寺山修司が「美しい」と評した未勝利戦を走る3歳馬 現在では『遅咲きの馬』を救うルートがある
2021年8月13日 06時00分
◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
今週から夏の小倉の後半戦が始まる。3歳未勝利馬にとっては、勝ち上がりへのタイムリミットが迫る。かつて勝ち上がりのリミットだった秋の福島開催に最終競走まで組まれた未勝利戦を走る3歳馬(当時の馬齢表記では4歳)を、寺山修司は「美しい」と評した。そのエッセーを読んだ中学時代の記者は、その美しさの源泉は「必死さとはかなさ」だと読み取った。
単に地力が足りないのであればあきらめもつくが、秘めたる素質を結果に結び付けられず、この季節を迎えてしまう3歳馬も多い。そうした馬は育成段階や入厩初期に、けがや、その他の整形外科疾患に見舞われたためにデビューが遅れたというケースが多い。しばしば耳にするのが「OCD(離断性骨軟骨症)」だ。
骨軟骨片が本来の位置からはがれてしまう病気で飛節で頻発する。発育過程で関節の軟骨と骨の成長具合にアンバランスが生じると、本来パズルのピースのようにかみ合っている軟骨と骨の、かみ合うべきところの形が合わなくなる。無理な力がかかるようになるため、その部分の力学が破綻してはがれてしまう。
病気の程度はさまざまで、エックス線では離断した骨軟骨片が観察されるのに跛行がないような場合は治療も必要ない。一方、跛行や腫れがあるからエックス線を撮ったら「やっぱり」というわかりやすいケースもある。やっかいなのは、跛行するのにエックス線で見つからないパターン。関節を診断目的で麻酔したり、関節鏡で見て初めて「なるほど」ということも。臨床獣医師の腕も試される。
跛行する馬では骨軟骨片を取り除く手術が可能で、早期発見なら予後は良好。しかし、前述のようなやっかいなケースでは早期発見というのも難しく、デビューが遅れるという不運な馬はたくさんいる。
幸い、現在では地方転出後に一定の成績を残せば再転入が可能だ。こうしたケースで再転入後、数戦して突然走りだす馬がたまにいる。今週の小倉でこのケースにばっちりはまりそうな穴馬が1頭。詳細は週末の紙面を見ていただきたい。
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