名優・津川雅彦さんが次代に託した思い

日本を代表する名優・津川雅彦さんが8月4日にお亡くなりになりました。津川さんは映画界の父と称されたマキノ省三を祖父に持つ映画一家で生まれ育ち、「狂った果実」や「マルサの女」など伊丹十三監督の作品などに出演。「寝ずの番」など監督としても活躍し、多くの人々に生きる力を与えてくれました。心からご冥福をお祈りし、津川さんが『致知』にご登場された際の対談記事の一部を配信させていただきます。(※対談のお相手は、筑波大学名誉教授の村上和雄さんです)

日本人が少しでも誇り高くなれるように

(村上)
きょうは話を聞いていて、ものすごいエネルギーが感じられました。そのパワーの源は何だと思われますか。74歳というご年齢にしては、元気とやる気に満ち溢れている。

(津川)
先生、僕この間数えてみたら、これまでに13回入院していて、そのうち手術を10回していました。

(村上)
そんなに。

(津川)
心筋梗塞をはじめ、肺や頸椎等々いろんな病気をして、そのたびに入院し、手術をしてるんですが、どうやらそれが元気のもとではないかと(笑)。病院に行くたびに元気になって帰ってくるんですね。だから僕は入院も手術も大好きなんですよ。

(村上)
何か形として残したいという思いはありませんか。自分の生きた証のようなものを。

(津川)
残したいとは思わないですね。そもそも残すだけの力もない。その代わり人に影響を与えたいというか……。

(村上)
思いを残したい。

(津川)
そうですね。だから講演をしている時というのはとても楽しいですね。少しでも人に喜んでもらえているかなと感じられる場ですよね。ましてやきょうみたいに先生のような素敵な方に自分の思いを聞いていただいて、受け止めてもらっている時というのはとても充実して嬉しい時間です。

どうせ老人は早く死ぬほうがいいと言われている人口過多の地球ですから(笑)、元気なうちは一期一会を大切にし、きょう一日の命を充実させて、少しでも人のためにお役に立てることができればと思っています。

(村上)
そうやって、世のため人のために役立ちたいという、さらには人を喜ばせたいというサービス精神が津川さんを元気にしているんじゃないでしょうか。昨年の夏に制作された拉致問題啓発のポスターに津川さんが出ておられますが、それもお役に立ちたいという思いからですか。

(津川)
自分の娘も誘拐されている経験があるので、拉致問題を我がことのように思える人間だと思って参加したので、「親の愛は、世界を動かす。拉致問題は私達すべての問題です」というメッセージを入れてもらったんです。
 
子供を拉致されるということは非常に理不尽なことだし、家族が生きていながら会うことができないというのは本当に悲しい。今回、横田ご夫妻がお孫さんにあたるキム・ヘギョンさんと会われたのは、とてもよかったと思ってます。

(村上)
僕は以前、横田早紀江さんに会って感じたのは、命を懸けても娘を取り戻したいという親心と、この事件をきっかけに日本という国を凜とした国にしたいという強い思いですね。

(津川)
凜とした国というのは、いいですね。

(村上)
単に親の気持ちだけじゃなくて、外国人に国民を拉致されたままで、なめられるような国ではいけないと。立派ですよね。私は感動しました。

(津川)
いまの日本はとても凜としているとは言えないし、日本人が少しでも誇り高くなれるように、残りの人生で力を尽くしたいです。

(本記事は『致知』2014年6月号 特集「長の一念」より一部を抜粋・編集したものです。)

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◇津川雅彦
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つがわ・まさひこ――昭和15年京都府生まれ。31年に『狂った果実』でデビュー。演技派俳優として数々の賞を受賞。監督として『寝ずの番』を含めて三作を指揮。また、俳優の傍ら本物志向の玩具を扱うグランパパを設立、現在名誉顧問を務める。著書に『恋娘』(主婦の友社)がある。平成30年8月4日逝去。

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