JR広島駅南口の待ち合わせ場所として親しまれている噴水。再整備事業に伴い、現在の場所からは姿を消す見通し

 JR広島駅南口(広島市南区)で30年にわたり、待ち合わせ場所として親しまれている噴水が、市の南口再整備事業に伴い、現在地からの撤去を余儀なくされている。レイアウト案では現在地がバスの乗降場エリアにかかる見通し。市は南口広場内での存続か、公共施設への移転などを検討している。

【広島再開発マップ】はこちら

 ステンレススチール製の半球が二つ並ぶ噴水は、高さ約6・4メートル。水がたまる泉部分は縦約7メートル、横約10メートルで、周囲のベンチに座って憩う市民も多い。友人とベンチで歓談していた中区のマッサージ師神田智子さん(61)は「待ち合わせといえばこの噴水。駅前が変わるのは歓迎するけれど、この場所からなくなるのは寂しいですね」と話す。

 噴水は、福山市出身の美術作家高橋秀さん(89)が手掛けた「翔べ!未来に向けて」。市都市機能調整部によると、1988年の南口広場の完成に合わせてモニュメントの制作コンペを行い、3点から高橋さんの作品を選んだ。宇宙船のイメージと無限大を意味する「∞」を合体させたデザインで、89年3月、6千万円をかけて市が設置した。

 南口広場の再整備計画では、広島電鉄の駅前大橋線が新たな駅ビル2階に乗り入れ、バスやタクシー、マイカーの乗降場などのレイアウトが変わる。噴水がある広場西側は、拡大するバス乗降場のエリアにかかる見通し。

 市は南口広場に残せるかを検討しつつ、市の公共施設への移設先も探している。沢裕二・広島駅周辺地区整備担当課長は「30年以上も市の玄関口で親しまれた場所。丁寧に対応を考えたい」と話す。

 高橋さん主宰の「秀アートスタジオ」(倉敷市)は「平成の初めから広島駅を見つめ続けてきた作品。作品が生きる環境で残してもらい、未来につなげてほしい」としている。(加納亜弥)