ミンティアやフリスクなど、ミントタブレットの売り上げが回復している。
撮影:三ツ村崇志
コロナ禍の出勤制限やマスク着用によって急減していたミントタブレットの売り上げが、回復の兆しを見せている。
国内シェア1位のミンティア(アサヒグループ食品)は、2005年に錠菓市場における売上個数で1位、2007年に売上金額でも1位になると、トップブランドとして市場を牽引。2019年の売り上げは過去最高の238億円に達していた。
ところが、コロナ禍に見舞われた2020年、前年比69%の164億円に急落。2021年は144億円、2022年は148億円と低迷が続いた。
その後、2022年11月に政府が行動制限の緩和を宣言。出勤や外食、行楽など、直接人と対面するリアルコミュニケーションが増えたことから、ミントタブレットが再び脚光を浴び、2023年1〜3月は3カ月連続で2ケタ増の売り上げを記録。累計で前年比122%となり、目標の前年比108%を上回るペースで伸びている。
フリスク(クラシエフーズ)も、2020〜2022年の売り上げが2019年比で4割程度減少していたものの、2023年1〜3月の売り上げは前年比105%。売上目標に対し110%で推移しているという。
アサヒグループ食品「ミンティア」シリーズの売上金額の推移。コロナ禍で低迷していたが、2023年1〜3月は目標を上回るペースで伸びている。
出典:アサヒグループ食品
新しい価値の提供に向け「いまが転換期」
コロナ禍で人々の価値観や働き方が変わり、ミントタブレットの喫食シーンも変化した。ミントタブレット完全回復には、アフターコロナに合った「新しい価値」を創出できるかがカギとなりそうだ。
出典:アサヒグループ食品
5月8日にCOVID-19の感染症状の分類が季節性インフルエンザと同じ5類に移行し、徐々にではあるが「脱マスク」が進み始めた。これから夏に向けて、マスクを外す人も増えてくるとみられる。
アサヒグループ食品のコンシューマ事業本部マーケティング一部担当部長・河口文彦氏はBusiness Insider Japanの取材に対して「そうした流れに伴って、夏ぐらいにかけて錠菓(ミントタブレット)の売り上げが復活していくと思う」とさらなる復調に向けた期待を語る。
ミンティアはもともと、「1粒食べることでリフレッシュして気持ちを上げていくというニーズに対応した商品」(河口氏)として広がり、コロナ禍前は「スーツやバッグにいつも入れている存在」だったという。
しかし、コロナ禍でミントタブレットでリフレッシュする喫食シーンが激変。アサヒグループ食品はその変化に対応すべく、新商品を次々と打ち出してきた。
マスク着用時に自分自身の息などのにおいが気になるというニーズに合わせ、マスク着用時専用をうたう「ミンティア +MASK」、オンラインでの会議や授業など声によるコミュニケーションが増えたことに着目し、大手声優事務所と共同開発した「ミンティア +VOiCE」といった商品開発のほか、有名キャラクターをパッケージに採用するなど、苦境を脱するために「本当にいろいろもがきながらやってきた」(河口氏)。
当たったものも、当たらなかったものがあるなかで、「+MASK」「+VOiCE」は好評で、ミンティアシリーズの主力の一角を占める商品として定着してきたという。
そうした経験を経たいまが、ミンティアにとって「転換期」と河口氏は言う。
「毎日同じ電車に乗って同じ時間に出社するといったいわゆるルーチンワークがメインだったこれまで(コロナ禍以前)と違って、今後はセルフコントロールしながら自分から動いていくというシーンが増えてくると思います。(アフターコロナの)新しいシーンに、ミンティアがもっと貢献できるようにしたいと思っています」(河口氏)
2023年に関してはまず、落ち込んでいた売り上げのベースラインを回復させるため、TVCMやキャンペーン、SNSを活用したマーケティング活動などを積極的に展開し、
「ミンティアの存在をリマインドしながら、まずは目標の売り上げ160億円(の達成)に向けて、手を緩めずに走り続けていこうと思います」(河口氏)
フリスクを展開するクラシエフーズも、ゴールデンウイーク明けから6月下旬にかけてメインブランド「フリスク クリーンブレス」のTVCMを全国で追加放映するほか、「フリスク ネオ」の新商品を発売するなど、「売り上げのさらなる底上げを図りたい」(クラシエフーズ)としている。