- 2016 10/20
- 私の好きな中公新書3冊
宇野重規『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』
原彬久『戦後史のなかの日本社会党 その理想主義とは何であったのか』
猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』
『保守主義とは何か』は、進歩主義に歯止めをかけるべく使命を果たしてきた保守主義が、進歩の概念が揺らぐとともに迷子になっていることを簡明な文章で指摘。本書が唱える開かれた保守主義というものが仮に登場するならば、冷戦後に敵を失って目的の曖昧なまま肥大化してしまった保守を健全に分断する試みとなるかもしれない。
『戦後史のなかの日本社会党』では、GHQに「与えられた」範囲内の自由で戦後再出発した日本社会党が、内なる相克や保守政党との対立を経て55年体制を裏から規定してきたさまが描かれている。左翼陣営の内ゲバがイデオロギーの路線対立と連関して行われたために、独特の安保観、憲法観を形成するに至ったという。力をめぐる争いとイデオロギー闘争とが不可分であるというのは、外なる敵である自民党の存在ゆえかもしれず、前掲書と鏡像のように合わせ読みしても面白い。
大きな物語、大きな敵を仮想して、戦いを挑んできた左派と右派双方にいったん立ち止まって読むことをお勧めしたいのは、自由や平等、人的資本という基本的な概念から説き起こす経済書、『戦後世界経済史』。経済をめぐる歴史が政治史とも連関していることを教えてくれ、また不確実な世界に直面したときに道標となるような思考の枠組みの作り方を教えてくれる本でもある。