エマ・ワトソンといえば、大ヒット作品『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー、『美女と野獣』のベルなどの人気女優であると同時に、「フェミニスト」としてもその名をとどろかせている。2020年には大手ファッション企業ケリングの取締役にも就任し、平等問題や環境問題などサスティナビリティな社会に向けての発言も増えてきた。彼女の前向きな名言で、力をもらおう。
Photo: Getty Images, Aflo, Courtesy of emmawatson Instagram
「属性ではなく、その人自身を見てお互いを定義することで、私たちはみんなもっと自由になれる」
エマは、2014年、女性の地位向上を目指す国連の組織「UNウィメン」の親善大使に任命。「HeForShe」キャンペーンでのスピーチで、“フェミニズム”という言葉は人々を遠ざける言葉だとして国連からアドバイスを受けていたが、最終的には言葉にすることが正しいことだと判断した。彼女の賢明な活動を表すにふさわしい“ワード”が生まれる日は来るのだろうか?
2014年開催の「HeForShe」のスピーチより
「フェミニズムとは“男性も女性も平等の権利と機会を持つべきという信念、そして性別による政治的、経済的そして社会的平等の理論”という定義」
エマ自身も、幼少期に気づいたら性差別のような体験をしていたことをスピーチで言及した上で、「両親は私が娘として生まれてきたからといって、与える愛情の量が減ったことはありません。学校は、私が女子だからといって制約しませんでした。私に助言してくれた人たちは、私がいつか子どもを産むかもしれないからといって、これ以上何もできないとは考えませんでした。このような人々こそが今日の私を作り上げてくれた、ジェンダー平等の大使なのです」と述べた。「男性も、平等の恩恵を受けているわけではない」と強く主張。
2014年開催の「HeForShe」のスピーチより
「男女共に“男性とはこうであるべき”といった性の固定観念を持たず、自由になれば良い。男性が“自分たちはアグレッシブであるべき”という考え方から解放されれば、男性が自由になる」
2014年、国連のスピーチで、彼女が『HeForShe』と呼ぶ「性差別撤廃運動」は女性の地位を変革するだけでなく、男性のジェンダーの問題解決にもつながるとし、ジェンダー・ステレオタイプによって苦しむ男性についても言及した時の言葉。最近では、フェミニズムを題材にした書籍やジェンダーに関する本が増え、「#MeToo」「#KuToo」などの言葉と共に認知が広まってきた。とはいえ、世間の認識がだんだん深まっているにも関わらず、フェミニズムの認識の違いにまつわる論争はしばらく続きそうだ。
2014年開催の「HeForShe」のスピーチより
「“フェミニズム”という言葉には偏見がある。男女平等を目指す活動、それがHeForShe。私がやらずに誰がやるの?今やらなくてどうするの?今やらないならいつやるの?」
エマが私たちに訴えかける言葉はどれも、あらゆる人に認識を深めて欲しい、という強い想いが感じられ人々にパワーや勇気を与える。女性だけでなく男性も力を合わせて、認識や意識を変えていくことが大切なんだと国連の活動やSNSを通じて説いている。
2014年開催の「HeForShe」のスピーチより
「フェミニズムに関わることで自由になったし、元気になれた。いちばん良かったのは、自分を責めることがなくなったこと」
一年間休業し、自身が主宰するフェミニストのためのブッククラブ「Our Shared Shelf」に全力を注ぎ、自身が親善大使を務める「HeForShe」フェミニズムのキャンペーンに力を入れると宣言。女性たちの持つパワーやすばらしさを一つ示すことができるとしたら?の問いにこう答えた。
『Paper Magazine』2016年2月インタビューより
「誰からも理解されずに孤立していても、自分の道をつき進むベルにとても惹かれたの」
映画『美女と野獣』でフェミニストのDNAを持つプリンセスであるベル役のオファーを受けた背景にも、エマの確固たる意志があった。「ベルが自身で物事を判断することにとても共感します。ベルは、ディズニープリンセスには珍しい、とても勇敢なプリンセスです」。
