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韓国統一省改編 南北交流断絶が心配だ

2023年9月6日 05時05分 (9月6日 05時05分更新)
 韓国政府が統一省の組織改編を閣議決定した。北朝鮮との交流業務を担当する部署を大幅に縮小する内容で、近く施行する。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は北朝鮮の人権問題に重点を置く方針を示しているが、長く途絶えている南北交流を復活させる努力も惜しんではならない。
 前大統領の文在寅(ムンジェイン)氏は北朝鮮への融和政策を進め、2018年に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記との間で開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光の正常化、離散家族問題の解決に向けた人道的協力の強化など経済から人的交流まで多分野で合意した。
 しかし、北朝鮮は19年2月にベトナム・ハノイで行われた正恩氏とトランプ前米大統領との米朝会談が決裂すると、韓国との交流・協力を中断。20年6月には南北交流の象徴的事業だった南北共同連絡事務所を爆破した。
 北朝鮮への圧力を重視する尹氏は7月、統一省がこれまで「北朝鮮支援省」の役割を果たしてきたと批判して改革を要求。新たな統一相に、対北朝鮮強硬派で知られる国際政治学者の金暎浩(キムヨンホ)誠信女子大教授=写真、聯合・共同=を抜てきした。
 今回の組織改編もこの流れに沿って、交流協力局や南北会談本部など南北交流・協力に関する4部署を一つに統合する。
 さらに韓国政府は、24年度の統一省予算案を前年度比22・7%減の1兆1087億ウォン(約1220億円)とした。減額分はすべて協力事業の財源となる南北協力基金から削られた。
 統一省高官は、南北対話が途絶えている現状を踏まえた措置であり「対話の放棄という指摘は当たらない」と強調するが、一連の対応に、南北対話への積極的な姿勢は感じられない。
 北朝鮮が韓国を「敵」と決め付け、対決姿勢を鮮明にする状況では南北交流・協力が極めて困難なことは事実だとしても、尹政権は南北融和に向けて、対話を粘り強く働きかけるべきではないか。
 一方、今回の組織改編では、韓国政府が消極的だった自国の拉致被害者対策を担当する統一相直轄の組織を新設するという。日本人拉致問題の解決にも資することが期待される。日本政府は日韓関係が良好な今こそ、さらに対話を進め、懸案解決に努めてほしい。

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