周囲の環境に溶けこむコウイカ。タイ周辺の海で撮影。
Gerard Soury/Getty
- リソースをめぐる競争と、容赦ない気候に満ちた自然界は、動物にとって厳しいものだ。
- 動物たちは生き延びるために、驚くべき適応を遂げてきた。
- たとえばオカピは、脚にある臭腺でなわばりをマーキングする。
体を凍らせるアメリカアカガエル
クロアチア、メドベドニツァ山の森にいるアカガエル科のカエル(記事中のアメリカアカガエルとは別種)。
Nikola Solic
アラスカに生息するアメリカアカガエルの最大60%は、冬を生き延びるために、体をかちかちに凍らせる。さらに、呼吸や心臓の鼓動も停止する。そのおかげで、気温が華氏マイナス80度(摂氏マイナス62度)まで下がる環境を生き延びることができる。春になると、解凍される。
なかば冷凍された状態になるため、アメリカアカガエルは、内臓や組織に高濃度(通常の最大10倍)のブドウ糖をためこむ。この溶けた糖が「凍結防止剤」として機能し、細胞が縮んだり死んだりするのを防いでいる。
Sources: National Park Service, The Society for Integrative & Comparative Biology
水をまったく飲まずに生き延びるカンガルーネズミ
夜の砂漠で耳をすませて、捕食者を警戒するカンガルーネズミ。
Andy Teucher/Getty
北アメリカ西部に生息するカンガルーネズミは、水を少しも飲まずに砂漠で生き延びられるように適応している。水を飲まなくても、餌として食べる種子から、必要なすべての水分を摂取するのだ。
さらに、この風変わりな動物は、人間の90倍とされる、信じられないほど鋭い聴覚を持っている。また、頭胴長9~17センチメートルと小さいのに、最大約2.7メートルの高さまでジャンプできる。そのおかげで、捕食者からうまく逃げることができる。
Source: Arizona-Sonora Desert Museum
血中に「凍結防止」たんぱく質を持つ南極の魚
一部の魚は、血液の凍結を防ぐ仕組みを備えている。
David Loh/Reuters
南極大陸を囲む、凍てつく南極海で生き延びるノトテニア亜目に属する5つの科の魚は、「凍結防止」たんぱく質を自力でつくっている。このたんぱく質が血中の氷の結晶と結合し、体が凍りついてしまうのを防いでいる。こうした見事な適応は、この種類の魚が、南極周辺のバイオマスの90%を占めている理由の一端を説明している。
Source: National Science Foundation
粘液の「家」をつくって乾季を生き抜くアフリカウシガエル
体長20センチを超えることもあるアフリカウシガエルは、世界で2番目に大きなカエルだ。
Samuel Maglione/Flickr
アフリカウシガエルが生息するアフリカのサバンナは、季節によっては恐ろしく暑くなり、乾燥する。カエルが水から出ているときには、皮膚の粘液が空気中の酸素を溶かし、呼吸を助ける。
暑い気候で皮膚が干上がってしまうのを防ぐために、アフリカウシガエルは、地下約15~20センチの深さに体を埋めたあと、粘膜をつくる。この粘膜は、硬くなって繭のようになる。
アフリカウシガエルは雨を待ちながら、長いときには7年にもわたってこの繭のなかにとどまることができる。雨が訪れると、湿気で粘膜の繭がやわらかくなり、カエルの目を覚まさせ、雨季の訪れを告げる。雨季は、アフリカウシガエルが繁殖し、最も活発に動きまわる時期だ。
Source: The Amphibian.co.uk, Mental Floss
周囲に溶けこむコウイカ
周囲に溶けこむコウイカ。セレベス海で撮影。
David Loh/Reuters
