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ノウハウ 【2022年10月施行!】労働者協同組合法とはどんな法律?

投稿日:2021年12月14日

【2022年10月施行!】労働者協同組合法とはどんな法律?

【2022年10月施行!】労働者協同組合法とはどんな法律?

2020年に成立した「労働者協同組合法」の施行日が、2022年10月1日に決定されました。労働者協同組合法とはどのような内容の法律であり、どのような背景から誕生した法律なのでしょうか。また、労働者協同組合法が施行されることでどのようなことを実現することができるようになるのでしょうか。

 

本記事では、労働者協同組合法の施行を前に、労働者協同組合法の概要やメリット、労働者協同組合法が抱える問題点などについて解説します。

 

 

 

労働者協同組合法とはどんな法律?

そもそも労働者協同組合法(令和2年法律第78号)とは、どのような内容の法律なのでしょうか。労働者協同組合法の概要を解説します。

 

労働者協同組合とは

労働者協同組合法の前に、本法律が対象としている「労働者協同組合」について解説します。これまで法律で想定されていた雇用関係は、労働者を雇用する「使用者」と使用者に雇用されて労働を提供する「労働者」の2つに分けられたものでした。一方で労働者協同組合法が対象とする労働者協同組合では、労働者と雇用者が明確に区別されることはなく、組合に属する組合員が「出資・経営・労働」のすべての役割を担う組織となっています。

 

労働者協同組合法の制定目的

労働者協同組合法の第1条では、次のように法律の制定目的が示されています。

 

「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。」

 

参照:e-Gov法令検索 



このように、労働者協同組合法は同じ志を抱く人たちが集まり、協同して出資し、経営し、労働する協同労働という仕組みの組織について、組織の設立や運営原則、管理方法などを定めた法律です。労働者協同組合の設立や運営についての法整備を行うことで、さまざまなスタイルの就労機会の創出を促進すること、労働者協同組合を創設することで地域のニーズに合わせたさまざまな事業が行われ、地域社会をより活性化することを目的としています。

 

労働者協同組合法で定められた労働者協同組合の基本原理と要件

労働者協同組合法では、次のように労働者協同組合とは非営利事業を行い、組合員が自ら出資し、運営に携わり、労働する組織であることが示されています。

 

第2条 労働者協同組合(以下「組合」という。)は、法人とする。

第3条 組合は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければならない。

一 組合員が出資すること。

二 その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること。

三 組合員が組合の行う事業に従事すること。

2 組合は、前項に定めるもののほか、次に掲げる要件を備えなければならない。

一 組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。

二 第二十条第一項の規定に基づき、組合員との間で労働契約を締結すること。

三 組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること。

四 組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有すること。

五 剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこと。

3 組合は、営利を目的としてその事業を行ってはならない。

 

労働者協同組合法ができた背景は?

労働者協同組合法は労働者協同組合に法人格を与え、労働者協同組合で働く人たちの労働者としての権利を守る法律となっています。このような労働者協同組合法が制定された背景には、どのような課題があったのでしょうか。

 

従来の法律で対応することができない働き方の多様化

これまでの法律においては、労働者は使用者の下で働くことが前提とされてきました。一方で、介護や福祉の分野などの事業を行う非営利の団体も増え、その組織のなかで働く人も増えてきました。しかし、これらの非営利団体の中には一般の企業のように使用者と労働者という図式が成立しない組織も多くあり、そのような組織で働く人たちはこれまでの労働法制度による保護を受けられないという問題がありました。

 

法人化手続きの煩雑さと運営の難しさ

非営利団体が社会や地域のために自治体の委託事業を引き受ける場合や資格が必要な事業を運営する場合には、法人格を持っている団体であることが求められます。そのため、地域で非営利事業を営む団体は必要に応じてNPO法人や企業組合法人を活用してきました。しかし、これらの法人設立の手続きは非常に煩雑なものであることに加え、これらの法人格を活用することによって生じる様々な問題も課題となっていました。

