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「動く不動産業」ブラジル国籍・浜北の日系3世

2020年11月16日 05時00分 (11月16日 05時03分更新)
「誠意をもった仕事で、外国人への偏見を無くしたい」と話す久手堅優李夏さん=浜松市浜北区で

「誠意をもった仕事で、外国人への偏見を無くしたい」と話す久手堅優李夏さん=浜松市浜北区で

 四カ国語を使って「動く不動産業」をする女性がいる。ブラジル国籍の久手堅優李夏(くでけんゆりか)さん(27)=浜松市浜北区=は、在日外国人を対象にした不動産業を営む。通常の不動産は顧客が店に来て契約するが、久手堅さんは店を構えずに契約時は顧客の家に出向く。「工場勤務のお客さんにとって時間は貴重。お客さんが大切だから私が動く」。仕事の先に、ブラジル人と日本人の相互理解を目指す。 (高島碧)
 久手堅さんは日系三世で、八歳でブラジル・サンパウロから掛川市に来た。ポルトガル語、スペイン語、英語、日本語を話すことができ、顧客はブラジル、ペルー、フィリピン国籍が多い。四年間勤めた外国人派遣会社で培った人脈を生かそうと昨年四月、不動産会社で働き始めた。年間三百件の契約をとる実績を上げ、今年七月に独立。不動産業「リマックス」のフランチャイズ店「ブルメックス」を浜北区に開業した。
 オフィスは他の会社とシェアし、集客は口コミに頼る。契約後も足を使って顧客の生活に寄り添うのが久手堅さんのやり方だ。
 昨年十一月、午前四時に久手堅さんの携帯電話が鳴った。紹介したアパートで一人暮らしするブラジル籍の女性から「仕事から帰ってきたら鍵が開けられなくなっている」と連絡があった。鍵穴をのりでふさがれていた。すぐ車で掛川市の女性宅に駆けつけ、警察を呼び、業者に連絡して鍵を交換してもらった。同じアパートの住人による嫌がらせだった。女性がアパートの管理会社に電話したところ「警察に連絡して」と言われて困り切っていた。
 「日本語がつたない外国人は、誰に助けを求めていいか分からない。だからこそ、お客さんと友達になる。それが、また次のお客さんを呼んでくれる」。全国の物件を扱うため、浜松市に住んでいた顧客が大分市に引っ越す時、「あなたと契約したい」と言われ、大分空港まで出向いて契約書を交わしたこともある。
 久手堅さんが所属する浜北商工会の上野達也・経営支援課長(55)は「スピード感と勝負勘、勢いがある。定住外国人を増やし、多文化共生の機会もつくってもらっている」と話す。久手堅さんは「今も『外国人は信用できない』という風潮がある。それでも、誠実な仕事を見せることでその壁を無くしたい」と語る。

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