今年春に始まるNHK朝の連続テレビ小説は、「日本の植物分類学の父」と呼ばれる牧野富太郎(18621957年)をモデルにした物語だ。植物一筋の生涯を送った牧野は多くの新種を発見し、1500以上の学名を付けた。集めた標本は約40万点。創刊した「植物研究雑誌」は現在も発行が続く。国内各地を歩き、現在の北広島、安芸太田両町の芸北地域も訪ねた。同地域での牧野の足跡と、牧野に関わる自治体などの取り組みを紹介する。(与倉康広)

宿帳にメモ、1930年代に4回訪問

 牧野は少なくとも4回、芸北地域を訪れたことが当時の旅館の宿帳などから判明している。

 1930年には北広島、安芸太田両町にまたがる三段峡などを回った。31年秋には三段峡北側にかつてあった旅館「峡北館」を利用。宿帳に「峡中を 二日がかりで 観尽(みつ)くせり」とのメモを残し、2日間かけて三段峡の自然観察をしたことが分かる。

 牧野は植物採取をするときには作業着ではなく、植物と真剣に向き合うためワイシャツ姿だったといわれる。