 

NPO法人として法人格を取得した場合は出資が認められないため、会員から集める会費や事業内容に賛同した企業や個人などからの寄付、国や地方自治体から受けられる補助金、金融機関からの借入金などを資金源として運営することとなります。そのため、NPO法人では安定した活動を続けていくための財政基盤を築くことが難しいという課題がありました。

 

また、企業組合法人として登録せざるを得なかった場合は、非営利事業を行っているにも関わらず外部からは営利団体とみなされてしまうという矛盾が生じます。そのため、社会貢献や地域貢献を理念に労働者協同組合で働く人の想いを尊重することができていませんでした。

 

労働者協同組合法の成立に寄せられる期待

労働者協同組合法は、これらの課題を解消するために制定された法律です。今後、新たに誕生する労働者協同組合に法人格が与えられることで、より地域の需要に合致した事業が誕生し、地域社会の新たな担い手として活躍することが期待されています。

 

労働者協同組合法の成立で実現できることやメリットは?

労働者協同組合法が施行されると具体的にどのようなことが実現できるようになるのでしょうか。労働者協同組合法の成立によって労働者協同組合が得られるメリットと合わせてご紹介します。

 

労働者協同組合法の成立によって実現できること

労働者協同組合法が施行されると、訪問介護や自立支援活動などの介護福祉分野の事業、保育園や学童クラブなどの子育て関連事業、地域で採れた農産物や特産品の加工・販売などの地域おこし事業などが労働者協同組合として活動しやすくなるのではと考えられています。労働者協同組合法の施行により、次のようなことを実現できるようになります。

 

法人設立の手続きが簡便に

これまで、このような非営利事業を行う団体が地域や社会の発展のために活動を発展させようとしたときには、NPO法人や企業組合法人といった法人格を取得する必要があり、それらの取得には複雑な手続きが求められていました。一方で労働者協同組合法では準則主義が採用されており、国や自治体からの許可や認可を受けなくても公証役場で定款の認証を受け、登記手続きを行うことで法人を設立することができるようになります。

 

雇用保険や労災保険の適用が可能に

労働者協同組合法では、労働者協同組合で働く人を労働関連法における労働者としてみなし、万が一、失業した場合や労働中に怪我を負った場合などは雇用保険や労災保険の給付対象とすることが認められました。これは労働協同組合で働く人にとって大きな安心感となるものです。

 

新たな雇用機会の創出

新型コロナウィルスの感染拡大による影響によって企業の経営が厳しさを増す中、雇用に対する不安も広がっています。そのような現在の状況において、労働者協同組合法の成立により新たに誕生する労働者協同組合には、これまでになかった新たな働き方を創り出し、雇用の受け皿としての役割を果たすことも期待されています。

 

労働者協同組合法のメリットとは

 

労働者協同組合法が施行されると、具体的に次のようなメリットが生じると考えられます。

 

幅広い業種で労働者協同組合を設立しやすくなる

労働者協同組合法では、第22条において「組合を設立するには、その組合員になろうとする三人以上の者が発起人となることを要する。」と示されています。そのため意思を同じくする発起人が3人以上集まれば、簡単に組合をつくることができるようになります。

 

また、NPO法人を設立する際には業種に制限がありましたが、労働者協同組合では業種の制限はないため、幅広い事業を行うことが可能です。さらに、先ほど紹介したように法人設立の手続きも簡便化されている点もメリットとなります。

 

多様な働き方が可能になる

労働者協同組合は、組合員が自ら出資し、運営し、労働する組織です。これまでのように雇用主と労働者といった二者の関係性の下で労働を行うわけでなく、自らが出資して経営を行い、労働するという三位一体となった働き方を実現します。

 

そのため、自分の意見を組織の運営に反映しやすくなるため、よりやりがいを持って仕事を進めることやより働きやすい環境を創り出すことが可能になり、これまでの労使関係の下で行われていた働き方とはまた違った働き方が可能になるでしょう。

