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漫画編集者 集英社 頼富亮典さん(「雑誌編集者」関連)

2020年2月22日 00時00分 (10月6日 13時13分更新)

文字の書体や大きさの指定作業をする頼富さん。デスクにはフィギュアや風邪薬も置いてあった=東京都千代田区の集英社で

 子どものころ夢中になった漫画は大人になっても忘れられないもの。中学生記者が、「ONE PIECE」などの世界的な人気作品が連載されている集英社の少年漫画誌「週刊少年ジャンプ」編集部を訪れ、若手編集者の頼富亮典さん(28)に、お話を聞きました。

作者と夢追う「第一読者」

 頼富さんは、現在連載中の「僕のヒーローアカデミア」を担当しています。世界の人口の八割が“個性”と呼ばれる超常能力を持つ社会を舞台に、主人公の“無個性”の少年が「最高のヒーロー」を目指して成長する物語。二〇一六年からアニメ化もされています。
 この作品の場合、毎回、内容を作者の堀越耕平さんとしっかり打ち合わせ。「ネーム」という大まかな下描きを確認し、面白さや人物の言動に不自然さはないかなど「第一読者としてストレートに意見を伝えます」。その後、原稿を描いてもらい、文字の書体や大きさを決めて印刷会社に発注します。
 締め切り直前は漫画家をなんとかせかし、「本当にぎりぎりの時は原稿を持って印刷会社に飛び込み、最後の校正の『校了』をその場でしたことも」と苦笑い。奮闘の結晶である原稿に、記者たちは見入ります。

大ヒット目標 新人発掘も

 もう一つの重要な仕事は、新人を発掘し新連載を立ち上げること。同誌の特徴です。持ち込みや誌面上の漫画賞、ネット上の投稿サイトで日々寄せられる膨大な数の作品から、「いつか」世界中の人をとりこにする才能を探します。頼富さんが重視するのは、今は不完全でも、物語や絵、キャラクターなど「何か一つでも突き抜けているか」。「ジャンプで連載することは、ONE PIECEと競うということ。新人はとにかく目立たないと」
 子どものころからジャンプの作品が大好き。大学院で理系分野の研究をしましたが、「記念受験」した集英社に採用。入社後は、「編集者の裁量の大きさに驚いた」と言います。
 作品がアニメ・実写化などされる場合は、作者の意向や作品の世界観を守る意味もあり、その制作にも関わります。「憧れの漫画家と一緒に仕事ができ、自分のアイデアが作品に反映されるのは、うれしくやりがいがある」と頼富さん。現在の目標は「単行本初版百万部の大ヒット作品をつくる」。読者を魅了する作品の陰には、漫画家の一番そばで一緒に夢を追い掛ける編集者の姿がありました。(構成・辻紗貴子)
<これまでの歩み>
2015年 アスパラガスの耐病性などを研究し大学院を修了。集英社に入社し、「週刊少年ジャンプ」編集部に配属。連載中だった「斉木楠雄のΨ難」を18年の完結まで担当
  16年 「トリコ」を完結まで担当
  17年 「僕のヒーローアカデミア」の担当に
〈頼富さんから〉
興味のあることに打ち込み、好奇心旺盛でいることが大切です。僕は学生時代は理系の研究をしていて、漫画にその知識が役立ったことも。編集者の引き出しが多いのは作家にとっても良いことでは。
〈2019年2月10日掲載〉

編集者の頼富亮典さんを取材する中学生記者たち

担当する作品「僕のヒーローアカデミア」第1話の原稿

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