されていると感じるなら、わたしは大賛成」

レズビアンというグループのなかにも、細分化した様々なグループが存在し、主張するところにより個別のフラッグが存在しているとのこと。今後さらに新たなフラッグが生まれていくのかもしれませんね。

この翻訳は、抄訳です。

Translation:Sasaki Noriko (Office Miyazaki Inc.)

COSMOPOLITAN UK