放送法の「政治的公平」めぐる“内部文書”は全て「行政文書」と認める:総務省が全文公開

小西洋之議員が「総務省の内部文書」として公表した資料の一部。

小西洋之議員が「総務省の内部文書」として公表した資料の一部。

撮影:吉川慧

【UPDATE】総務省は3月7日、放送法の「政治的公平」の解釈をめぐり当時の礒崎陽輔・首相補佐官と総務省が交わしたやり取りに関する一連の文書について、全てが総務省の「行政文書」であると認め、公開した。総務省は「記載内容の正確性が確認できないもの、作成の経緯が判明しないものがある点にはご留意いただければと思います」としている。(2023/03/07 15:33)


放送法の「政治的公平」の新解釈をめぐり官邸側と総務省側が交わしたやり取りをまとめた「総務省の内部文書」とされるものについて、松本剛明総務相は3月7日午前の記者会見で、総務省作成の行政文書だと認めた。

朝日新聞によると、松本氏は「作成者が確認できなかった場合もあるが、確認できない場合であっても、前後の資料などから総務省が取得または作成したと判断できるに至った」などと説明。文書は7日午後を目標に公表するという。

一方で、松本氏は「一部は関係者の認識が異なる部分があるなど、正確性を確認できないものがある」と述べ、精査を続ける考えも示したと共同通信は伝えている。

松野博一官房長官も3月7日午前の記者会見で、文書について「総務省において、総務省の行政文書であると確認」と認めた上で、総務省が記載内容の「精査をおこなっていると承知している」と述べた。

この文書は立憲民主党の小西洋之参院議員が3月2日に公表したもの。A4サイズで約80ページ。2014年11月〜2015年5月にかけて、官邸側と総務省が交わしたやり取りがまとめられている。

資料の一部には、日時や場所、出席者とともに赤字で「取扱厳重注意」の文字がある。具体的な番組名が名指しされ、当時の礒崎陽輔・首相補佐官や、当時放送法を所管する総務相だった高市早苗氏の発言とされる内容も含まれている。

従来、放送番組の政治的公平性は、「一つの番組ではなく、放送事業者の『番組全体を見て判断する』」とされてきたが、公表された文書では礒崎氏の働きかけによって、「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との新たな政府見解が追加されるまでの経緯とされる内容が記されていた。

放送法の「政治的公平」めぐる政府統一見解とは

2015年5月、当時の安倍政権で総務相だった高市氏は「これまでの解釈の補充的な説明」と前置きした上で、一つの番組において一方の主張のみ相当時間繰り返す放送をした場合は「政治的公平」に反する場合があると答弁。放送法の新たな解釈を示した。

総務省は2016年2月、新たな政府統一見解を衆院予算委員会に提出。「従来からの解釈については、何ら変更はない」としつつ、「番組全体」を見て判断するとしても「番組全体」は「一つ一つの番組の集合体」であり、「一つ一つの番組を見て、全体を判断することは当然のことである」との見解を示した。

高市早苗氏「信憑性に大いに疑問を持っている」

野党は、安倍政権下の官邸側の圧力で放送法の解釈が事実上変更された可能性があると批判している。

礒崎氏は3月4日、「総務省と意見交換をしたのは事実」だとTwitterに投稿し、総務省側への働きかけを認めた。礒崎氏は「昭和39年の政府解釈では分かりにくいので、補充的説明をしてはどうかと意見しました」としている。

高市早苗・経済安保担当相は3月3日の参院予算委員会で、資料に記載された自身が発言したとされる内容について、「信憑性に大いに疑問を持っている」と強く否定した。

高市氏は自身に関する記述部分は「捏造文書」だと断じ、資料が捏造されたものではなかった場合、大臣と議員を辞職するか問われて「結構ですよ」と答弁した。立憲民主党の小西洋之氏への答弁。

高市氏は3月6日の参院予算委員会でも公表された資料のうち「捏造」だと認識する箇所について問われ、「私の発言や安倍総理の電話に関わる内容だとされる文書は計4枚。私が読んだのは4枚だけ」と回答。約80ページの資料全体ではなく、自身の名前が記されている箇所について「捏造」と認識しているとの見解を示した。立憲民主党の石橋通宏参院議員への答弁。石橋氏は礒崎氏の証人喚問を要求した。

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