〝Fヨコのファーブル〟谷口菜月アナウンサーがリスナー癒やす 自身で取材した植物、昆虫ネタを披露

　ＦＭヨコハマでニュースを担当しているフリーの谷口菜月アナウンサー（３２）が番組内でニュースとともに披露する自身で仕入れてきた農家の野菜、昆虫や環境などのちょっとしたネタがリスナーの反響を呼んでいる。好奇心が尽きない谷口アナは自宅で野菜栽培、昆虫の幼虫などの飼育も始め、局内からは「ファーブル谷口さん」「ベランダは森に」との声も上がる。「リスナーにほっこりしてもらえれば」と話す谷口アナの情熱の源とは―。（三橋正明）

　月曜から木曜の午前中のニュースを担当する谷口アナ。午前６時に始まるＤＪの光邦（４７）が出演する「ちょうどいいラジオ」のニュースコーナーで曜日、時間は定まっていないが、実際に現場に足を運んで取材した話題を紹介する。農家を訪ね、旬の野菜の話もあれば、神奈川県内の博物館の谷口アナが〝博士〟と呼ぶ学芸員から仕入れた知る人ぞ知る昆虫ネタなどを披露する。

　そんな取り組みを始めたきっかけはコロナ禍だった。「２０２０年の５月ごろ、世の中が鬱々（うつうつ）とする状況でニュースはコロナ関連ばかり。『リスナーの気持ちが少しでもほっこり和むようなことはないかな』と考えた」と振り返る。

　取材は休日など時間を見つけては、現場に向かう。頼りは愛車の折りたたみ自転車。「遠い場所には（自転車を専用の袋に入れて電車に乗る）輪行で行きます。だから運動不足の心配はなし」と機動力を発揮する。

　放送で伝えるだけに誤った情報は流せない。「以前勤めた富山のテレビ局ではアナウンサーと報道記者も兼ねていました。富山市議会の政務調査費問題なども担当、市議を連日追いかけました」と語り、培った取材経験が今、生かされている。「でもホタルイカの漁に同行したときは網ですくおうとして、海に２回落ちました」と失敗談も披露した。

　野菜の育て方、虫の飼育など優しい言葉で紹介するだけに子どものリスナーからお礼のファクスが届くことも。「ＳＮＳとか使っていないので反響ははがきかファクスばかりです」と苦笑しながら見せてくれたのは積み上げたはがきの山だった。

　横須賀市の博物館の〝虫博士〟から聞いた「『ミノムシは天敵が来ると糸を垂れ、バンジージャンプをして危険を回避する』と知ったときは自分自身がほっこりしてネタにしました」。番組を進める光邦も谷口アナが何を話すか、知らないままの本番のため、「ファーストリアクションは光邦さん。ゲラゲラ笑われたり、『Ｆヨコのファーブル』と言われたり…」と笑う。

　ヘラクレスオオカブトの幼虫を現在飼育中。ふ化まで２年かかるため、成虫になるのは来年だが、「フンは肥料になるんです。ベランダを埋める野菜の肥料に使って自宅の中で循環しています」。ただ、農家から直接指導を受けても栽培での失敗も。「ミニハクサイが〝ジャンボ〟になったり」。農家に報告すると「当然だよ。続けることが大事」と激励されたという。

　スズムシを育てたときの苦労話もオンエア。「自宅であまりに鳴き声がやかましく、近所迷惑になるのでベランダに出せないから夜は洗面所に移して毎朝、部屋に戻していた。エサも雑食と教えてもらったので一般的なナス、キュウリだけでなくかつお節、パクチーなどもあげていたら思いのほか２カ月も長生きして、うるさいけど愛着がわきました」と明かした。「でも実は産卵していて今年いっぱいふ化したら…。みんなに配ろうかな」とも。

　海岸に出かけると、袋を２つ持って角がとれたシーグラスを拾う。もう一つの袋には拾ったごみを入れるのが習慣。シーグラスは手づくりのランプの材料に。数年の取材で広がったネットワークの〝植物博士〟に教えてもらった食用になる雑草を探すと、「横浜地裁のそばにも生えていた」と新発見を喜ぶ。

　そんな谷口アナがマイクを前に思い続けるのは各地で取材に協力してくれる人への感謝だ。そして「リスナーが『谷口がやってるんだから』と興味を持ってもらえればうれしい。自分の経験を話すことでいろんな広がりが出ると思うんです」と力を込めた。

　◆谷口菜月（たにぐち・なつき）　１９９１年４月８日生まれ、大阪府出身。大阪大外国語学部卒業後、富山・チューリップテレビに入社、アナウンサー・報道記者として４年間勤務。２０１８年圭三プロダクションに所属し、１９年９月からＦＭヨコハマでアナウンサーとして月～木曜午前中のニュースを担当、「ちょうどいいラジオ」（平日午前６時）にニュースアナウンサーとして出演中。ほかにナレーションやＭＣ、宝塚歌劇全国ツアー公演のトップスターインタビューも。昨年から手話の勉強をスタート、最近は短歌の勉強も始め、「そのうち放送で一首詠みたい」とも。