 

地方自治体と連携した事業を行うことができる

労働者協同組合は非営利事業の団体であり、その性質上、自治体と連携することでより地域を活性化させ、地域ごとのさまざまなニーズに合わせた事業を行うことができるようになります。これまで、法人格を持たない非営利団体は法人として契約を結ぶことができなかったため、自治体と協同した事業を行う場合にも業務委託契約を締結することができませんでした。しかし、労働者協同組合法の成立により労働者協同組合は法人格を有することができるようになります。そのため労働者協同組合は自治体と連携した事業も行いやすくなるのです。

 

労働者協同組合法の課題は?

労働者協同組合法の成立により、法人を設立しやすくなったり、自治体との連携した事業を行いやすくなるというメリットがあります。一方で労働者協同組合法には課題も残されています。

 

労働者協同組合法では、どのような点が懸念されているのでしょうか。

 

労働契約の締結義務に対する抵抗も

労働者協同組合法では、組合と組合員は労働契約を結ぶことが義務付けられています。しかしながら、非営利事業で働く人の中には雇用されて働くということに抵抗を感じている人もおり、労働契約を締結するということに違和感を抱く人も少なからずいるかもしれません。

 

また、現在、非営利事業を営んでいる団体では、事業の収益額についてこだわりを持って運営しているところは多くはありません。そのため、法人として組合を設立した場合、最低賃金の基準を満たすだけの賃金を提供できない団体も多いのではないかといった懸念が生じています。

 

労働契約の締結対象に、組合の業務を執行する組合員が含まれていない

労働者協同組合法では、組合は組合員との間で労働契約を締結しなければならないことが示されています。しかし、以下の組合員に関しては労働契約締結の対象外としています。

 

・組合の業務を執行し、又は理事の職務のみを行う組合員

・監事である組合員

 

従って組合の業務を執行する組合員が労働中に大事故に巻き込まれ負傷した場合など、労働法上の労働者としてみなされない可能性があります。その場合は労災保険の適用対象とならず、治療にかかる費用を自費負担しなければならなくなるなど、組合員が労働者としての十分な保護を受けられない可能性もリスクとしてあります。

 

制度が乱用され、やりがいに頼りすぎた運営が行われる可能性も

労働者協同組合は、組合員が出資・運営・労働する組織です。そのため雇用関係が成立する企業に比べ、自分の意見を反映しやすく、やりがいを感じやすい働き方です。一方で一部の組合員がこの労働者協同組合の組織の在り方を悪用し、個人のやりがいに過剰に頼りすぎるような運営を行うと、働く組合員に過剰労働など、大きな負担を与えてしまう可能性があります。

 

このように労働条件や賃金の面で不当な引き下げを行うことは、組合員として働く人のやりがいを悪用した行為です。これは、働き手としての組合員の利益を損なっているだけでなく、地域の労働環境にも悪い影響を与える可能性もあります。

 

まとめ

 

本記事では、労働者協同組合法とはどんな法律かについて解説していきました。

 

2022年10月から労働者協同組合法が施行されます。労働者協同組合法とは、働く人が自ら出資し、経営も行う協同労働を行う労働者協同組合の設立や運営、管理などを定めた法律です。

 

労働者協同組合法では、労働者協同組合に法人格を与えることや組合員として働く人を労働法上の労働者とみなし、労働者保護の観点から雇用保険や労災保険の対象と認めることなどが示されています。

 

労働者協同組合法の成立で、幅広い業種で労働者協同組合を設立しやすくなり、多様な働き方が可能になるメリットがありますが、一方で組合員の労働条件や賃金の面で不当な引き下げが行われるなど制度が乱用されるリスクもあります。

 

労働者協同組合法の施行に向けて、労働者協同組合の設立を考えている方もいらっしゃと思います。労働者協同組合においても契約の管理は非常に重要となってきます。労働者協同組合の設立の検討と併せて「契約DX」についても検討してみてはいかがでしょうか。

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