UK版『タイムアウト』誌2017年のインタビューより
「私は自分の心に従っただけ。聞こえてきた心のささやきに忠実であり続けたい」
『ハリー・ポッター』シリーズに出演後、女優活動を休止し、2009年に名門ブラウン大学に入学したエマ。「キャリアの方向性を決めるのは簡単ではない」と話す。しっかりと自分の心に忠実にあろうとする姿は、まさに芯の強い現代の女性であり、エマ・ワトソンらしい行動と言える。
UK版『タイムアウト』誌2017年のインタビューより
「フェミニストだって胸はあるし、美しく着飾って男性を好きになってもいい。フェミニズムは他の女性たちをたたいたりする棒のようなものではない」
映画『美女と野獣』の公開を控えたエマが、US版『ヴァニティ・フェア』のファッション特集にてノーブラ姿で登場。これを目にした、あるラジオ番組のホストは、「フェミニズム、フェミニズム...報酬のジェンダーギャップ...どうして私は真剣に捉えられないのかしら...フェミニズム...ああ、ここにオッパイがあったわ!」とツイート。これに対し「あの人たちは、私がフェミニストであるなら胸があっちゃいけないって言ってるんです」と、反論。
ロイター通信2017年のインタビューより
フェミニズムとは、女性に選択肢を与えること
「フェミニズム=露出の多い服を着たらいけない」などという概念はあまりにも画一的すぎる。「フェミニズムとは、女性に選択肢を与えるということです。それは自由のため、解放のため、平等のためのものです。それは...本当に、私の胸とどう関係があるのかわかりません」と加えて主張。
ロイター通信2017年のインタビューより
「私は今、”他の人々がどう考えるか”ということを気にしていない。というより、それが私自身の生き方ではない」
エマのフェミニストとしての献身的な活動を、ふさわしくない行動だとして批評するフェミニストが存在する。本来であれば味方であるはずの彼女たちに対して、インタビューで語った。「ここ1年、とても疲れている。常にまわりの人たちが居心地よくいられるかどうか気を遣ってしまうから。目の前のやらなきゃいけないことをやらないといけない毎日でそれはつらいわ」
『美女と野獣』エマ・ワトソン&ダン・スティーヴンス 2017年インタビューより
「自分自身をシングルと呼ばないで、セルフ・パートナードという名をつけたのは、単純な言葉で表せないような感覚に、別の定義付けが必要だと感じたから」
2019年12月号UK版ヴォーグでの「私はいわゆる『独身でも完璧に幸せよ的な主張』を信じていなかった。そんなの綺麗ごとだわってね。でも、時間はかかったけれど、今はシングルでいることを幸せに感じるわ。これを私は『セルフ・パートナード(自分自身が恋人)』と呼んでいるの」という発言に対して、このように補足。また、「私が今まで見たカップルの中で、最も健全な関係の多くは同性カップルでした。なぜなら、彼らは話し合って合意していかなければならないから」とも語った。信頼関係や心地よさを誰とどう築いていくのか――これまでの価値観に縛られていては見つけられないのかもしれない。
『Teen Vogue』2020年4月にてテキサスA&M大学の政治学教授バレリー・ハドソン氏と『性と世界平和』に関して討論会
「トランスジェンダーの人たちは他人に何者かと疑問を抱かれたり、否定されたりせずに彼らの人生を生きる権利がある。トランスジェンダーのフォロワーに分かってほしいのですが、私や世界中の多くの人々は、ありのままのあなたを理解し、敬意を払い、愛しています」
エマは、トランスジェンダーの子供たちのためにチャリティー団体「Mermaids」フェミニスト基金の「Mama Cash」に寄付をし、フォロワーにも呼びかけた。
エマ・ワトソンのツイッター2020年6月11日より
「自分自身について、そして自分が着ている服について向き合えば、あなたはより賢い消費者になれます」
さらに、最近、撮影時に15歳のときに着用したドレスを選んだことを明かした。「私は、特別な服はすべてアーカイブしてカタログ化し、決して捨てたりはしません」。私たちも、もう一度、自分自身のクローゼットを見直してみるべきかもしれない。
今後も、積極的に活動し前向きな発言で、新しい時代を切り開くリーダー、エマ・ワトソンから目が離せない。
UK版『Vogue』2020年7月のインタビューより