年初来の株価下落に苦しむ巨大IT企業の現状が採用計画の変更から明らかになってきた。
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アマゾンは昨今の成長鈍化とコスト上昇に対処するため、リテール(小売り)部門の採用計画を規模縮小する。Insiderの取材で明らかになった。
Insiderが独自に入手した4月末の社内メールによれば、マーケットプレイス運営や倉庫運用、物流などを担当するアマゾンのワールドワイド・コンシューマー部門は、2022年の採用目標を1511人減らした。
内情に詳しい関係者によれば、削減されるのはフルタイム従業員の新規採用のみで、時間給の倉庫作業員の採用数に変更はないという。
今回の1500人強という数字がワールドワイド・コンシューマー部門の採用計画全体に占める割合は不明。ただし、同関係者は規模感の参考になる数字を挙げており、部門内のあるチームは2022年の採用目標を7%削減する予定だという。
アマゾンの広報担当にコメントを求めたが返答はなかった。
アマゾン北米コンシューマー部門のバイスプレジデント兼最高財務責任者(CFO)、ゴクル・チャンダル・ダクシナは社内メールにこう書いている。
「今回の措置が必ずしも最良の方法ではなく、どのチームも限られたリソースのなかで事業を推進するには優先順位をつけざるを得ず、そのため厳しい取捨選択を迫られることは十分に理解しています。そのうえで、それぞれの状況に応じて採用数の調整をお願いします」
ダクシナは同メールで、採用削減計画はアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)とブライアン・オルサフスキーCFOによる検討を経て決まったと説明。
また、一定の成長目標を達成するため、「事業の加速が確認された場合」はワールドワイド・コンシューマー部門を率いるデイブ・クラークCEOに「追加投資を要請する」可能性もあることを示唆した。
今回の採用計画の規模縮小はアマゾンの成長鈍化を示す最新の動きと言える。
同社は4月28日に2022年第1四半期(1〜3月)の決算を発表。売上高は前年同期比7%増と市場予想を上回る伸びを示したものの、38億ドル(約5000億円)の純損失を計上。第2四半期(4〜6月)の業績見通しも市場予想を下回り、株価はその後の時間外取引で大幅下落した。
オルサフスキーCFOは、パンデミック下の需要増に対応して事業規模の拡大を進めた結果、倉庫や労働力のキャパシティ過剰が発生したと説明している。
なお、アマゾンの成長鈍化はリテール部門以外でも確認できる。
Insiderが過去記事(5月12日付、英語版)で報じた通り、同社は2年間にわたって外部の配送サービスパートナー(DSP)の増強を進めてきたが、2022年は大幅に抑制する。2020年に加わった新規パートナーは1191、21年は670だったが、22年は451と前年比約3割まで減らす。
セールスフォースも採用減速
採用計画の規模縮小を進めているのはアマゾンだけではない。
2021年7月にスラック(Slack)買収を完了させ、マイクロソフトとの競争激化が報じられるなど急成長を遂げるセールスフォース(Salesforce)も、経費節減のため一部の職種で採用を停止していることがInsiderの入手した社内メモから明らかになった。
同社内メモによれば、予定されていたオフサイトミーティングの少なくとも一部をキャンセルするなど、ビジネス出張の抑制もすでに始まっている模様だ。
セールスフォースの広報担当にコメントを求めたところ、以下のような回答があった。
「当社は2021年に新規従業員2万人を採用し、22年も第2四半期(4〜6月)だけで4000人を採用する予定です。また、ビジネス出張は顧客にサービスを提供するうえで、従来どおり必要な手段と考えています」
セールスフォースの株価はここ数カ月低迷を続けており、一部採用停止および出張制限はそうした状況を反映したものとみられる。
2021年末の段階では1700の職種を募集していた(アメリカ国内、グローバルでは4000)同社の人材補強の勢いを考えれば、一部とは言え採用停止の動きがあることは急激な変化と言っていいだろう。
アニュアルレポートの記載によれば、セールスフォースのグローバル従業員数は2021年の1年間でに5万7000人から7万3000人以上へと2万人近く増えている(スラック買収による従業員増を含む)。
[原文:Leaked email shows Amazon's retail business is cutting back hiring targets this year as growth slows and costs rise, Internal memo says Salesforce is slowing hiring and cancelling at least some upcoming offsites to cut costs]
(翻訳・編集:川村力)