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競走馬は何をいつまで覚えているか【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2022年6月24日 06時00分

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横山武とエフフォーリア

横山武とエフフォーリア

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 宝塚記念を検討する上で、エフフォーリアの大阪杯9着をどう総括するかというのは重要な論点のひとつだろう。阪神や長距離輸送に何か決定的な弱点を抱えていたのかもしれないが、なにぶん1戦大敗しただけ。右回りなら中山で崩れておらず、阪神は内回りでも中山よりは広いコースで紛れが起こりにくい。阪神に特有の事情があるのかどうかは、正直なところやってみないと分からない。
 それよりも大阪杯の後、エフフォーリアの右眼瞼(がんけん)が腫れたということが分かっている。ゲート内で暴れて強打したとみられる。昨秋の秋華賞でソダシがゲート内で口腔内を負傷したとみられる事案もあったが、エフフォーリアの凡走も、ひとまずこちらのけがの影響も小さくはなかっただろう。
 であったとして考えておかねばならないのは、大阪杯のゲート内で、かなり強度のストレスにさらされたに違いないということだ。宝塚記念は同じ阪神。スタートの位置は200メートルずれるが、似たような動線で、似たようなところに据えられたゲートに入る。
 サラブレッドは1年以上、記憶を保持しているという報告がたくさんある。3カ月とたたない過去の、いやな記憶はエフフォーリアにも残っているだろう。
 一方でサラブレッドの長期記憶についての報告は音にリンクしたものが目立つ。1年休養していた馬が、再入厩しても担当厩務員を足音で聞き分けるなどの話は最たるものだ。
 宝塚記念を巡る、音の環境はどうだろうか?大阪杯は入場人員をまだかなり制限していた時で8477人。宝塚記念当日の阪神は5万人を超えるキャパを許容して人を入れる予定だ。時節柄、あからさまに騒々しくなるということはないにしても、発走直前の、スタンドからの音の環境は、大阪杯とはかなり異なるだろう。幸い、ファンファーレも宝塚記念は年に一度の特別な調べが奏でられる。
 同じ競馬場の似た場所に据えられたゲートでも、発走直前にエフフォーリアを取り巻く音の環境は、大阪杯とそれなりに異なるとみなせる可能性はある。大阪杯の嫌な記憶が宝塚記念にはダイレクトに影響してこない可能性は、いくらか残っている。

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