コウイカには、体の色や質感を変えて周囲に溶けこむという素晴らしい能力が備わっている。周囲の環境に吸収されている光の量を感知し、みずからの持つ色素を使って、それを模倣する。コウイカの皮膚には、3つの層(黄、赤、茶)があり、それを別々の方向にのばして、独特な色と模様をつくる。
皮膚には乳頭状突起もあり、これがサンゴのように硬い見た目を生む。こうしたもろもろの特性のおかげで、捕食者から逃げるだけでなく、油断している獲物に忍びよることもできる。
Source: UWLax
有毒な水をエネルギー源にするチューブワーム
NOAA
科学者たちは長らく、深海の熱水噴出孔には生物は生息できないと考えてきた。ところが1977年、水深約2500メートルのガラパゴスリフト沿いに生息するジャイアントチューブワーム(ガラパゴスハオリムシ)が発見された。長さ2メートルにも及ぶこのチューブワームは、真っ暗闇に包まれた、有毒ガスや酸でいっぱいの水中の生息環境で生きている
このチューブワームには、胃も腸も眼もない。チューブワームはいわば、心臓のような構造と、生殖器官を備えた「細菌の袋」だ(消化管を持たず、硫黄酸化細菌と細胞内共生している)。チューブワームのなかに生息する細菌は、たいていの動物なら死んでしまうような水中の有毒な硫化水素をエネルギー源として利用し、有機物を供給している。
Source: National Geographic
脚に臭腺があるオカピ
オカピは、現生の哺乳類のなかではとくに古い動物のひとつだ。
Jens Meyer/AP
オカピは、キリンとシマウマを混ぜたような、奇妙な見た目の動物だ。コンゴ民主共和国のオカピ生息地はとても暑く、ヒョウなどの捕食者が、いつもどこかに潜んでいる。こうした環境を生き延びるために、オカピは主に、適応によって身につけた3つの性質を利用している。
まずは、脚に臭腺があり、それでなわばりのマーキングをする。第2に、超低周波の鳴き声のおかげで、捕食者に聞かれずに、わが子とコミュニケーションがとれる。最後に、長さ約36~46センチの舌を使って、自分の眼と耳をきれいにする。
Source: Africa Geographic
普段の2倍を超える大きさに体を膨らませるフグ
NOAA Ocean Exploration & Research
フグは、危険を感じると、水で胃を膨らませる。ときには、捕食者になりそうな相手を追い払うために、トゲを誇示する。あるいは、単に筋肉をのばしたいときに体を膨らませるケースもある。普段の2倍を超える大きさまで膨らむことができる。
さらに、フグはテトロドトキシンと呼ばれる神経毒をつくる。この毒を摂取すると、麻痺や発作を起こすので、フグを食べると死ぬ可能性もある。
Source: Seattle Aquarium
大きな耳で体を冷やすゾウ
南アフリカ・クルーガー国立公園にいるアフリカゾウ。
Getty
ゾウの耳は、つくりつけの冷却メカニズムとして機能する。大きな耳をパタパタすることで、体を冷やすのだ。耳を動かすと、そよ風が生じるのに加えて、耳の血管の血流が促進され、それも体を冷やすのに役立つ。
ときには、水の中でバシャバシャと動きまわり、鼻を使って耳の裏側に水しぶきをかけ、冷却効果を高めることもある。
Sources: San Diego Zoo and Kariega Game Reserve
カモノハシのくちばしには電気センサーがある
REUTERS/Mick Tsikas
カモノハシのくちばしには、かすかな「電界」を感知する能力が備わっている。そして、獲物の筋肉が動くときなどに生じる生体電流を感知できる。
カモノハシは水に飛びこみ、川底などで食べものを探す。狙いは、甲殻類、蠕虫、昆虫の幼生などの水の底にいる生物だ。
カモノハシのくちばしは、機械的刺激を感じる機械受容器を通じて、小型の獲物があとに残す圧力や動き、電気的信号の変化を感じとることができる。頭を左右に振って機械受容器を活性化させると、その化学的構造により、接触や圧力、振動、音などのさまざまな刺激を感知できる。