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【富山】黒部 イヌワシ聖地に 温泉街有志ら 保護プロジェクト

2023年5月4日 05時05分 (5月4日 10時16分更新)
この30〜40年で大きく数を減らしたイヌワシの幼鳥=2009年12月、富山県内で(小沢俊樹・イヌワシ保護協会会長提供)

この30〜40年で大きく数を減らしたイヌワシの幼鳥=2009年12月、富山県内で(小沢俊樹・イヌワシ保護協会会長提供)

  • この30〜40年で大きく数を減らしたイヌワシの幼鳥=2009年12月、富山県内で(小沢俊樹・イヌワシ保護協会会長提供)
  • イヌワシの保護活動に取り組むイヌワシ保護協会の小沢俊樹会長=富山県内で(本人提供)
  • イヌワシが飛ぶ環境を次の100年も守っていきたいと話す中島ルミ子さん=富山県黒部市のホテル黒部で

国内初、民有林で狩り場整備へ

 一般社団法人イヌワシ保護協会(富山市)と富山県黒部市宇奈月温泉の有志らは、餌や狩り場の減少で減り続けるイヌワシの「聖地」づくりに取り組む。黒部川流域内の民有林でイヌワシと、餌となる野生動物の状況を調査し、2025年ごろから狩り場を整備する方針。協会によると、イヌワシ保護を目的に民有林で狩り場を整備するのは国内初という。 (松本芳孝)
 イヌワシは翼を広げると二メートルを超える日本最大級の猛きん類。巨体のため、ある程度、開けた狩り場を必要とする。戦後の国による拡大造林政策以降、化石エネルギー利用が進み、森林資源があまり使われなくなった。里山に人の手が入ることが少なくなって荒廃し、餌となる動物や狩り場が減少。イヌワシも大きく数を減らした。
 狩り場整備は間伐などをして、里山に開けた場所をつくる。環境省などと協会の小沢俊樹会長(52)らが連携して、国有林で実施した例はある。
 小沢会長によると、富山県では一九九一年に二十一〜三十ペアがいると推測されていたが、二〇〇〇年ごろに確認したのは十五ペア、一五年には五ペアに減った。イヌワシを県鳥にしている石川県でも八〇年代半ばに二十二ペアいたが、現在は四ペアに減った。
 黒部川流域には今も二ペアが確認されているため、小沢会長は黒部峡谷への入り口になる宇奈月温泉で協力者を探した。昨年七月、知人を介してホテル黒部の女将(おかみ)、中島ルミ子さん(52)と知り合った。開湯百周年を迎える温泉で、次の百年を考えていた中島さんは「イヌワシがいる環境を守りたい」と温泉街の有志らに声をかけ、小沢会長から保護の趣旨やイヌワシの生態について説明を受けた。
 有志らは、百周年事業の一環として環境教育の普及や、イヌワシの営巣環境保護のため、立ち入り禁止箇所に出入りしないよう呼びかける団体「黒部イヌワシを見守る会」を立ち上げることを決めた。月内に設立総会を開くという。
 小沢会長は「イヌワシの声を聞きながら、狩り場を整備し、観察会なども開いて多くの人にイヌワシに関心を持ち、もっと身近な存在に感じてもらいたい」と願う。「黒部を第一弾として他の地域でも狩り場整備をしたい」とも語った。
 中島さんは「イヌワシを観光資源にするのではなく、生態系の頂点にイヌワシが飛ぶ環境を誇れる温泉街にし、次代の子どもたちにも伝えていきたい」と考えている。

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